「CODE:紅蓮」01
異能の力を持つ者にはその能力を想像させやすいコードネームが付与される。勿論中には自分で考えて決める者も居るが、能力者という存在と『研究所』という存在が大きく関わってくるのだ。隠匿されている故に、護は知らないが。
改めて、コードネームを付けるのにはいくつかの理由がある。
まず能力者の把握、管理だ。自分達の保有している能力者の数、言わば戦力を把握しておく事で、研究の進捗も変わってくるのだとか。どのような研究に彼らの力が必要とされているかは秘密事項らしい。
次に、能力の発動補助。どうやら能力者毎に発動出来る条件が違っているらしく、能力のイメージを名前で浮かばせる事で容易さを高めているのだ。例えば、聖羅の“招雷”。文字通り、雷を招くイメージである。招く場所は自分であったり、或いは対象であったりと様々だ。
「会長の能力にも発動する条件っていうのがあるんですか?」
護は今、聖羅、大和と共に生徒会室に集合し秘密の講義を受けているところだ。何せ能力者であると判明した以上、最低限の知識が必要不可欠となってくる。大和は同じ開発担当になる予定だった人員が減って不満気ではあったが、渋々聖羅の補助として説明をしていた。
「あるけど……これは基本的には誰にも教えないのよ。もちろんそれが『研究所』であってもね」
「教えない理由……」
「簡単だ。知られてしまえば利用する事も容易いし、逆に封じてしまう事も容易い」
「そういうこと。弱点になるのか強みになるのかわからないけど」
ホワイトボード一杯に説明を書き連ねていくのだが、時折入る謎のキャラクターイラストが気になって仕方が無い。女の子らしいと言えばらしいのかもしれないのだが。
「紅野くんの場合はその条件すらわからないんだけどね」
「ただ、一つだけ言えるのは……発動した数回、その全てで身の危険を感じた時に発動している」
「……」
大和の言う通りである。護の記憶には無いが、初めて発現したのは聖羅と大和に出会った時。巨大な蝕に食われそうになっていたところ、能力が発動して火柱にした、と。二度目、自身の家があった場所を破壊されそうになった時。そして三度目はつい先日。襲われ、瀕死になりかけた時だ。護が唯一記憶のある発動の瞬間。
「だからってわざわざ危ない所に行かせる気はないから安心して?」
「あいつならやり兼ねんが……なるべく阻止するよ」
二人はどうやら護に強制的に働かせるつもりはないようだ。護としても危険地帯に好んで踏み込んでいくような性格ではないためそちらの方が助かるが。自らを危険に曝したいという方が少ないだろう。
「もし条件が判明したら……きっと訓練が待ってるのよね」
「……訓練なんてあるんですか」
「そりゃああるわよ。まともに使えなきゃ意味ないもの」
「主に制御だけだから心配する必要はない、かもな。そろそろ時間だが、行くか?」
椅子から立ち上がり伸びをする大和。外はすっかり夕暮れだ。
「そうね。面倒だけど仕方ないわ……」
「すみません、僕のせいで……」
「ううん!そういう意味じゃなくて!」
そう、護のためにアナザースター社に向かわなければならないのだ。逐一の検査が必要らしい。異能の中でも異能な護の能力を解明するために。