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O・S・K story ~ oneesan to syounen to kurage? ~ お姉さんと少年とクラゲ? 1話 パート6

 魔王行政の黒いノーマル車に揺られ、ビリー店主はスィー8番地区の郊外へと赴いていた。

 ノーマル車と言っても、岩石人種みたいな巨体の種族が乗れるサイズにまで肥大化した、アチラの世界の車より大きな車だ 


 西南国には、種族による居住のコミュニティを分ける白く、高い壁がある。

 それは『仕分け壁』と言われる。

 そして、その壁は蜂の巣か蜘蛛の巣の様に張り巡らされて、種族毎のコミュニティを隔てている。

 魔界の種によっては、能力や生物系としての特性上、共存が不可能な種も多く、何より種の違いにより争いというのは発生する。

 それを防ぐ為に、12方角統治ノ協定に基づき、12の国全てが、種毎のコミュニティの街が形成される形となっている。 

 そしてそれを監視、管理、監督するのが、魔王である。


 西南国の場合は、その方法を『仕分け壁』を用いて種と種、街と街の区分をし、通行を管理する形となっている。


 だが、スィー8番地区は『通行地区』か『通行区』と呼ばれる類の地区で、幾らか異種族が混在している。

 通行地区とは基本的に居住期間の定めのある地区である。

 それはつまり他の街から街へと移動する為の中継地点としての役割を持つ地区であったり、様々な産業の出稼ぎ場所であったりと、色々な側面がある。

 普通に住むには様々な取り決めやルールがあり、条件も難しく、退去させられる事となる可能性を踏まえたルールも多い。

 何より定住者は多くない。それは自分達の種族のコミュニティに帰ればいいだけの話と考える者達も多いからでもある。

 どちらかというと異種族混在による異種族毎の違いなどを研究したり、補助できる技術などの開発産業における技術開発も盛んな土地柄と言える。

 一年でがらりとアパートに住んでいる人が変わるような、時勢次第では土地によっては治安もよろしくない事になったりする土地である。


 仕分け壁の最中の1つのコミュニティだけでも、その規模は非常に広い。

 それは通行地区であるスィー8番地区も変わらない。

 大規模な街が丸々1つ中心に収まり、そして壁の近隣には街が形成されず森林地帯などが形成される特徴などから言っても、その規模は車にでも乗らないと街中から仕切り壁に到達するのは、非常に大変な事になる。

 

 その距離を示す一例としては、

 クラゲ亭のある辺りから仕分け壁を遠目で眺め探そうとしても、そして仮に他の建物達に邪魔されないぐらいの高さから眺め見たとしても、見えるのは非常に小さな、白い蜃気楼の様なものが見える程度で、仕分け壁が如実に見えるような事が無い。

 魔王と成った者の持つ事のある特異点能力の1つ``テレポート``でも使えれば直ぐに行き来できるがだろうが、普通の一般人には行楽の様な理由でもなければ仕分け壁に赴くという発想すら抱かないだろう。


 各国の統治は、魔王の能力に大きく左右される形で違いがある。

 西南国の場合は前述の通り、仕分け壁という特徴性がある。


 郊外とは、つまり仕分け壁の間近の辺りを指す事も多い。

 そしてビリー店主、そして黒スーツを着た岩石人の男性と、赤髪のエルフの男性が乗る、ポルカが運転する車が向かう先は、森林地帯。


 時期が時期ならば、木こりを嗜む者達で賑わう、一見すればログハウスタイプの居住施設が多く連なるキャンプ場。

 よく見ればそこが林業産業としての趣を示す工場などの点在を確認できる生産地と認識できる。

 車は両側に森林。そして土手の道路の道を走り、車は空けた路幅の方へと出ると、更に奥に進めば広場の様に空けた場所へと出た。

 そこは、広場の様に広い辺りの周辺には倉庫施設、そしてログハウスの宿泊施設が幾らか連なったりしている場所だった。

 建物、倉庫施設の数も合わせて20は越えている事から、それなりの規模の村などよりは規模が広い趣となっている。 

 車は走り続ける。

 そしてふと、右側の運転席のポルカが左隣の助手席に座るビリー店主へと、 

 「ビリーさんー、ビリーさんの触手のー・・・能力が見つけた辺りってー・・・」

 声をかけていた。

 そして店主は、

 「ああ、ここだ」

 と、返事をしていた。

 「相変わらず凄いな・・・どんだけ伸びるんだよアンタのは」

 赤髪のエルフ種の男性が口を開いていた。

 ビリー店主が答える。

 「スィー8番地区の土地の中だけに触手を数本張り巡らせただけだ。・・・厄介なモンが見つかるとは、思ってなかったがな・・・」 

 その言葉を聞いてポルカは、

 (相変わらず触手の先に目がついているみたいに便利ですねー・・・)

 ふとそんな事を思った。

 そして店主は、助手席からこの辺りを一瞥しながら口を開く。

 「ポルカ、止めろ。・・・出るぞ」

 店主はそう告げる。ポルカは車を停車させた。

 そして店主は車両から出る。続けて他の3名も車から出た。ポルカは手さげの薄茶色のボストンバックタイプの袋を右手に持っていた。その袋は鑑識道具の袋。

 店主は辺りを、明らかに警戒の色を示して見渡していた。

 それを見てポルカと、赤髪のエルフ種の男性、岩石人の男性は互いの顔を見合わせた。

 そして赤髪の男性が店主へと、尋ねる。

 「どうしたんだよ?ラグラギァ」

 店主は答える。

 「気を引き締めろ、ジィン。・・・今は運が良いだけかもしれん」 

 その言葉に、エルフ種の赤髪の男性、ジィンは、一瞬虚を突かれた表情になったが、彼も警戒の姿勢を強めた。

 (・・・特に何か気配があるようには感じられねぇんだけど・・・)

 ジィンはふとそう思いながら、周辺を警戒する。

 ジィンは口を開く。

 「・・・人の気配は無いぜ?何せエルフの耳でも人の声も心臓音も聞こえねぇんだ。・・・なのに警戒しろっていうのかよ?」

 ジィンなりの疑問の提起。

 それに対してポルカが、

 「・・・人がいなさすぎるんですよー・・・ジィンさん」

 そう口にした。

 「季節はずれですがー・・・それでも普段はこの辺りに人が少数ながらに生活していたりするんですよー・・・けどぉ・・・」

 岩石人の男性が、口を開く。

 「オカシイ・・・住民ハ、どこニいったんだ・・・」

 ポルカが同伴させるとクラゲ亭で伝えた際の名前の残り、それからして消去法でデゥーレンという名前になる岩石人の男性は、怪訝な顔でこの辺りを見渡していた。

 その言葉を聞いて、赤髪のエルフ種の男性は、その言葉の意味が理解できた。

 「・・・森林の方に入って仕事してる・・・って可能性はないのか?」

 ジィンのその言葉に、店主が、

 「・・・いや・・・」

 そう、声をこぼして、歩を進めた。

 店主が歩み、他の3人は後に続く。

 そして、一行は通ってきた車道の方とは反対の奥の方へと歩を進める。

 この施設地区の辺りの中の、少し離れた辺鄙な所にある1つの倉庫の方へと訪れた。

 周りはログハウスの民家も少し離れ、森林で囲われた大型の倉庫。

 クラゲ亭より横幅は数倍、高さは倍ぐらい、規模で言えば戦闘機などの貨物庫と言われた方が理解できる施設規模。

 正面には、右側の端にドアの出入り口があるが、その左側からは左右の端から端まで大型トラックが容易に行き来できそうなレベルの高さに横幅の大型シャッターが備わっている。

 店主の歩みに沿う形で他の3名はそこへと辿り着いていた。 

 全員が見上げる中で、ジィンが口を開く。

 「ココに何かあるのか?ラグラギァ」

 「・・・」

 店主は、何も言葉を返さない。しかし、ポルカだけが、

 「・・・酷い、臭い・・・です、ねぇ・・・」

 と、声をこぼしていた。

 ジィンとデゥーレンは疑問符を浮かべる。

 そして店主は、

 「ジィン、デゥーレン。ポルカの護衛を頼む。中を調べに行くぞ。ポルカ、鑑識の道具を一式持ってきてるな?」

 「あ、はい〜大丈夫ですよ〜」 

 ポルカは持ってきていた仕事用の薄茶色の革バッグを手さげで示した。

 その返事を聞いて店主は行動を始める。

 工場施設のシャッターを、いつの間にか伸ばしていた触手で上げ開き、中へ進んでいた。

 ポルカが、内心で、

 (鍵が・・・かかってませんねー・・・)

 と、あまり状況が望ましくないらしい事を、脳裏に浮かべていた。

 ポルカは車のトランクを開けて中から道具一式の収まった仕事用の大型の、黒いトランクケースを両手で取り出して持ち運んだ。

 そして全員が中へと進んでいく。

 中は、薄暗く、今開いたシャッターから入りこむ光ぐらいが明かりになっていた。

 中の様相を一言で言えば、入り口側がごちゃごちゃとしていた。

 まるで、倉庫内部全体を満遍なく使って貨物などを置いていたのに、無理やり手前側に全部を持ってきて置いたかのような乱雑な状態になっていた。

 林業機器や重機なども例に及ばず、まるでバリケードのようにすらなっている。

 だが、右側を大回りして行くと、奥の方へと進めそうな状態だった。

 事実、店主が其方の方へと歩いていく。

 3人は後に続き、薄暗い方へ、奥の方へと進んでいく。

 奥へ行けば行くほど、ごちゃごちゃした状態が消えていく。

 そして見えてきたのは、空けた場所。

 そしてそこにあったのは、

 「な・・・んだ、こりゃ・・・」

 ジィンが声をこぼした。デゥーレンも似た様な表情だった。

 中にあったのは、人型の生物種4,5人は入りそうな大型の試験官のような透明な入れ物。

 そしてその中に入っていたのは薄緑色の培養液。 

 そして透明な入れ物の下にあるのは、入れ物と様々なチューブで繋がった土台の機械と周りの機械。

 それは、どこからどうみても、

 「・・・クローン技術ノ、類なノカ・・・?」

 デゥーレンが声にこぼす通り、その手の類のもの機械だと人に認識させた。

 店主が声をこぼす。

 「ポルカ、気付いているか?」

 その言葉に、ジィンとデゥーレンは怪訝な顔をする。

 対してポルカは、

 「・・・はいー・・・」

 と、肯定の相槌を示した。

 そして、ポルカは近くのドラム缶の上にカバンを置いて開き、中から床に半透明な白いシーツを取り出して床に敷いて、そしてその上に道具一式を揃えていく。

 「ビリーさんー・・・応援を呼んでもー?」

 「・・・その必要はねぇだろ」

 と、ポルカがふいに疑問符を浮かべる顔をしていたが、


 「・・・早いな、ビリー」


 ふいに、さっき全員が通った道の曲がり角辺りから声が響いていた。

 そしてその声にポルカは気付いて、言葉の意味を理解する。

 「魔王様・・・」

 ポルカがそう口にした。

 すると、普段の姿通りの魔王シャルディアは柔らかい表情を浮かべて応対した。

 「魔王行政の鑑識課、護衛課から応援を呼んでおいた。あと数十分で此方に着く。ポルカはとりあえず、奥の方にある・・・恐らく、遺体であろうものの鑑識を進めてくれ」

 その言葉に、ジィンとデゥーレンが驚いた顔をした。

 「死体・・・?魔王殿下、死体の臭いは・・・しませんが・・・」

 ジィンがそう伝える。デゥーレンも同じ様だった。

 それに対して魔王は、

 「臭いの類は消してあるみたいだ。・・・が、酷く薬品臭くはある」

 その言葉を聞いて、ジィンは嗅覚を其方の方の感覚で強めた。

 すると、確かに、

 「・・・なるほど・・・」

 何か、鼻を少し突く様な、刺激臭程ではないが変な違和感を感じさせる臭いはしていた。

 ポルカはマスクや手袋や帽子、そして前掛けなど、そして鑑識道具一式を装備し終える。

 魔王自ら回収したクラゲ亭周辺の状況とは、訳が違った。

 その時は軽い装備で良く、事後処理調査が主要用途だったが、今回はポルカが第一調査に入る仕事。

 そして奥の方へと進もうとしていた。

 そしてシャルディアもそれに同伴する。

 ポルカが疑問符を浮かべたが、

 「何があるか分からない。・・・何も罠の類が無ければいいんだが」

 と、声をこぼして、気付けば脚は床に付かず宙を浮いている姿を示していた。

 ポルカは、それだけ状況を警戒しているのだと理解する。

 そして2人は機械の右側、通ってきた道とは反対の奥の方へと進んだ。

 すると、機械が壁になっていた死角の辺りの方には、

 「っ・・・」

 死体の山が築かれていた。

 ポルカはただ、喉音を鳴らす。

 種族はバラバラだった。置かれ方は酷く乱雑で、欠損も激しい。

 見た目だけで分かるのは、ウッドマン種やエルフ種やガーゴイル種や、他には岩石人種や、他にも分かるだけで数種の種族の欠損だらけの遺体が存在していた。

 そして全てが白みがかかっていた。

 そして所々にカビやコケが生えている。

 恐らく、この林業地区に短期間の滞在と仕事をしにきた職人や作業員の類なのかもしれない。

 「・・・防腐剤・・・他にはカビやコケが生える理由としての弛緩剤・・・いや、自然循環用の溶肉剤も使用しているかもしれんな・・・」

 シャルディアがそう声をこぼした。

 そしてポルカは内心で、

 (・・・死後・・・それなりの時間が経っています、ね・・・)

 と、様相だけで数日単位のものではないことを理解する。

 少なくとも一週間以上前のものと、ポルカは可能性を想定した。

 シャルディアが辺りを一瞥して口を開く。

 「罠の類は無いようだ。だが、操られた人形が混ざっている可能性はある。注意して調べてくれ、ポルカ」

 「・・・ココは魔王城に移管していただけないのでー・・・?」

 「ココも一応囮として使う。相手が何かアクションを起こすとは思えないが・・・数日は鑑識課と護衛課の者達を配置して様子を見る。警察や民間の鑑識組合なども介入する土台を整えなくてはならない」

 「なるほどー・・・了解しましたー・・・」

 ポルカは、仕事に取り掛かり始めた。

 シャルディアは場を汚さないよう宙に浮いたままでビリー達の方へと戻ってくる。

 「魔王殿下・・・どうでしたか?」

 ジィンが尋ねた。それに対してシャルディアは、

 「死体の山だ。・・・我々には見慣れたモノだが、・・・・・・気分の良いものではない」

 そう言葉にして、ジィン達は様相を自然と緊張のものにしていた。

 そしてシャルディアがジィンとデゥーレンを一瞥して伝える。

 「2人は応援が来るまで奥の方の・・・ポルカが鑑識している範囲外で、ポルカに何かあったら即座に動けるように警備していてくれ。それと、鑑識課の中の専用の鑑識班以外の者は何か不用意に触ったりはしないように現場伝達も徹底して欲しい、それは警備しながらの管理と監視も含む。そして鑑識班であっても判断に困るものがあるらしい気配があれば、キミ達からでも構わない、直ぐに連絡を入れて欲しい」

 ジィンとデゥーレンが口を開く。

 「了解しました」

 「了解シマシタ」

 2人は奥の方へと進んだ。

 残ったのは、ビリー店長とシャルディアだった。

 店主が口を開く。

 「どうだったんだ・・・魔素遺伝子の調査は」

 その問いに、シャルディアは、

 「・・・少なくとも、西南国の住民のモノでは無い事は確かだ。データベースには存在していないものだったからね」

 そう、店主へと返答していた。

  

 それは、回収した人形達の遺伝子情報の個人照会を問うた店主の言葉に対する魔王の返答。


 シャルディアが、瞼を閉じる。

 その表情は、どこか疲れが見えた。

 それは、曇天の様な色合いも、見え隠れしていた。

 「ただ・・・一から全まで遺伝子情報の配列を変えられていれば・・・判断はできないだろう」

 「・・・」

 「これは宣戦布告のつもりなのか・・・それとも相手側がココの隠蔽に手をつけるのが遅れているのか・・・それの判断はつかない。・・・少なくとも・・・杜撰な放置をする相手とは思えないのだけどね・・・」

 店主は尋ねた。

 「・・・ホシは国外か?オメェが攻撃的な反応の感知ができなかって、って事は」

 その言葉に、シャルディアが、

 「・・・``攻撃性波長感知``の事かな?・・・それに関して言えば、そうなるだろうね」

 そう返事をしていた。

 店主は、考える。

 (・・・コイツの``攻撃性波長感知``は国内に張られている・・・あの訳の分からん人形共はやはり完全に自律行動になるような力が付与されている、って事か・・・)

 ``攻撃性波長感知``。

 それは西南国魔王シャルディア=センルーザーが持ち合わせる能力の1つ。

 西南国の治安維持に置いても重要な要素となっている西南国全体に張られたアンテナの能力。

 他者の攻撃性・加害性などの思考の波長を、受動的にアンテナに引っ掛ける形で読み取る能力。

 それを用いてシャルディアは火急的であれば、西南国の国内の犯罪に、テレポートを用いて現地を別の能力で遠距離を認識、そして赴き、対応する事の出来る能力がある。

 だが、今回の事件はそれが反応せず、対応はできていなかった。

 (・・・人形に、感情や思考の波長は存在しねぇ、ってか・・・)

 店主は、当事者として戦った時に生者でない事に気付いていた。

 そして、付与されていた魔力が遠隔操作の類でない事にも気付いた。

 随時遠隔操作されている類のものなら、魔力の糸と比喩できるような、魔力の痕跡の様なものが感知できるはずだからだ。

 だが、それは無かった。

 結果的に、シャルディアの治安維持において、穴をついた力だと言えた。

 (・・・何者だ・・・?無機物の遠隔操作が出来る能力を持ってる種なら・・・簡単に絞り込めはするが・・・魔力の付与による自律行動化・・・AI化なんてのは・・・)

 店主は、1つの可能性を脳裏に浮かべた。

 そして、

 

 「・・・あぁ、魔王と成った個体の者の可能性もあるが・・・『魔式』の可能性もあるだろうね・・・」


 魔王が店主の内心を読んだままに、そう告げた。

 それはメルー=アーメェイに対しても説明した内容。

 ふいに言葉を言われた店主が苛立ちを示す。

 「勝手に読むんじゃねぇよ」

 店主は、勝手に思考を読まれた事を怒る。

 シャルディアが、少しだけ疲労のある顔で苦笑を示す。

 「すまない」

 そしてシャルディアが言葉を続けた。

 「恐らく・・・独自に発展した『魔式』なら・・・ありえない事でもないだろう。魔王としての能力に、こんな感じの力がある事は・・・長い歴史の中で埋没してしまってはいるのかもしれないが・・・少なくとも私は知らない」

 『魔式』。

 それは、魔界に住む者が全員差異はあれど保有する魔力の、独自発展の成果体。

 数は多くなく、そして千差万別の特徴を示す。 

 そしてそれは、個人の素養に左右される。

 だが、ある程度は万人普遍的に行える事柄もある。

 これも魔式と形式上は分類される。

 だが、それは魔力を用いて透明なバリアや防壁の様なものを張ったりする事。

 これは、魔界でも一般人でも使える人は多い類の魔力の発露である。

 これは『簡易魔式』と呼ばれ、魔式という個人の素養に左右される要素の名が付いてはいるが、どの種族のどの個人でも、意外と簡単にできてしまったりするモノである為、希少性は低い。

 中身は紙一枚を張るか金属の盾一枚張る程かの違い、それぐらいの素養の差異は、これにも存在する。

 だが、修練次第ではそれなりに成長していく。

 

 今朝、メルー=アーメェイがクラゲ亭の座敷部屋でアオバ・ショウタを護ろうと飛び出し、透明な多面球体の結界か、はたまたバリアか、の様なものを張ったアレも、『簡易魔式』と呼ばれる類のモノ。

 だから、別段珍しいものでもない。

 メルー=アーメェイ当人もその自覚はある。

 別件で、魔王に読まれたくない情報があると、思っていたとしても。

 

 だが、その中でも例外的な『簡易魔式』とはまったく概念や用途も違う魔力の発露の発展、それこそが『魔式』の本質であり、個人の素養よりけりのものである。

 

 ビリー店主がふいに、あの襲撃者達の来客対応をする前から気付いていた 『人払い』。

 あれは、いわば圧力的な魔力充満による無意識下への接近を反作用的に拒絶を近隣住民に促す『魔式』であり、それはシャルディア=センルーザーという魔王が行った魔式のモノだった。


 「・・・そういや、誰かに見られたのかよ?あの店先の人形共は」

 店主のその問いに、シャルディアは、

 「いや・・・『人払い』が意外と良い形で左様したみたいだ。何より朝の時間だったのも都合が良かった。クラゲ亭の近隣の住民は屋外に出る事もしていない」

 そう答えた。


 こんな風に、銀髪の魔王は人払いの魔式を、そのまま『人払い』という名前で使っている。

 

 「・・・」

 ビリー店主は、数瞬沈黙してから、

 「・・・問題ないのか?」

 シャルディアへと、そう尋ねていた。

 シャルディアは注意されたまま、店主には``サトリ``を用いて心や思考を読んでいなかったので、ふいに何の事か分からずな表情を向けた。

 店主は、それを理解してなのか、ただ言葉を続けた。

 「・・・この一週間、常に起動させてるお前の能力以外にも・・・色々な能力をフル稼働しているだろ」

 その言葉に、シャルディアはどういう意味か``サトリ``を使わずとも理解して、

 「なに、問題ないさ・・・。・・・まぁ、些か疲れては・・・いるけどね」

 そう返事をした。

 だが、店主は、

 「それだけじゃねぇよ」

 「・・・?」

 言葉を続ける。

 「・・・オメェの事だ。民間人から大量の死亡者が出れば顔に出る。・・・部下の連中に気取られる前に体調は整えといた方がいいぞ」

 その言葉に、シャルディアは少し目を見開いて、自嘲なのか、微苦笑交じりに、

 「・・・すまない」

 そう口にした。

 そして、陰りのある色合いが少し見え隠れしたままの表情で、

 「・・・だが、似た様な・・・凄惨の現場は・・・ココだけという訳でもないんだ」

 そう告げた。

 「・・・なに?」

 「・・・此方の話だが・・・、」

 シャルディアは、楓達にしばらくお世話を任せ、ショータとの面会の時から席を離した時の事を思い出す。

 「・・・スィー8番地区の別の地区で似た様な場所を見つけた。此方も住民の数が10人にも満たない仕分け壁の間近の森林区内の工場の中だ。既に魔王行政の鑑識課と護衛課の者達は配置し終えてはいるが・・・其方もココと似た状態だ」

 「・・・」

 店主の表情は、険しいものになっていた。

 (攻撃性波長感知が引っかからねぇ・・・って事はやはり自律行動をするようになった肉塊が、住民の寝込みを襲った・・・って事か・・・?襲う相手の攻撃的な波長もコイツなら読み取れる・・・それが極端すぎれば過ぎる程であればだ・・・)

 飽くまで1人2人の波長を感じ取っても銀髪の魔王は全幅に理解出来る訳ではないだろう、千里眼などを用いるタイムラグなどはあるだろう、もしくは魔王の熟練度からくる直感が即座に動かすモノとするだろう。

 だが、それが後手どころか、こんな後にまで手の打ち手となった。

 店主は、この凄惨な現場をふいに一瞥した。

 (・・・となると、肉塊共自体が自分達と同じ様なものを生産・・・魔式のコピー&ペーストか、もしくは分割委譲、そういう形を持って兵を増やしていた、って事か・・・?・・・可能性としては、ありそうだが・・・)

 それは、あまりに状況が悪いらしい事への懸念の様相。

 人形が自分で人形を作るための拠点を作り、そして生産する。

 感情や思考は無くロボットの様に起動するだけ。

 こうなると、西南国魔王シャルディア=センルーザーの千里眼やサトリや攻撃性波長感知は、拠点を見つけられれば話は別だが、見つけられなければサトリなども意味の無いモノと化す。

 千里眼で見つけようにも、国中を見渡すというのは効率的とも言えない。

 誰を探すのかならともかく、一般人に擬態させられた何かを探すというのは、難しい。その何かの姿形すら、分からないのだから。

 そもそもがサトリや攻撃性波長感知などの特異点能力そのものが効果を成さない事を意味している。

 (・・・随分と手がこんでやがるな・・・)

 まるで、西南国の魔王、もしくは特異点能力のある魔王に対して組んだ戦略の様な形。

 この拠点を放置したという事は、やはり挑発なのか、それとも殺した住民の遺伝子情報の類でも用いてクローンを作り潜伏でもさせるのか、不明な点は多かった。

 「・・・アイツ等は・・・無事か?」

 店主が尋ねた。

 シャルディアは、アイツ等、というのが誰なのか心を読まずとも分かり、言葉を返す。

 「ああ、私の力で眠って貰ったりはしていたが・・・体調に問題はない。・・・今回のこの事件の首謀者が魔式の使用者である可能性が高い事含め、その魔式がどのようなものか判然としない点から、あの子達の身体の中に、魔式による何かの刷り込みや感染の類がないか、危険性踏まえて検査したが・・・其方も特に問題は無い。魔王城に保管してある人形の肉塊達も、私が魔式の配列を、私自身がある程度は魔式が使える事から調査して、掻き乱したりした処置をしたので内包魔力の起動の反応は見られない。・・・最悪、動き出しても問題ないように地下の厳重な施設に保管してある」

 「・・・内包魔力から追跡は?」

 「・・・現時点では西南国国内では見つかっていない。国外の者の可能性が高いだろう」

 店主へと説明した。

 そして、シャルディアはその言葉を伝えたからこそ、保護をした一人の男の子の顔を思い出し、

 「・・・」

 数瞬、黙した。

 店主が、

 「・・・?」 

 と、疑問符混じりの表情を浮かべる。

 それに対して、魔王が口を開いた。

 「関係の無い・・・話だが・・・」

 「・・・?なんだ・・・?」

 シャルディアは、店主へと伝えた。

 「・・・ショウタ・・・いや、アオバ・ショウタは、養子に迎え入れたいと思っている」

 「・・・そうか」

 店主は、険しい表情を幾らか緩和し、そう口にした。 

 ただ、厳しい顔付きに変わりは無い。

 だが、シャルディアは、

 「・・・だが、あの子次第だ・・・とだけは、ビリー、キミだけには伝えておきたい」

 「・・・・・・」

 ビリーは、それがどういう意味か、明確な理解は経ていなかった。

 ただ漠然とした長い年月を生きた生涯の一観、そこに基づいた認識だけは、経ていた。

 シャルディアが、居佇まいを整え、言葉を続ける。

 「それと・・・ビリー。魔王城に来てくれないか?」

 「・・・あん?」

 店主が怪訝な顔を示した。

 それは、言葉を聞いただけですらどことなく、拒絶が根にある様相だった。

 それに対してシャルディアは、

 「キミの所の可愛い従業員の若者に色々と教える事となったが・・・魔王である私が説明をしても、今回の西国の失踪事件やらも踏まえると・・・彼女とは中々信頼関係を構築するのは難しい状況なものでね・・・」 

 「・・・」

 「・・・彼女は、乖世感知や乖世収集、そして12方角統治ノ協定のルールの各条文の文面の詳細の知識は持ち合わせていない。彼女の年齢からすれば、仕方ないかもしれないが・・・・・・」

 「・・・・・・」

 店主は、痛い所を突かれていた。

 メルーの見識の無さは、店主が一番知っている。

 「・・・アイツの不安を緩和しろ、と?」

 「・・・そうだ。・・・頼む」 

 その魔王の願いの言葉に、店主はどこか溜息でもこぼしたそうな顔をしながら、

 「・・・ポルカ達に送ってもらう。応援が来るまではポルカ達の護衛をしている。それでいいか?」

 店主は、暗に了承を示していた。

 「すまないな、ビリー・・・」

 シャルディアは、申し訳なさそうにそう口にする。

 だが、店主が、

 「・・・それと、オイ」

 どこか、険しい顔でシャルディアの事を見つめた。

 シャルディアは「?」と疑問符を浮かべる。

 店主の口が動き、

 「さっさと店を直せ。なんで二階から上を消しやがった」

 と、文句交じりにそう告げた。

 シャルディアが、申し訳なさそうな苦笑を浮かべて、

 「・・・そうでもしないと、キミはポルカ達の護衛を断っただろう?」

 と、告げた。

 「あの店が無事で、メルー=アーメェイとアオバ・ショウタが魔王城で保護されているとなると・・・キミは1人で動き回ろうとするかもしれないと思った。・・・店を壊した事は悪かった。だが、天井も無い状態だと仮補修所ではないから、1人で出歩く事もできなかっただろう?」

 「・・・・・・」

 店主は、何も言葉にしなかった。

 それが、ある種の図星を突いたものなのか、それとも店主が呆れた無言なのか、純然に魔王の回りくどいやり口に怒りを抱いてなのか、店主の表情からは読み取れない。

 シャルディアが、気を許した相手に話す感じで、初対面の相手に見せるゆるびやかさや奥ゆかしさとは違う、自然体な雰囲気で、

 「・・・事が一段落すれば、クラゲ亭は元に戻すよ」

 店主へと、そう告げた。

 店主は、何とも言えない顔で一度軽く溜息をついて、

 「・・・けっ・・・」

 と、微妙な悪態をついて、

 「・・・・・・なら構わん・・・」

 と、返事をしていた。 

 魔王シャルディアは、逆境の中で少しだけ安らぎがあったかのような、緩い表情を浮かべていた。







 ====================================






あれから特に何もする事は無く、ベッドの上に座ったままのメルーは、再度本を読むようなことも無く、ぼんやりと玄関を眺めていた。

 だが、そのお陰で微細な変化がわかった。

 防音で音は気付かない。 

 だが、人の気配は、何となく分かってきた。

 そして、

 「・・・ぁ・・・」

 ふいに、単音をこぼしていた。

 部屋分け廊下の外側、そこに居る屈強であろう護衛課の人々。

 その認識が、メルーは音とかの五感の感知ではなく、別の五感を経て認識できていた。

 だが、遠くの方で、メルー自身が明確に認識できる存在が、近づいてきていた。

 それは、段々と近づいてくる。

 ふとした、頃合い。

 メルーはベッドから立ち上がり、玄関のドアの方へと歩み寄ってみた。

 そしてスリッパを履いて、玄関のドアのドアスコープを覗いてみる。

 「・・・あ・・・」

 すると、メルーの感知は正しかった。

 そして、メルーは呆気な顔をしてしまった。

 ドアスコープの右向こう側に、ぎりぎり見えたもの。

 それは、部屋分け廊下に入ってきている、左側に銀髪の魔王、そして右側に見切れて見えるショータの姿だった。

 「・・・」 

 メルーは、ショータの身が無事なのを見て安堵する。

 魔王が何かしたりしなかっただろうかという不安は、メルーが昨日の夜でショータに懇意的な事を説明した身の上だとしても、どうしても拭えなかった。

 それだけ、面倒で大事な問題が間近に絡んでいるとも言えたから。

 メルー自身には、どうこう判断して、綺麗に纏められるものとは、思えないし、出来る状況では、無いと思えたから。

 「・・・」

 だが、メルーはドアを開けてショータと会うような事は、できなかった。

 気持ちの問題。

 そしてメルーは、ただそんな気持ちで居る。

 (・・・ショータ、も・・・分かるように、なったのかな・・・)

 メルーはふいに、ショータが異世界とか、言語である程度の履修性を経たのだろうかと疑問に思った。

 それが、銀髪の魔王には出来る。

 ``言語履修``、それが銀髪の魔王の保有する特異点能力の1つ。

 そして魔王と成った者が12国の魔王となる際には必ず保有していなくてはならない特異点能力。そして魔王と成った者の殆どが保有している可能性の高い能力。

 それは、魔王の統治する国全土内で、住民が言語の自動翻訳の恩恵を受ける事が可能で、尚且つ期間が経てば経つほど、自動的に履修される能力である。

 それもまた、個人の素養に左右される。

 そして銀髪の魔王、シャルディア=センルーザーは、相手に言語の認識力をある程度与える事ができると、メルーは噂程度に聞いた事があった。

 そしてショータに謝った時、シャルディア=センルーザーの口にした職務の宣誓。

 それは、メルーが聞いた事のある噂を暗に肯定するものでもあった。

 「・・・」

 メルーは、ふいに俯く。

 何とも言えない間を置いて、部屋の椅子か、ベッドか、ソファーにでも戻ろうかと思った。

 

 ただ、見続けるのも辛かった。

 軽蔑を、嫌悪を、猜疑を、1人の男の子に抱かれるかもしれないという気持ちが、自分をそうさせた。

 

 メルーの心境は、ただその色合いが苦心にさせていた。


   ――――リィン♪


 サンダルスリッパを脱いで玄関に上がろうとした時、メルーの部屋のインターホンが鳴った。

 メルーは、ふいな顔をして、ドアの方を一瞥する。

 メルーは、怪訝な顔をしてドアに歩み寄り、ドアスコープを覗いた。

 すると、銀髪の魔王が尋ねてきていた。

 「・・・?」

 メルーは怪訝な顔のまま疑問符を浮かべる。

 ふいに、なんで魔王の特異点能力の1つである``テレポート``などを用いて、部屋の中に入ってきたりしないのだろうと思った。

 だが、今、この状況の、銀髪の魔王が普通に尋ねて来ている姿は、

 (・・・)

 メルーに対して礼儀を持ち、そしてメルーの意思に任せる事を、暗に示していると、メルーには思えてしまった。

 ドアスコープ越しに見える銀髪の魔王は、礼淑な姿勢を示していたから。

 「・・・」

 メルーは、玄関のドアノブへと手を回した。

 そしてドアを開けて、応対する。

 「どう、したんですか・・・?魔王様・・・」

 メルーのその言葉に、シャルディアは緩美やかな和らかい物腰で口を開いた。

 「・・・少し、ね・・・」

 「・・・?」

 「・・・中に入ってもいいだろうか?」

 銀髪の魔王はメルーへと尋ねていた。

 メルーは、数瞬迷いながら、

 「・・・どうぞ、」

 メルーは、シャルディアが入室するのを応対した。

 内心で、ここは『貴方のお城なのに、』という、立場の身の肩の狭さを感じてはいたが、きっとサトリで読まれているかもしれないし、それなのにわざわざ口にするのはメルーには気が引けた。

 「すまない・・・」 

 そして銀髪の魔王は、そんなメルーの内心込みなのか、誰にも分からないままの物腰和らかな姿勢のままでメルーの客室へと入室していった。

 メルーは肩身の狭さ故か、どう案内すべきなのだろうと迷ったが、魔王は気にせず自らが自然と部屋の方へと入って行っていた。

 メルーもその後に続いた。

 そして、銀髪の魔王は、ふいに左側の壁へと数歩歩み寄り、壁を見つめていた。

 それはベッドのある辺りより玄関手前寄りの、何も置かれていない壁の方。

 部屋の中に続いて入ったメルーは、その魔王の目線に疑問符を浮かべた怪訝な顔をする。

 そして銀髪の魔王は、メルーの方を向いた。

 「あの子に・・・``言語履修``を用いて、異世界の事などを教えた」

 「っ・・・」 

 「まず、それを伝えたかった」

 銀髪の魔王は、メルーへとそう告げた。

 それを聞いてメルーは、

 「そう、ですか・・・」

 何も言えない気持ちで、ただふいに視線を逸らすように小さく俯き、そう口にした。

 割り切れない気持ちが、内心で色々とない交ぜになっている。

 だが、上手く言葉にする事もできない気持ち。

 銀髪の魔王は、言葉を続けた。

 「・・・それと、避難誘導に関して説明もした」

 「・・・?」

 メルーは疑問符を浮べ魔王の方を一瞥する。

 魔王は言葉を続ける。

 「既に部屋分けの廊下ではない、表の廊下の方には魔王行政の護衛課の者達などが配置されている。緊急時には、彼等の指示に従って避難して欲しい」

 「・・・あ・・・はい・・・」

 メルーは、ふいに、この階の廊下が変に枝分かれしていた事を思い出す。

 そしてあれは、別の所へと繋がっているかのような廊下の分かれ道でもあった。

 「本当に魔王と成った者が相手ならば・・・あまり意味は無いかもしれないが、そうでないなら充分に機能すると思う。何より個人ではなく集団の可能性もある以上は、一種の戦争状態の警戒態勢が必要だ」

 「戦、争・・・」

 鵜呑みにしている訳ではないとしても、もし事実であるならば――――それは、笑い話にもならない悲劇が生まれる事を意味しているのだと、メルーは否応なしに理解はしていた。

 「今朝の襲撃してきた人形達や、西国の事件との関連性も不明。尚且つ目的も人間の子供という可能性はあれど、その狙う理由も不明と、分からない点は多いのが事実だ。・・・最悪の場合には、この城が崩落して、キミやショウタが生き埋めになる可能性も・・・ありえる」

 「っ・・・」

 「私は、そんな事をさせるつもりはない、が・・・それでも万全は期したい。いつの時代になろうと、戦争というものがままならないものだとしてもね」

 魔王は、真剣な表情でそう口にしていた。 

 「だから、メルー=アーメェイ。この部屋に幾らか緊急の脱出路を配置させて貰おうと思っている」

 「・・・脱出路、ですか・・・?」

 「そうだ。少し、見ていて欲しい」

 魔王は、そう言うと先程まで見つめていた壁の方へと歩み寄って行った。

 そして周囲に何も置かれていない壁へと右手を触れた。

 すると、壁が、

 「・・・っ・・・?」

 水面の波紋のように揺らいでいた。

 魔王が、数秒触れ続けると手を離す。

 「これは特異点能力の``クイック・ドア``というものだ」

 「クイック・ドア・・・?」

 「配置型のものでね。・・・見た目は壁になっているが、オープンドアみたいになっていて遮られる事はなく、ここを通れば向こう側の部屋へと出る事ができる」

 その言葉に、メルーはふいに小さく驚く。

 (ショータの、部屋に・・・?)

 メルーは、微妙な内心になった。

 そしてそれを見越してなのか魔王は、

 「・・・キミの気持ちの問題がある中で、あの子の部屋に入れるという旨を例として引き合いのはよろしくないとは思っている。だが・・・これはそういうキミの気持ちに対して余計な過干渉をしようと思って行っている行為ではなく、緊急避難の通路として、説明しなくてはならない事柄だ」

 そう、メルーを説得していた。

 「度々すまない、・・・だが、できれば私の話を聞いて欲しい」

 メルーは、その言葉に何とも言えない気持ちになりながら、しぶしぶ内心も無言になる。

 そのメルーに魔王は、

 「すまない・・・ありがとう。・・・話を続けよう」

 言葉を続ける。

 「・・・ここ以外にもベランダの床や、あのキッチンの左隣の空いた辺りの壁の方にも、クイック・ドアは設置した。ベランダの方は下の階への逃走用、キッチンの方はドアを経由せずに廊下へと出る為のもの、そして隣の部屋へと繋がるのは・・・最悪の場合、キミの・・・力を借りるかもしれないからだ」

 その言葉に、メルーは怪訝な顔で、それでいて少しばかり困惑の色を浮かべた。

 魔王は言葉を続ける。

 「先程言った、崩落の可能性。・・・もちろん、そんな事態にする気はないし、魔王行政の者達がキミ達を避難誘導できるようにするつもりだ。何より相手側の狙いがアオバ・ショウタである可能性が高い以上、下手にそんな目標の命が危ぶまれるような大雑把な事はしない可能性も高いが・・・それでも万全は期しておきたい」

 「・・・もし、魔王城に被害が出て・・・ショータの部屋に入れなくなったら、私が助ける役割を担ってほしい・・・という事ですか・・・?」

 「その通りだ。もちろん、そんな事態になればショウタの部屋へと突入するのは此方のレスキューの人員だ。だが、キミの部屋にすら廊下から玄関のドアを侵入ができない状態になった場合には、廊下からこの部屋へとクイック・ドアを経由する形で、此方の者が進入ができるようにはしておくが・・・それでも部屋の外の廊下そのものが、誰も立ち入れないような凄惨な状況と化した際には、キミ1人で逃げなくてはいけない状況にもなりえていく。そうでなくても可能性としては火急な事態故の柔軟性が必要なパターンもありえる」

 「・・・」

 「キミに・・・1人の子供の命を、最悪の場合は任せてしまう事を、許してほしい」

 メルーは、その説明に度々微妙な気持ちになる。

 今、この巻き込まれている状況そのものが、全部事実なのか否か、それ以前に魔王の主張自体が推察の域を出ないものとして、説明されている以上は、何も確信に至れるものがない。

 だが、もし本当に、自分の巻き込まれている事件の首謀者が【魔王】と成った者であるならば?

 それは、魔王のこの細心すぎる姿勢が何らおかしくないものである事を意味していた。

 メルーは、何とも言えない気持ちだったが、

 (・・・ショー、タ・・・)

 1人の男の子の命がもし、本当に危うくなったりしたら、

 (・・・)

 彼女にとっては、見過ごす事はできない事と、言えた。

 「・・・わかり、ました」

 メルーは、応じて返事を返した。

 魔王は真剣で、真摯な雰囲気は変わらず、しかしどこか、申し訳なさそうな顔で、

 「・・・本当に、すまない」

 そう、告げた。

 そして、魔王は言葉を続ける。

 「・・・隣の・・・ショウタの部屋の方も同じ様に左右対称の位置でクイック・ドアを設置しておく。クイック・ドアは、普段は開いていない状態だ。だが、私が緊急事態と判断すれば、即座に開き、見た目は壁だが通れるようになる。だが・・・それは私が存命していて、尚且つイレギュラーが発生しておらず、魔力の供給が継続している場合に限る事は、気をつけておいてほしい。つまり、開いておらず、ぶつかって身体を打つ事もありえる」

 「・・・あの、」

 「・・・何故テレポートを用いないのか、だね?・・・私もテレポートを用いてキミ達を護送するつもりだ。・・・だが、相手が最悪のパターンである場合には・・・万全を期さなくては護れない。・・・いや、私がキミ達を護送する前に、私自身がこの世にいなくなっている可能性もある」

 「っ・・・」

 「・・・ショウタの方には、分身体の私が居る。既にこの内容は説明してある。・・・長々と説明に付き合わせてしまってすまない」

 銀髪の魔王はそう言って、玄関の廊下の方へと歩き、

 「それでは・・・失礼する」

 そう告げて、玄関のドアの方へと歩いて行った。

 メルーは、それを微妙な心境で見送った。

 だが、ふと、魔王はメルーの方を振り向き、

 「・・・メルー=アーメェイ」

 「・・・?」

 「・・・国の代表として・・・この様な物腰や態度や姿勢としては・・・よろしくないと理解はしている。だが・・・聞いて欲しい」

 「なん、ですか・・・?」

 「・・・私はサトリが使え、キミの心が読める。・・・この火急で性急な事態がある故に、時間を置いてから多くの事柄を説明するということも、あまりできない最中だ。だが・・・そうだとしても、・・・間が悪いとしても、キミの今の心境に1人の人間の男の子の事に関連してしまう内容の話を口にする私の品性、モラルの無い姿を侮蔑してくれて構わない」

 「・・・」

 「だが・・・私は謝りたい。・・・そして、本当に、これから迷惑をかける。・・・すまない」

 そう言って、魔王はドアノブに手を回し、部屋を後にしていった。

 取り残されたメルーは、

 「・・・」

 相手がサトリが使えるからこそ、気持ちの整理をするのは、悔しくて、色々とぐるぐるしている気分だった。

 それが、真剣な謝罪の言葉の様に見えてしまうから、尚更だった。





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 ショータは、ソファーの上に座っていた。

 服は魔王から説明されたまま、机の上に置かれていたショータの私服に着替えた。

 そして患者服は机の上に畳んで置いていた。

 肘を置く場所も無い程に横長なソファーの上で、両手はふとももの上に置いたまま、カーテンの閉じられた窓を見つめていた。


 「・・・」

 クイック・ドア、という魔法みたいな事を教えられた。

 

 『ショウタ、もし・・・何かあったら、そこから逃げなさい』


 ショータには、どういうことなのかよく分かってはいなかった。

 なんで、そんな魔法があるのかも、全然分からなかった。

 何故、必要なのかも、漠然としか分からなかった。


 ただ、1つの事が気がかっていた。

 (・・・メルーさ、ん・・・)

 ショータは、右後ろを見た。

 それは、玄関廊下のある辺り。

 しかし、そこではなく玄関廊下よりも左側の、ベッドの枕元と平行な、何も無い壁の方を見つめていた。

 「・・・・・・」

 ショータは、何とも言えない気持ちで俯いた。

 

どれぐらい時間が経ったかも分からない程に、ただ、現実感の無いぼんやりとした気持ちで時間が過ぎ去っていった。


 外の明かりが夕日の時間が迫ってきていた。

 (・・・)

 ショータは、ふいに昨日の事を思い出していた。

 それは、ユウセイ町の住宅街の路面を歩いていた記憶。

 「・・・」

 ショータは、自分の心の在り処が、わからなくなった。

 (・・・)

 天井を仰ぎ見るように見つめた。

 視界の下側に夕日の色が混じった。

 ただ、ショータは何もすることもなく、ただ、どうすればいいのかもわからず、ただ時間だけが無為に過ぎた。


 ただ、

 そんな無為に過ぎる時間の中で、脳裏に浮んだのは、


大切な、2つの影。

 そして、同じ所に在る、1つの影。

 

 (・・・樋口、さん・・・・・・)


 ショータは、無意識の内に、

 魔王から与えられた言語の知識に基づいて、

 覚えられていなかったはずの人の名前の漢字を、そしてその影を思い出していた。


 ―――――その脳裏に、メルーの存在もぼんやりと思い浮かべて――――

 

 「・・・」

 ショータは、ズボンの右ポケットへと手を伸ばした。

 机の上に、一緒に置かれていた歯ブラシセットとコップ。

 歯ブラシセットはポケットの中に入れて肌身離さず持ち続けていた。

 コップは、ショータの手の中にある。

 さっきからずっと、両手で大事に持ち続けていた。

 どちらも肌身から離したくなかった。

 それが、ぼんやりとメルーの姿を思い浮かぶ理由なのかも、ショータには判然としなかった。

 

 また、現実感の無い心が、ただ無為に時間を過ぎ去らせていた。



 


 

 ==========================================






「たくっ・・・ここは相変わらず広すぎんだよ・・・」

 ビリー店長が面倒臭そうにそう口にしていた。

 歩いている場所は、魔王城の廊下。

 ビリー店主の左側の触手の1本は、中身の入った白い大きめの紙袋を持っている。 

 ステンドグラスの窓の向こうから夕日の終わりも近い夜の色が入り込んでいる。

 ステンドグラス側を右に、そして店主を左にして歩くポルカが、

 「まぁまぁー〜」

 となだめていた。

 ビリー店主は、その廊下のあたりを見渡した。

 ちらほらと、銃火器や防弾兵装の武装した魔王行政の護衛課の者達の物々しい様相が見受けられる。

 (・・・3階からの脱出用通路込み、か・・・)

 店主は、保護という名目で護衛されている従業員の事を、最悪の場合の時には案内する事になるであろう者達の姿を見てふとそう思った。

 そしてそれは、この廊下の辺りだけに限らず、要所全てが、似た様な警戒態勢と化している。

 それは、どちらかと言えば魔王と魔王との戦いが起きた際には、最悪の場合は避難優先で逃げられるようにする為の布陣。

 店主は、もうしばらくは、それなりのメンバー以外にはまだ秘匿として態勢を整えるのかと思っていた。

 だが、どうやら西南国魔王行政のメンバーの殆どは知り得て、魔王の指揮下の元に態勢を整え済ましていたようだった。

 (こりゃあ・・・あと2、3日で世間にも情報が出るな・・・)

 前例の無い事態。

 だが、最悪の場合は魔界の12国の何国かが滅んでもおかしくない事態。

 

 ――――魔王とは、災害。

 ――――魔王とは、力。


 古い時代の在り方ではない、12方角統治ノ協定が成立した、現代で起きた初めての前例。

 「・・・」

 店主は、鬱屈とも面倒とも取れる気持ちのままに歩いていた。 

 そして、目的の部屋分け廊下への入り口のドアの辺りへと来る。

 その辺りは、エルフ種が多数で構成された護衛課の者達が護衛者として配置されていた。 

 全員が武装している。

 人数は6名。

 そしてエルフ種は5名。

 エルフ種ばかりが居る姿を見て、店主は、

 (・・・ショウタの為か?)

 比較的、人間と姿形が近しい者で近辺を固め、パニックなどに陥らないようにしている策かと思った。

 ただ、エルフ種は聴覚が優れている。

 避難誘導の立場としては、確かに人材の配置としては間違えていない。  

 ポルカがドアの近くへと来た。

 そして唯一、エルフ種の者ではない、ファイター種の者がドアの前で点検役の様に立っていた。

 だが、そのファイター種の男性は、既にポルカ達に気付いていて、お辞儀をしていた。

 ポルカが、そのファイター種の男性へと声をかける。

 「サバクさん、」

 ポルカが、ヅァの名前を呼んだ。

 ヅァは、応対する。

 「はい、なんですか?ポルカさん」

 ポルカはビリー店主の方を左手で手向けて紹介する。

 「此方、ビリー=ラグラギァさんですよー。確か初対面ですよねー・・・?」

 「はい。そうですけど・・・」

 ヅァは、そう返事をした。

 そしてヅァは、ビリー店主の方を向いて、

 「はじめまして、ヅァ=サバクと申します。事前に連絡は承っておりますので・・・」

 ヅァは、ドアノブの方へと右手をかけて、ドアを開けて、

 「どうぞ、お入り下さい」

 エスコートするまま、そう薦めた。

 ポルカは「ではー〜・・・」と口にして入室していった。  

 そしてビリー店主も、

 「すまん、入らせてもらう」

 続いて中へと入って行った。

 既に、ドアが開いた時点で、その銀髪の魔王の姿は見えていた。

 「・・・来たか、ビリー」

 銀髪の魔王は向かいのシンメトリーの左右のドアの中心、そして壁際に立っていた。

 少し歩いて片手を伸ばせば届きそうなぐらいの距離。

 先に入室していたポルカが、魔王へと口を開いていた。

 「ビリーさんをー、ご案内いたしましたー・・・」

 「ああ、すまなかったね・・・ポルカ」

 「いえー・・・ではー・・・自分は持ち場にー・・・」

 「ああ、ポルカ。地下室の方での鑑識を頼む」

 「はいー〜」 

 ポルカは店主と擦れ違い、

 「あとはお願いしますー・・・ビリーさんー・・・」  

 そう告げて、部屋から退出していった。

 ポルカが退出し、店主が完全に入室すると、ドアがゆっくり閉められた。

 そして店主は魔王を一瞥して、声をかけた。

 「・・・で、ウチの従業員はどっちだ?」

 「此方だ」

 魔王は、左手を動かして、店主から見て右側の方の客室のドアを指し示した。

 それを見て店主は、

 「それぞれ・・・別室という事でいいんだよな?ショウタとメルーは」

 そう魔王へと尋ねた。

 「ああ、そうだ」

 「・・・」

 それを聞いて、店主はメルーの居る客室の方へと歩いた。

 そしてドアの前に立つと、触手を伸ばしてドアの右側のインターホンを押した。

 少し時間が経つ。

 しかし変化は無い。 

 「・・・?」

 店主は怪訝な顔をした。

 向こうでちゃんとインターホンの音が鳴っているのか否か、防音性が高い為に普通の者には判別つかないレベル。

 一応、店主はインターホンの音を拾えてはいたが、それでも反応が無いのに怪訝になった。

 店主は怪訝な顔で、もう一度押した。

 すると、

 

   『ド、タバッ・・・』

 

 なにやら、変な音がした。

 店主は一瞬、怪訝な顔を強める。

 普通の人には聞こえないレベル。

 しかし、ドアの向こう側から段々と、防音性が高くても店主の感覚は駆け足気味の足音が拾えていた。

 そして、数瞬、それはまるでドアスコープでも覗いているのだろうかと思わせる間を置いてから、


  ッガチャ、


 ドアが開かれた。

 「て、店長っ・・・?」

 メルーが、驚いた顔で出迎えていた。

 その顔は、どことなく寝ぼけ眼気味だった。

 店主が怪訝な表情で、

 「・・・寝てたのか?」

 と、尋ねていた。

 そして、メルーは、

 「・・・す、すいません・・・」

 と、普段の色々と釈明する様子ではなく、元気の薄い感じでだけで謝っていた姿を示していた。

 それを見て、店主は片眉を上げた。

 店主は、魔王の方を一瞥しつつメルーに聞いた。

 「・・・隣の野郎がアレコレ口にしたと聞いたが」

 メルーはそう尋ねられて、店主の隣に魔王が居る事に寝起き眼気味で気付くに遅れて、今になって気付く。

 その為か、苦い顔で目を物凄い泳がせて自然と店主と目線が外れていく。

 店主は溜息をついて、シャルディアの方を一瞥し、

 「しばらく2人になるぞ」

 と、告げて、ドアを閉めようとした。

 だが、その前に店主は魔王へと、

 「・・・``サトリ``を使うんじゃねぇぞ」

 厳しい目線を向けて伝えた。

 魔王は、シャルディアは奥ゆかしくも、瞼を閉じて眉を下げる、まるで両手をあげれば『おてあげ』とでも言わんばかりの顔で、

 「・・・何も無ければ」

 と、答えていた。

 店主は「ケッ」と悪態をついてドアを閉めた。

 そして玄関に立つと、メルーへと、

 「とりあえず、あがっていいのか?俺は話をしたら直ぐに出て行くでもいいから、ここで話をするでもいいんだが」

 と、告げると、メルーは慌てて、

 「い、いえ。・・・クラゲ亭の部屋でもないよそ様の城のお部屋なんで変ですけど・・・」

 と告げてメルーは身を引いて廊下にあがれるようにした。

 そして店主は触手に履かせていた黒い長靴を脱いで、メルーの案内のままに客室内部へと入っていく。

 そして、1ルームの最中に立つメルーは、微妙に手持ちぶたさになる。

 店主は、そんなメルーに呆れつつ、近場の机の椅子を引いて、腰を降ろした。

 店主の後ろはキッチンになる席である。

 メルーはそれに気付いて慌てて店主から見て左側の席の方、メルーに一番近かった席へと腰かけた。

 店主が、口を開いた。

 「で・・・色々とあれこれ聞かされて困ってると聞いたんだが・・・」

 店主のその言葉。

 それに対してメルーは、

 「あの・・・西国の失踪事件・・・」 

 「・・・」

 「・・・で、何だか、店長って色々ご存知・・・だったりしたんですか?

 その問い掛けに対して、店主は口を開いた。

 「西国の魔王行政の知り合いツテとかだがな。・・・大方、あの野郎からそこら辺の事もそんな風に吹き込まれてるだろ」

 店主は面倒そうにそう口にしていた。

 メルーは、そんな調子の店長を見て、

 「・・・」

 何となく、ホロリ、としてしまった。

 それは、一種の安心感。

 「・・・偽者とかじゃないん・・・ですよね・・・?」

 「・・・は?」

 「店長じゃなくて、別の人・・・とかじゃないんですよね・・・?」

 メルーのその問い。

 店主は何を言っているんだとでも言いそうになったが、メルーの顔を見てそれを止めた。

 メルーは、我慢していた不安が今にもどっ、と流れ出してしまいそうな雰囲気だった。

 「魔力、とかも・・・店長の感覚と同じ、ですから、本人、ですよね・・・?・・・」

 「・・・はぁ・・・」

 店主は呆れたように溜息ついた。

 「・・・俺はあの野郎が他人のクローンやら影武者やら作る特異点能力を持っているなんて知らなかったがね・・・科学分野なら専門外だが」

 店主は茶化すようにそう口にした。

 メルーはそれを見て、「・・・もうっ!」と声を荒げた。

 だが、直ぐに意気消沈してしまう。

 それを見て店主は、

 「・・・随分と疑心暗鬼だな」

 「・・・そりゃあ、もう・・・」

 メルーは、答える。

 「初めてご対面、って感じですけど・・・サトリとか、何とか・・・もうあれ、とんでもないですよ・・・本当に・・・」

 と、魔王という存在の特異点能力の異質さに参っている様子だった。 

 だが、直ぐ様に、ハッ、とメルーはして、

 (・・・文句・・・みたいなのもバレてる・・・っ・・・!?)

 と、サー、っとなってしまっていた。 

 店主は、そんなメルーの青くなった顔の理由もおおよその見当をつけながら、呆れつつも、

「・・・」と無言で、とりあえず触手の一本で持ってきていた紙バッグを机の上に置く。

 そしてそれから中身を取り出してメルーの前へと渡した。

 メルーはそれを見る。

 その本は、魔界の知識書だった。

 12方角統治ノ協定や特異点能力に関してなどの専門書が5冊置かれていた。

 「・・・これは・・・?」

 「途中で買ってきた。・・・Q&Aにも答えるがな」

 店主はそう淡々と告げていた。

 「まぁ・・・お前は疑ったままでいいだろ。・・・こういう場ではそれぐらいの気構えの方がマシだ」

 「・・・」

 「・・・まぁ、とりあえず聞きたい事があったら聞け。俺も知ってる範囲なら答えるから」

 「・・・は、はい・・・」

 メルーは、微妙な気持ちのままで、とりあえず色々と聞いてみた。

 魔王から説明された事柄。

 12方角統治ノ協定、そして乖世収集などの特異点能力に関する事柄など。

 そんなに多くはなかったが、一通り聞き終えると、

 「・・・お前・・・」

 店主は、本当に呆れた様子で、

 「・・・本当に少しは勉強しなさい・・・」

 と、あの店主が最後の辺りがやんわりとした言葉遣いになる程に、落胆を示していた。

 やんわりとした言葉遣いでも、呆れがとんでもなく含まれている。

 それを見てメルーは、

 「なっ、!?」

 と、抗議の姿勢を示そうとしたが、直ぐ様に意気消沈していってしまう。

 それを見て店主は、

 (・・・重症だな・・・おい・・・)

 と、思うしかなかい。

 そしてとりあえず店主は口を開く。

 「・・・ちゃんと調べりゃ分かる事だろ。・・・自分の目で世間の共通の認識のある知識に触れんと、今回みたいにアレコレ世間の認識を知らん故に面倒な事になるだけだぞ・・・」

 「・・・は、はい・・・」

 メルーは、肩身狭い雰囲気になっている。

 店主は呆れたままに言葉を続ける。

 「それにな、そんなんじゃ詐欺のカモになるだけだぞ、オイ・・・。まぁ、鵜呑みにしてない姿勢はいいがな・・・」

 「・・・え、と・・・それで、店長Bとしては・・・魔王様の説明は間違いない、という事で・・・よろしいので・・・?」

 「・・・なんだ店長『B』って・・・」

 「いえ、・・・本人かどうか分からないのでとりあえず・・・」

 「・・・俺は数学の仮定の部分かよ・・・」

 店主は何だか頭痛がしてきそうな気分になってくる。

 「乖世収集だぁ乖世感知だぁだとかの点や、そのルールに関しては少なくとも店長Bの俺は、正直あの野郎のサポートしているみたいで嫌だが、事実ですよ、とだけ言っておくわ・・・」

 「・・・もしかして、店長B、って呼ばれるの・・・怒ってます?」

 「・・・お前は人様から番号やら副次の指定で呼ばれたりするのが好みなのか?」

 「・・・す、すみません・・・失礼だとはわかってるんですけども・・・」

 「・・・分かってるなら止めとけよ・・・」

 「・・・店長なら、・・・店長ならツッコミを入れてくれる、かと・・・」

 「・・・」

 店主は、ゲンコツの一発でもしなきゃいけないのだろうかと思えてきた。

 対してメルーは、そう告げてとりあえず居佇まいを直して、

 「・・・とりあえず・・・信じられる訳じゃないんですけど、店長だって思って接する事にします、ね?」

 「・・・本当に疑心暗鬼になってるな・・・お前・・・」 

 「だ、だってぇ・・・」

 「・・・話は終わりか?終わりなら、俺は部屋から出るが・・・」  

 店主は、腰をあげそうな雰囲気だった。

 「・・・えっ、」

 メルーは、少し意外そうな顔をした。

 「・・・ど、どこに行くんですか?」

 「・・・なんだ、一体・・・。俺も少し調べたい事ぐらいはあるんだが・・・」

 「あ、いえ・・・その・・・」

 メルーは、どこか、何かを尋ねたい様子だったのに、言葉にするのに躊躇いがある様子だった。

 そして、恐らくは、その尋ねたい事柄とは違う言葉を、先に出したらしい雰囲気で、

 「と、隣にっ・・・ショータが居るんですっ」

 「・・・ああ、知ってるが・・・」

 「・・・あ、・・・そっそうです、か・・・」

 「・・・ホントにどうした?」

 店主は、怪訝な顔でメルーへと尋ねた。

 そして、メルーは躊躇いがどこかにある雰囲気で、

 「・・・あ、の・・・貴方を、店長だと思って・・・聞きます」

 「・・・?」

 「・・・魔王様、が・・・ショータを囮にした・・・らしい、ん・・・です」

 「・・・」

 「・・・ちょっと・・・酷いな、と思って・・・けど、・・・ホントに今回の事件に、管理外の魔王の人とかが首謀者とかだったら・・・何とも言えなくて・・・」

 店主は、メルーのその言葉に、何が言いたいのか把握ができてしまった。

 店主は、目の前の従業員が西南国魔王の事を懇意的に思っていた事を知っている。

 それは治世の評判の事柄。

 そしてそれは、一般大衆からすれば然程差異も無い程合いのものだろう。

 「・・・」

 店主は、ふいに目線をドアの向こう側に居るであろう銀髪の魔王へと向けるように一瞥した。

 そして、内心で溜息をつく。

 (・・・どうせ、サトリでバレてんだろうが・・・)

 店主は、言葉にする事にした。

 「・・・メルー」

 「は、はい?」

 「・・・俺はな、店に襲撃しかけてきやがった連中が来る前に、空にあの野郎が居る事には気付いていた」

 「・・・え・・・」

 「・・・というか、昨日の夜から・・・だな。あの野郎がなんで保護をしにこずに本体で昼行灯決めこんでんのかも、まぁ西国の事件絡みだろうってのは想像も出来ていた」

 「・・・そう、なんですか・・・というか、だったら西国の事件とか、教えてくれてもっ・・・」

 「お前に教えたらご近所に言いふらすんじゃねぇかと思ってな。・・・まぁ、実際は何事もなけりゃそれでいい、って考えだったんだが・・・まぁ、俺が言いたいのはそこら辺の事じゃなくてな」

 「・・・?」

 「あの野郎を擁護する気なんざ、サラサラねぇが・・・あの野郎はあの野郎で本体で昨日の夜からずっとクラゲ亭の護衛者をやっていた訳だ。お前やショウタを護る為にな。それは一種のケジメをつけてるものと言えるんじゃねぇか?」

 「・・・ケジメ・・・?」

 「力のねぇ野郎がんな事しても、ただのパフォーマンスだがな。だが、管理外の魔王っつー可能性がマジなら、対応できるのは魔王だけだ」

 「・・・・・・」

 (ケジメ・・・)

 メルーは、何とも言えない気持ちで漂っている気分になる。 

 「ただ、ま・・・俺を本人かどうか疑ってる状態のお前じゃ、あれこれ話してもどうしようもねぇだろ。別に無理して今すぐに評価だ何だを決める必要なんてのは無いんじゃねぇのか?今回の沙汰も事の次第によっちゃあの野郎は魔王失格所か、西南国の国民全員から恨まれる立場になりえる訳だからな」

 店主は、姿勢整え、そう口にした。

 そして玄関廊下の方へと歩いていく。

 「て、店長っ・・・?」

 「さっき言ったろ?調べたいものがあるってな」

 「・・・」

 「・・・それが終わったら布団でも借りてココにしばらくは居るから安心しろ・・・」

 「っ、あ、いやっ・・・」

 メルーは、何となく図星を突かれてしまっていた。


 そのせいで、何となく『ほ、本当は魔王様が変身した店長とかじゃないんですかっ!?』みたいな事を口走りそうになった。

 それはメルーが特異点能力の事に詳しい訳じゃないからこその不安。


 だが、不毛すぎる気がして、メルーは消沈する様子で口を閉じた。

 それを見て店主は、怪訝な顔をしながらも、

 「んじゃあ、行ってくる」

 そう告げて、玄関廊下を歩いていった。

 メルーは、見送りで玄関廊下まで後を追ったが、店主は言葉通り、直ぐ戻るつもりなのか、特にこれと言って言葉も無く部屋を退出していった。 

 また1人ぽつんと取り残されたメルー。


 気持ちが色々整理しきれない気分の中で、ふて寝も同じ状態になっていたメルー。 

 インターホンの音が鳴ってハッ、として普段の調子に近い感覚で応対はできていた。

 だが、また1人になると、無性に変に辛くなる。

 ふて寝で寝ぼけていた頭が、また悩み始めるから。

 (・・・・・・はぁ・・・)

 メルーは、ふいに右側の例のクイック・ドアの設置されている壁を一瞥して、溜息をついていた。





 

===========================







ポルカは地下一階に居た。

 そして地下の廊下を通り辿り着ける部屋に居る。

 『鑑識班―配点・回収地下保管庫』という部屋。

 そこは地下の鑑識班用の事件資料保管庫の1つである。

 ドアを開けて入れば、目に入るのは科学特査調査の鑑識作業場の席が左側に、資料保管の棚などが右側に奥へと何台も並ぶ姿が見える。

 広さはそれなりに広く左右奥行きどちらも15メートル以上はある部屋である。

 これと同じ鑑識課の保管庫は地下以外にもあり、地下の場合は危険度の高いものが保管される形となっている。

 この部屋も、銀行の大型金庫の様なドアと鍵が一体になった施錠扉がドアの手前に成される部屋であり、今はポルカ以外誰もいない場所でもある。

 だが、その大勢の鑑識の人間が同時調査作業が出来る場の施設の方にもポルカはいない。

 ポルカが居るのは、この部屋の入り口の反対の、奥の方にあるドアから入れる、もう1つ先の部屋である。

 その部屋は、様相で言えば取り締まり室を隣室からマジックミラーで見るような様式の部屋だった。

 ポルカの居る部屋は畳みが5畳ぐらいの長方形の部屋。

 そしてポルカの眼前に写るのは、防弾ガラス越しの、更に20畳ぐらいの広さの隔離庫。

 入り口から見て右側の方が、防弾ガラス越しの隔離庫が見える間取り。

 その隔離庫の中には、様々なロボットアームが起動していた。

 そして床に整理されて置かれている、クラゲ亭を襲った人形達の飛び散った肉塊達を検査していた。

 全てが、指先程のサイズより小さい、小石ぐらいのサイズにまでなっていた。

 

 そして、肉塊達は『緑化』されていた。

 緑色のコケの様なものが生い茂っている。

 それは、魔式などの危険性を除去する為の必要施術の1つ。

 魔素とは、緑化されると減退する傾向がある。

 そしてこのケースの緑化とは、普通の緑化などの言葉の意味を指さず、魔界の技術のものになる。

 緑化散布剤や、生殖魔力吸収コケなどの魔界特有の生産・養殖物を使う。

 魔式の除去作業としても、扱われる。

 そして尚且つ、別途に魔式の扱える素養のある者が、認識できる言語化の情報の配列を崩す処置もなされている。

 それは魔王シャルディア=センルーザー自らが処置を行ってもいる。他の者達も動員されて処置をしてはいる。

 そしてポルカはそれ等の処置の施された肉塊達を調べていた。

 もう既に、動く事もなくなってしまった肉塊達。

 ポルカの手元には操作端末や液晶画面の備わった機械が左右の端から端まである。

 それが、隔離庫内のロボットアームなどを操作する為の機械。

 その端末の画面に映る、調査で分かった情報の羅列を読んでポルカは唸っていた。

 (・・・うーん・・・やっぱり、西南国の住民・・・と、幾らか合致するみたいな部分もありますねー・・・)

 ポルカは、仕分け壁の間近の辺りで見た工場内の遺体達を思い出していた。

 そして、その遺体達の遺伝子情報や魔素遺伝子の情報を主体に照会していって、それが幾らか合致する部位が発見されてしまっていて、重い気持になってしまっていた。

 (・・・やっぱり・・・遺伝子組み換えー・・・や、そこから更にクローンで・・・)

 ポルカは、得られる情報が多い事を幾らか状況の好転として喜ぶのを半分、犠牲になった人々の数からしての悲しみを抱き、苦心する。

 (・・・西国の魔素遺伝子の個人情報データバンクと、また照会もしないといけないですねー・・・この場合は、合致率じゃなくて、配列の小さな部分からの照合性を見ていかないといけないですねー・・・)

 ポルカは色々悩みながら、魔素の採取やデータの確認を続けていた。

 すると、ふいにこの部屋のドアが開く。

 ポルカはドアの方を見ると、ビリー店主が居た。

 「おう・・・どうだ?」

 ビリー店主がポルカの方へと近寄る。

 「どうしたんですかー・・・?ビリーさんー・・・」

 「野暮ったいのは止めてくれよ・・・つーか、わざと聞くって事は・・・やっぱり当たってたって事か?」

 「・・・」

 ポルカは、図星を突かれて溜息つく。

 「・・・そうですよー・・・ビリーさんの予想通りー・・・でした・・・」

 今しがたポルカが調べていた内容は、ビリーの提案で再び調べなおしていた内容だった。

 西南国・西国の住民データ全てと照会が終わっている訳ではないが、それでもあの犠牲者達の遺伝子情報や魔素遺伝子情報は最優先で調べる事になった。

 だが、合致率が低い。

 しかし、合致率に換算されないほどの小さな部分で、魔界特有の配列としては同じ部分が散見されすぎていた。

 それは、それぞれの種族でしか見られない程の固有性の部分。

 種族能力などの、部分。

 店主は、クラゲ亭を襲った人形達の中のガーゴイル種が火炎弾を吐き出した事から、血肉だけではないはずだ、と調べる事を提案していた。

 結果、ガーゴイル種の人形だけは、ガーゴイル種の内部構造を再現していた。

 それが、今しがたの調査で判明したことでもあった。

 故に、あの被害者達が襲撃者達と関係があるという裏づけが手に入った。

 重点的に調べなくては、かなり乱雑の様で緻密に誤魔化す様に配列を組み込んでいる遺伝子情報である為に数日は時間がかかったかもしれない。

 ビリー店主は、ポルカの見ていた端末の液晶画面に表示された情報の羅列を一瞥する。

 「・・・見た事のねぇ類だな・・・」

 店主が、ふいにそう声をこぼしていた。

 「どれの事ですかー・・・?」

 「魔式の言語化の部分だ。あの野郎が情報結晶である程度は情報を回してるだろ?・・・んで、コッチの魔式のエネルギー源になってる魔力の反応、もしくは魔素遺伝子の情報・・・コレの照会は終わっているのか?」

 「ソッチはまだですよー?・・・何せこの操られていた人形達の魔素遺伝子と混在するかのような、器用な形で偽造されてたのでー・・・」

 「・・・面倒だな・・・」

 「・・・」

 「・・・どした?」

 「・・・あ、いえー・・・」

 ポルカは、仕事を一段落つけた雰囲気で口を開いた。

 「相変わらずぶっちゃけちゃいますねー・・・『あの野郎』・・・ってウチの魔王様の事ですよねー・・・?」

 「・・・あん?」 

 「もう私達みたいな付き合いの古い人にはー・・・今更な感じもしますけどもー・・・やっぱり、悲しまれると思いますよー・・・?魔王様、女性ですしー・・・」

 「今更とか言うのに、んな事を言うのかよ・・・」

 店主は、肩身狭いのを演出するかのような肩透かしの仕草をしてみせる。

 「・・・まぁ、それは置いとけ。・・・で、やっぱ厳しいのか?遺伝子組み換えやクローン技術の逆解明は」 

 「ええぇー・・・基本的に12国で禁止されてる事ですしねー・・・研究施設とか以外じゃ、クローンも、生物遺伝子組み換えもアウトですよー・・・」

 「・・・首謀者は魔王、って線が濃くなるな。・・・異世界から道具と知識引っ張りだしてくりゃ、OKな訳だしな・・・」

 店主な内心で苦虫を噛む。

 ポルカは、

 「・・・人海戦術でよろしければー・・・少しはー・・・マシになるとはー思うんですけどもー・・・」

 店主と然程変わらない感じで苦虫を噛んでいるかのような気持ちのようだった。

 「人海戦術・・・っつー事はまだ時間はかかるか?」 

 店主はポルカへとそう尋ねた。

 そしてポルカも口を開いて答える。

 「恐らくはー・・・」

 「・・・分かった。・・・ここにある肉塊共について、民間の鑑識組合はいつ同伴させる予定だ?」

 「今の所は未定ですねー・・・」

 「・・・未定、ってのは聞き捨てならねぇが・・・パニックは避けたい、って事か?」

 「本音で言うとー・・・はいー・・・。なにせー・・・今回の事件の首謀者がー・・・魔王に成った存在かもしれないのでー・・・」

 ポルカはそう答えたが、

 「ですがー・・・恐らく数日以内には世間にー・・・公表されるのでー・・・」

 「・・・そっから民間も絡んでくる、か・・・」

 店主は、前例が無い為に厄介だと思える状況に苦心した。

 (パニックになるか・・・否か・・・)

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