第9話 スリーアウト・チェンジ
事件は、翌朝沙耶が起きてすぐに起こった。
「はぁ……んっ?」
結局昨日は遅くまでファッションショーを行なっていたが、満足感で却っていい眠りにつけた。最終的に選んだピンクのベビードールを着て床についたのも、安眠できた理由の一つだろう。
しかし眠りとは対照的に、沙耶の目覚めは彼女にとって最悪なものとなってしまった。
寝ぼけ眼のまま、起き上がろうとしたその時のことだ。
「んあっ……ふにゃん…!?」
下腹部を這いずり回る異質な熱と感覚が、刺激となって迸った。
何かが、ベビードールの布の上で這いずり回っている。
「ふぁぁぁぁぁん…!」
最初から絶頂期に匹敵するそれによって、寝ぼけ眼が覚めたものの意識が朦朧とするという矛盾状態に陥る沙耶。早くも謎のデスループに陥ってしまった。
快楽に溺れ、体を痙攣させながらも彼女は気付く。自らの手足が縛られ、そして目の前に黒い少し湿ったショーツがあることに。そして、それと同じような光景を昨日自分は見ていることを。
何よりショーツの中央には、雄々しい厚みがあった。
(こ、これは…!)
目の前に下着姿の清香が、沙耶とは上下逆になって寝転んでいた。
「……あら? 起きちゃった?」
「き、清香さんん!? なにしちゃったんですか!?」
一点に集中して、そこから全身に広がるように快感が駆け巡り、思わず女声で仰ぐ。
熱いのと呼吸困難のような苦しさのせいで目の前はぼやけている。それでも、そこに誰がいるのかはすぐにわかった。
「……き、清香ぁ……さ」
「お姉様でしょ? 沙耶」
「はぁぁぁぁぁぁんんんん!!」
そしてもう一つ。とある事実が確認された。
清香が沙耶のショーツ越しにそれを舐めまくっている。
舐められ、抑え込まれ。昨日の快感をそのまんま倍にしたように全身を走り回るそれは、沙耶から何故清香がここにいるのだとか、どうやって侵入したのかなどと思考させる暇も隙も与えない。
「ふぃぃぃぃぃぃぃぃぃん!」
「いけない子。もっと可愛がってあげるわよ?」
「くんっ…………お、お姉様ぁ」
「え? 聞こえないわよ?」
「きぃぃぃぃんっ!? き、清香お姉様ぁ!!」
「よろしい。ご褒美にキスしてあげる」
更に舐める速度が速くなった。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!? よしてやめてそれ以上はいけないから!!」
「いいわぁ……とても可愛い……沙耶ちゃんは今までの子たちとはまた違っていい……ぺろん」
「くぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ……や、やめて…」
昨日と同じように泣き落としでどうにかしようとする。とりあえず、この状態を脱しなければろくに考えもまとめられず何ともならない。清香に押さえつけられて、芋虫のように動くこともままならないのだ。
結果、沙耶の目の前で清香のショーツの染みが更に広がった。
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃ!!?」
「貴女ほど愛おしくて犯したくて堪らない子は久しぶりなの。貴女の純情を、欲しくて欲しくてホラ。私のもぐちょぐちょなの」
「本当にぐっちょぐちょですねぇぇぇぇぇぇ!!」
そう言いながらも舐めるのはやめてくれない。沙耶は清香のヨダレでベトベトになったそれに、自分が感じたことでシミを作らないか気が気でなかった。
が、次の言葉には流石に一瞬、そんな全てを忘れ、感じることすらやめてしまう。
「だ・か・ら。舐めて」
「……………………へ?」
「私の、舐・め・て」
「──は、はいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
有言実行と言うように、沙耶の顔にショーツのよだれが徐々に近づいてくる。正確には口辺りに。
「ちょ!? 流石にまっ!」
逃げようと顔を逸らそうとするも、足でホールド。逃げ場を無くされる。
抜け出そうとするも継続される舐め舐めのせいで、ろくに力が入らなかった。
「わぁた、私ぃ!? 私は沙耶で女の子だけど、趣味とかは男のままで好きなのは女の子でぇ!?」
「舐めてイカして犯させてしゃぶってペロペロして飲み込んで入れさせて■■■■──!!」
「うわぁぁぁん聞いてないぃぃ!!」
どこぞのバーサーカーかというくらいに教育的指導が必要な単語を連呼する。
「ちょ……、流石に……!」
「嫌がっちゃって……ちょっとお姉様、傷ついちゃったわ」
顔が見えてないのに、清香がニヤリと笑ったことが何故かわかった。
「初めてを目の前にして怖いのはしょうがないから……お姉様が沙耶ちゃんに舐めれるようにさせてあげる」
「!!」
清香の足の指が肩のあたりの箇所にマッサージをする要領でツボを押さえるように触れた。
変化は明確だった。
「う、うそぉぉぉ…………なんれぇぇ!?」
自分の意思と反して口が開き、そこから何かを懇願するように舌が伸びた。それは、確実に清香を舐める体制となっている。
「人体のツボの一つよ。安心して、一回舐めたら味覚えちゃって、次からは飲まないともうダメって体にさせてから」
「おほえたくないぃぃぃぃぃぃぃ!!」
突き出された舌の先とシミとの距離は、とうとう1ミリ未満まで縮まってしまった。
舌の先端に、それが擦れた。とてつもなくしょっぱく苦い、それが。
「い、嫌ぁ…………」
(こ、こんなんで童貞と処女を散らすなんて嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!)
次の瞬間。
「はいドーン!!」
「いやぁん」
清香の体が、翔子の蹴りを受けて吹っ飛んだ。
「ったくこいつは! やばいけど個人の趣味だから口出しはしないと思っていたが、まさか犯罪まがいの侵入方法で夜這いまでするとはな!」
「いやん。蹴られちゃったからよだれのその先が出ちゃった」
そのまま首を掴まれ、トイレへと押し込まれる清香。
「自分でやってろ!! おい! ドア塞げ!」
「「へい」」
すぐさま駆けつけた大久保、斎郷の手によりトイレは封鎖空間と化した。何度か抵抗の音が聞こえたが、諦めたらしい。何故か艶やかな喘ぎ声が聞こえてくる。
「……なんかすまんな。あれを覚醒させたのは間違いなく私の罪だ。謝る。改めてとんでもないモンスターを生み出してしまったことを認知したわ……」
「は、はぁ……けど社長、どうしてこのタイミングで?」
タイミング的に絶妙すぎる。明らかに何か意図があってここにきたと見ていいだろう。
「いや何。お前の行動の監視とこいつの万が一の奇行を阻めるべく、このアパートの入り口が見える場所にワゴンを止めて社員をはりこませたんだがな。そしたら定時連絡になっても携帯をかけてうんともすんとも言わないので、嫌な予感がして来てみたんだ。そしたら……」
「姉さん面目ありません。まさか前日のうちに時限発射式の催眠スプレーを仕掛けられていたとは思っておらず……」
どうやら沙耶の貞操の危機が危ぶまれていた間寝ていたらしい。本当に申し訳なさそうに斎郷は頭を下げた。
よく見れば彼らの顔は所々殴られた痕があった。相当よく寝れる催眠スプレーだったに違いない。
「……とりあえず体洗ってこい。今日は学校あるんだろう? 下着もぐしゃぐしゃだぞ」
「あ、はい」
と、ここで一つ沙耶は気になることがあることを思い出した。
「あの。女性用下着着けて学校に行けとか言いませんよね」
「なんだ? 着けていきたいなら個人の自由だが」
「つ、着けていきたいなんて思ってないです! 学校に行くときは浩文にならなきゃなりませんし!」
そうしてさっさと風呂場に逃げ込んでいく沙耶。
それを見て翔子はしみじみとこう言うのだった。
「……もうあいつ。女でよくね?」
「「確かに」」
「沙耶ちゃんの処女は私が頂くわよ!」
「お前はもう近寄らせんわ馬鹿!」
前途多難だった女装特訓がようやく実を結んだものの、問題はさらに増えるのであった。