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O・S・K story ~ oneesan to syounen to kurage? ~ お姉さんと少年とクラゲ? 1話 パート2

 クラゲ亭の店内と、ビリー店主とメルーの住む一軒屋側は、繋がっている。


 店の廊下と、座敷部屋を一直線に捉えて、その先へと一直線に一軒屋側へとそのまま直線的に繋がっている。

 座敷部屋のフローリングの様な木材色の1つだけのスライドドア、あそこから先が一軒屋側。

 そしてその一軒屋側に立ち入れば出迎えるのはリビング。

 ショータはそのリビングに居た。

 足には、メルー達に履くように促された緑色の、ショータが子供故に、ぶかぶかになる大きさのスリッパを履いていた。


 リビングの天井と壁は、白色。

 床は濃い色の木材色のフローリング。

 間取りで言えば正方形の形。


 座敷部屋からの入り口から見て、リビングの全体像はこうなる。


 中央右寄りに、脚の長いつるやかな、木製で木材色の、大きめで食卓用として使われるような机が置かれている。

 そして右側以外の3方向にだけ、背もたれの高く、机の色とほぼ同じで机の脚の高さに合わせた椅子が置かれている。

 右側には椅子が無い代わりに、壁際に置かれた形で、黒い、金属の戸棚が置かれていた。

 その高さは机の高さに近しい程にある。

 されど少し此方の戸棚の方が背は低い。

 そしてその戸棚の上には、薄型の黒いフチの大きめのテレビが置かれていた。

 それは、食卓の3方向からでもテレビが観る事の出来るようになっている配置だった。

 そしてテレビと棚の置かれた壁際は奥の方には、障子のスライドドアがあった。

 それはリビング内の壁の溝に収納するタイプ。

 それは今は閉じきられているが、別の部屋か廊下へと出る事のできるドアだと認識させる。


 続けて座敷部屋からの入り口から見れば、入り口壁の手前、直ぐ右下には、スリッパ置きの靴箱が置かれていた。

 角は全て丸みがある。

 色は金属色。壁際沿いに置かれている。

 高さはおおよそ人の腰かふとももの辺りぐらいまで。

 段数は4段。

 一番上の段には何も入っていないが、それ以外の段には、ショータが履いているスリッパと同じ物が4組分ずつ、綺麗に並んで置かれていた。

 上の段には、最初3組分のスリッパが履いていた。

 今は、ショータが履いている。

 そして残り二組分は、メルーと店主が履いているからだった。

 ただ、メルー達のスリッパは、色もデザインも違う私物の物だった。


 そして座敷部屋からの入り口から見て、左側の壁の方は、天井近くから床元まである白いカーテンが閉じられていた。

 そのカーテンの長さから、その先には床に溝がありスライドする背高い窓がある事を意味している。

 そしてその手前、食卓の近くには、ある程度のスペースを置きつつも、4人は座れそうな、黒く、横長な、頭の背もたれの部分まであるソファーが置かれていた。


 そのソファーにショータは座っていた。

 「・・・」

 ショータは、両手を前に、背もたれに背を預ける事も無く、どこか他所の家に預けられた飼い猫の様になってしまっている。

 右を向けば座敷部屋への出入り口。

 前を向けば食卓、テレビ、左側に障子のドア。

 そして、そんなショータの視線は、左側の方を向いていた。


 座敷部屋の方とは反対の方角。


 2つの木材色の障子ドアの左側の方がスライドして開いていて、その先が見える様になっていた。

 その先は、キッチン。

 ショータは店側の本格的なキッチンは知らないが、それとは違う、比較的ごく普通の一般家庭レベルのキッチンの姿があった。

 ショータの視界には、障子ドアの範囲の分の洗い場の姿しか見えない。

 だが、そこで食器を洗うメルーと店主の姿は見えた。

 左に店主、右にメルー。


 ショータは、手伝いを申し出ようとしたが、先にメルーにこう言われた。


 『ショータ、このソファーに座って待っててね?直ぐに終わらせるからさ』


 気さくな微笑を向けられて、ショータは二の句を継げて良いのか分からなくなった。

 手伝いを申し出たいと思えた事、されど主張性が無かった事、どちらもやはり他所の家に預けられた飼い猫の様な肩身の狭さの感じがショータにあるようだった。


 対してメルーは、店主と共に食器を洗い続ける。

 2人共、ショータと同じ様にスリッパを履いていた。

 だが、お客用のショータの履いているスリッパとは2人共違った。

 店主の方は爪先の見えるタイプで、尚且つ足の甲の部分の表面には竹林の水墨画の様な絵のプリントされた白いスリッパを履いていた。

 そしてメルーは爪先は見えるが無地の薄水色のスリッパを履いていた。


 スポンジに洗剤をつけて、食器を泡まみれにして洗い場の右隣の(店主の場合は左隣の)作業場に置いて放置して汚れが落ちやすくしておく。

 メルーと店主の泡だらけの食器の置き場でもある作業場には、どちらにも奥際の壁際に隣接する形で銀色の金属製の2段型の食器棚が置かれていた。

 そして洗い場には2つの蛇口があって、左右にある程度距離があるので、メルーも店主も仕事にミスが起きずに食器が洗われていく。

 ただ、メルーも店主も洗い場以外の所に泡が飛び散りすぎたりしない様に気をつけている。

 店主の場合は作業場の左側にコンロがあるので尚更の様だ。

 数はそんなに多くなかったので、2人で10分ぐらいで終わった。

 だが、乾くまでは食器棚には入れない。

 食器棚は店主とメルーから見て左側の方の、ショータの位置からでは壁越しになるので見えない、リビングの入り口から見て左側の突き当たりの壁の際に置かれている。

 そして食器棚の左隣には同じく壁際の設置位置で、冷蔵庫もあった。

 ショータに見えていた一部だけのキッチンの姿は、全体で見てもやはりごくごく自然にありきたりな家庭のキッチンの姿を示していた。

 メルーと店主の前の方に窓がある事も、その雰囲気を強めている。


 そして蛇口の栓が閉められた時、

 「――――終わったぁ〜〜♪」

 メルーが背伸びをしながら声をこぼしていた。

 仕事の時から着続けていたエプロンをタオル代わりに使って手を拭いて、ショータの居るキッチンの方へと歩いていこうと回れ右をする。

 そして店主も似た様に触手を自分のエプロンで手を拭く。

 そして店主はエプロンを外しながら歩き始めようとしていた。

 そこで、ふとメルーが「あ、」と単音こぼして足を止める。

 そして店主の方を見た。

 「店長、いいんですか?連絡しなくて・・・」

 その問いに店主は意図を理解して、

 「ああ、そうだな・・・」

 どこか、この場にはいない何かを訝しがる様に声をこぼした。

 「数十分を経ってもアクションがねぇしな・・・」

 (・・・って事は部下に任せるつもりかもしれねぇな・・・あの野郎は)

 そして店主は悩ましげになりながら、

 「・・・少し連絡してくる」

 と、言ってから、リビングへと入って行った。

 そして店主はショータの座るソファーの後ろを通る。

 ショータとふいに視線が合う。

 店主は口を開いて、

 「今から連絡をしてくる。まぁ、確認してからその後にまた色々伝えるからくつろいで待っててくれ」

 そう伝えてから、座敷部屋の方へと歩いて行ってしまった。

 そしてそのまま座敷部屋も越えて、店主は足用の触手に白いキッチンブーツを履かせて、店内側を歩き、そしてそのまま従業員通路の方へと入って行った。

 ショータは、どこに行ったのだろうという風によく分からない表情をしていた。

 対して遅れてリビングに足を踏み入れたメルーは店主の目的地が、普段自分が客が来ない時や仕事が無い時は腰を降ろして休む休憩所の方へと歩いて行ったのだと理解した。

 休憩するのが目的ではなく、休憩所に設置された固定電話。

 それが目的。

 メルーは内心、店主の癖みたいなものだなぁ、と思いながらそれを見送っていた。

 店主の自室にも固定電話はある。

 だが店主が自室にいなくてリビングや一軒屋側キッチンの方に居たりする時は、コッチの方が距離が近いからか、店主は店の電話の方を使うことが多い。

 そしてメルーはふとショータの方を見た。

 ショータと目線が合う。 

 ショータは今も店主が店の方に歩いて行った事について『どうしたんですか?』とメルーに聞きそうな、疑問の表情をしていた。

 メルーはショータが尋ねるよりも前に説明しておく。

 「アッチの方に電話があるんだ。店長、ちょっと長い電話をする事になるかも」

 その言葉を聞いてショータは理解を示した様子で、少しだけ目線が俯き気味になりながら、

 「・・・そう、なんですか・・・」

 相槌をしていた。

 ショータは、座敷部屋で起きた時と比べればだが、その時よりは大分落ち着いているように見えた。

 陰りがまだどことなくある感じだけど、それでも起きて直ぐに涙がこぼれ、何度も謝る姿の時よりは、ずっと心が落ち着いているようにメルーには見えた。 

 「・・・」

 だから、メルーはそんな姿を見て、これからどうすれば良いのだろうと少し困った。


 それは、メルーがショータにどう接すればいいかとかじゃなくて―――『ルール』があるから――――


 「・・・」

 メルーは頭を振ってみる。

 だけど、やはり答えは出ない。

 そんな、都合の良い『答え』は。


 だが、メルーはふと、

 (――――ん?)

 ショータの姿の事で、ふと気付く。

 そしてメルーはよくよく目を凝らしてみる。

 今更になって気付く。

 ショータの服は、幾らか汚れていた。

 小さな土汚れも所々にある。

 食事の時に気にする程の酷さではないし、注視しないと見落としてしまいそうなぐらいでもあった。

 だが、メルーはそれを見て、

 「・・・」


 『ルール』に則れば――――――一時的な保護者の立場。

 それが、今の自分の立場のはず。


 メルーは、そう思ったから声をかける事にした。

 「ショータ」

 ショータが顔をあげて反応する。

 そして、メルーが尋ねた。

 「今日は・・・まだオフロ入ってない?」

 疑問の問い掛け、それに対してショータは、

 「ぁ・・・は、ぃ」

 肯定の返事を示した。

 その返事の時、どこかショータは自分の身なりの汚れに思い出し気付いて恥じた様子があった。

 その答えを聞いて、メルーは微苦笑して、

 「それじゃあ、オフロにはいろっか」

 そう尋ねていた。

 「ぇ・・・」

 ショータは、ふいに呆気な顔をした。

 メルーは、気さくに微笑んでいた。

 人懐っこい笑み。

 彼女は右手で手招きしていた。

 それを見て、ショータは言葉で返事をするのではなく、ソファーから立つ事で返事を示した。

 それは肯定の意味。

 ただ、内心は他所の家の大人の指示に従うという気持ちがあった。

 そしてメルーも深い所までの把握ではなくとも、ショータの肯定の受け取りの理解に間違いは無くショータが立ち上がってきたのを確認して、一緒に歩く事にした。

 メルーは、ショータと一緒に左側の障子のドアの方へと歩いた。

 それは、さっきまで座っていたショータの視点で見れば、テレビの左隣の壁にある、障子ドアの方。

 そこをメルーは開けてショータと一緒に通り、廊下へと出た。

 廊下は右と直線には続いておらず、左折しか出来ない路だった。

 そして廊下の方もリビングと同じ白い壁の色、濃い木材色の色合いのフローリングの床だった。

 廊下はそれなりに長く続いていた。

 そしてキッチンの方にも、この廊下との出入り口がある事を示していた。

 ただ、キッチンの方は吹き抜けで、ドアやフスマの類は無い。

 そして奥の方は左右に廊下が分かれていた。それはまるでT字路。

 メルーは、ショータと一緒にスリッパのパタパタとした音を鳴らしながら、進んでいく。


 T字路の様な突き当たりに到着したショータは、ふいに左側を見ていた。

 それは、近くに行けば行くほど見えてきたものがあったから。

 突き当たり側の壁の左側、そこに階段があった。

 その階段は、狭い階段じゃなくて、まるで温泉旅館とか物凄い古くて木造建築の学校とかで見られる様な横幅の広い木材の階段だった。

 黒艶やかな色合いの階段は左右までの距離がありながらも、しっかりとした感じの手すりがあって、半分まで昇れば左折して折り返し昇る様式になっている。

 一般家庭で見るには不似合いで、されど目を引く階段。

 人が3人横並びになって昇っても余裕がありそうですらある。

 そして左折の先は、また少しだけ長い廊下になっていた。

 距離にして10メートルあるかないかぐらい。

 そこは電灯が点いてなくて、薄暗い状態の為、何があるのかよく分からないが、それでもまだ何か道が右折の方角で続いている様に見えた。

 「あ、ショータ。コッチだよ〜」

 メルーの声がショータの頭に触れた。

 ショータは後ろを振り向くと、メルーはT字路のこの場を、ショータの見ていた方角の反対の方額―――つまり右折―――へと歩いていた。

 ショータは慌ててメルーの方へと続く。

 右折した廊下は、右側にドアが2つ距離を置いて並んでいた。 

 どちらのドアも壁と同じ白色で右にドアノブのあるものではあるが、細かい部分の様式や雰囲気が違う事から、用途の違う部屋の様に見えた。

 突き当たりには、両フスマのスライドの出入り口がある。

 だが、メルーが立ち止まったのは、もっと近くの左側の壁の方にあった、フスマの出入り口の前。

 それは、左側にフスマをずらして中に入るタイプの出入り口だった。

 フスマの左側にはフスマの溝分の空きがある。

 メルーは、フスマをスライドさせて中へと入って行っていた。

 ショータは、そこに続く前に、まず中を目線を動かし見渡していた。


 そこは比較的に左手側に広がっている脱衣場だった。

 右側にもスペースはあるが、中に入って右に1、2歩、歩いてから手を伸ばせば直ぐに壁に手が届くぐらいしかない。

 さらに右側の壁には、「L」字を上下反転させて左右反転させたかのような、右側の壁沿いに、入り口手前近くの途中から突き当たりの壁にまで連なって、部屋の横幅の半分以下の長さで途中で終わる石棚が備わっていた。

 石棚である理由。

 それは、この部屋の壁と天井の全体が大理石の様な白い石材色で形成されている四角い間取りの部屋だったから。

 つまり、壁と石棚は、そのまま溶接地続きの様に存在していた。

 ただ、床は廊下から続いて濃い色のフローリングで形成されている。

 入り口側から見て右側の石棚の上には長方形の緑色の網目状の風呂カゴが2つ置かれている。

 前の突き当たりの石棚の方には、石棚の左の終わりの辺りの近くに同じく緑色の風呂カゴが1つ置かれていた。

 どのカゴも、中にタオルみたいなのが入っているらしく、布や衣類の姿を確認できた。


 そして、入り口反対の向かい側の壁の石棚の終わりの左側には、ドアがある。

 それは、浴場への入り口らしい。

 にごっていて透明じゃないガラスが基盤で、外殻は「日」の形で耐水ゴムプラスチックを思わせる感じの、爪先が当たってもあまり怪我をしなさそうな素材で出来たドアがあった。

 そしてそのドアの手前には、風呂上り用のバスタオルが置かれている。

 そしてそのバスタオルの左隣には、大きなバケツ型の、石棚の上に置かれていた物とは違う白色のゴムカゴの様な物が置かれていた。

 配置からして、恐らくは脱いだ衣服を入れる為のカゴ。


 ショータは先にメルーが入室したのに合わせて中に入る。

 中に入り、後ろを、入り口側の辺りを見渡す。

 今しがた通った入り口の右側には洗面所があった。

 ただ、その洗面所は両側に角に丸みを帯びた茶色の、つるやかな木製の棚が備わっていた。

 その棚の高さは、メルーよりも高い。

 片方だけで下から上に4段の戸棚がある。

 洗面所の下にも両戸があった。

 蛇口と水受けの先には、鏡があり、ショータの姿が写っていた。

 そして、そんな洗面所の右側には、壁沿いに置かれて洗濯機があった。

 その洗濯機は大型のドラム式の物だった。

 そして、洗濯機の更に右隣、もとい入り口側の壁ではなく、ショータから見て右側の壁の沿いに置かれている黒く横長で背高い戸棚の姿。

 その戸棚は、横に5、縦に4という感じで戸が備わっている大きめのものだった。


 メルーは、そんな戸棚と洗濯機の方に歩いていた。

 そしてショータの方を向いて、口を開く。

 「ショータの服、汚れてるから洗濯しよっか・・・服を脱いでもらえるかな?」

 その言葉に対してショータがふと、 

 「ぁ・・・」

 何かに気付いた様に単音をこぼしていた。

 それに対してメルーは、

 「・・・?」

 疑問符を浮かべながら、

 「どうか・・・した?」

 何か、問題が発生したのだろうかと不安になって少しだけ恐る恐るになりながら、尋ねていた。

 それに対してショータは、

 「ぁ、の・・・」

 どこか申し訳なさそうに口を開いて、

 「・・・き、がえ・・・が・・・」

 そう、言葉にしていた。

 それを聞いたメルーは、ハッ、とした。

 そして内心で、

 (そ、そういえばそっか・・・)

 と、不備があった事を理解する。

 (どうしよう・・・。・・・―――――!)

 メルーの頭に、豆電球がピコーン、と現れたかのような閃きの顔をしていた。

 それは付き合い長い人が見たら、こう言いたくなる顔。

 店主が居れば、こう言うであろう顔。

 『余計な事を思いつきやがった』という顔。

 だが、メルー自身は良いアイディアだと思った。

 メルーが口を開いた。

 「大丈夫〜大丈夫っ。それなら安心してよ」

 自信満々にそう伝えた。

 そして、

 「服ならちゃんとあるよ〜」

 そうショータへとメルーは伝えていた。

 そしてメルーは続けて説明する。

 「だからショータの服は洗濯しようよ。ココの洗濯機なら乾燥機能もついてるから明日の朝には直ぐに着れるようになってるよ」

 その言葉を聞いて、ショータは幾許か、戸惑いながらも、

 「そう・・ですか・・・?・・・わかりました」

 了承を示していた。

 そしてショータは衣服の腰裾に手をかけていた。

 それを確認したメルーは、ショータが服を脱ぐのを理解して洗濯機の方へと赴く。

 ドラム式の洗濯機、開くドアはやや水平で斜め。

 そんな機械のおでこと言える部分にボタンがたくさんある。

 そして、おでこのボタンの群れを操作して、水量などを調性していく。

 そし右側の黒い戸棚の方をメルーは向いて、一番左で上から2番目の戸を開ける。

 中には、青い波をイメージしたような全体的に青色のパッケージの箱が入っていた。

 それは、粉末洗剤。

 それを取り出して、蓋を開けて、中に入っていた透明なスプーンで粉末洗剤をすくう。

 そして、洗濯機の操作ボタンの左側の引き戸を引っ張り、洗剤受けの中へと入れる。

 (よしっ、)

 メルーは洗濯機を動かす準備を済ませた。

 メルーは準備が出来た事をショータに伝えようとした。

 そしてショータの方を向く。

 「ね、ショータ・・・」

 すると、

 「・・・?、は、ぃ?」

 ショータのその疑問符混じりの返事を耳にしたメルーは少しだけびっくりした。

 ショータが手を伸ばせば届くぐらいの間近に居たからだった。

 メルーの左後ろの方に、裸のショータは居た。

 両手を前にして、脱いで軽くたたんだ衣服を抱えて存在していた。

 メルーが端末操作をしていた時に、既に近づいていたみたいだった。

 スリッパも脱いでいて裸足で近寄ってきていたせいで足音が殆ど聞こえなかったのだとメルーは理解する。

 とはいえ、ちょっとしたドッキリの様には感じた。

 そもそもが、この子、人間には無いモノ、魔界の人にはあるモノを感じられなかった為でもあるとしても。

 「あ、あははごめんごめん・・・脱ぐの早いね」

 メルーは苦笑しながらそう言葉をこぼす。

 そしてメルーは、洗濯機の開けたドアの中にショータの服を入れようと、ショータから服を預かろうとした。

 メルーは両手を前に出して預かろうとする。

 「はい、ショータ」

 メルーのその言葉に、ショータは、

 「ぁ・・・」

 どこか、申し訳なさそうな顔をしていた。

 そして、ショータは少し迷いながらもお辞儀をして、

 「すみません・・・お願いします・・・」

 メルーに着替えを手渡していた。

 「ん、じゃあ洗濯するね」

 メルーはショータの服を洗濯機の中へと入れていった。

 そんな作業をしながら、ふとメルーは思った。

 (しっかりしてる子だなぁ・・・)

 それは8歳の子供にしては、という意味ではあった。

 それでも、率直に思った感想でもある。

 (アッチの8歳の子供、ってこれだけしっかりしてるものなのかな・・・)

 メルーは色々と思いながら、ショータの服を洗濯機の中へと入れ終えると、ショータの方を向いた。

 「それじゃショータ、アッチのドアの方に行っててよ」

 メルーは、浴場への入り口のドアを指差して、そう告げた。

 「ぁ、の・・・スリッパ、は・・・」

 「うん?ああぁそれは置きっぱなしで大丈夫だよ?お風呂にあがった後に、また履いてくれればオッケー」

 「・・・わかりました」

 ショータは、返事を示して、浴場への出入り口の方へと歩いていった。

 ショータは視界に、浴場の出入り口の方だけを見つめる。

 そんな中、ふと、ショータの耳は後ろ側で布の擦れ音を耳に拾った。

 (・・・?)

 ショータは、なんだろう、という様相で後ろをふいに見た。

 すると、洗濯機の方には、服を脱いでいるメルーの姿があった。

 (・・・・・・?) 

 ショータは一瞬、何で服を脱いでいるんだろう、という風の様相を示した。

 だが、メルーが全部の服を脱ぎ終えて、洗濯機の中へと入れ終えると、洗濯機の蓋を閉じて洗濯を開始して、ショータの方を向いて歩いて来ていた。

 そんなメルーの裸体。

 ふいに、ショータはメルーの胸を見て、

 (・・・おっきい・・・)

 どこか、ただ単純に少しだけの驚きを抱いた様子で、そう内心で声をこぼしていた。

 事実、ショータの頭より片方の胸が大きいかもしれないレベル。それが冗談半分で言える事だとしても。

 体毛も髪の毛や眉毛などの頭の方以外にまったくなく、つるやかな肌を示している。

 そんなメルーがショータの傍に来ると、

 「それじゃ入ろっか」

 メルーは、気さくに気ままに、のんびりとしてあっけらかんとした様子でショータへとそう告げていた。

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