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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

勇者は世界の破滅を願い、(元)魔王は世界の統治を目指す

少年は世界の理不尽さ学んだ。

作者: ソウルに飢えたモノ

あんまり自信がない。

続き書けっかな(苦笑

 私の名はユシウス。

 しがない孤児院で過ごす少年だ。いや、しがない孤児院で過ごす少年()()()


 辺境の地ソブガンデの村にて生を受けた私は孤児院にて育ち慎ましい生活ながらも同じ境遇の者たちと毎日、その日その日に見合った仕事を探しては必死に生き抜いてきた。

 私は苦しい生活の中でも家族みんなで過ごすこの孤児院の事が大好きだった。

 血が繋がらないとは言え、私たちの絆は太く互いに互いを支え合いながら12年の月日を過ごし、私たちの誕生日の日。新年を迎えた新しい生命の芽吹きの日。私にとっては悪夢の始まりが訪れた。


 その日、仕事をする必要の無かった私たちは普段お世話になっている修道女(シスター)の為に“真実の首飾り”と謳った少し高い贈り物(プレゼント)をしようと画策していた。その贈り物とは毎日通る雑貨屋の壁に飾ってあったペンダントのことだ。雑貨屋の親父殿は自信満々で仕入れたらしいが、売れ残って散々だと雑貨屋の奥方殿が言っていたので、私たちは奥方殿に年末迄取り置いて貰えないかと頼み込んだ。親父殿はしぶしぶだったが奥方殿が許可してくれた為何とか交渉成立だ。それが3ヶ月前のこと。


 色んな仕事を色んな場所でした。お陰で修道女(シスター)には「ユシウス、あんたなんか隠し事してないかい?」なんてギロッと睨まれたしたが何とかみんなのお陰で隠し通すことが出来たので良かった。あの人は色々と鋭い。私が悪いことをしたときはすぐにバレる。何故だ?


 そんなこんなで新年を迎える前の日の事。私たちは困り果てていた。あと少しでペンダントが買える値段までお金を貯めたのだがどうしてもお金が足りなかった……。

 私たちは最終的に雑貨屋の奥方殿に泣きつき、交代で店番をすると言う条件で値段を少し引いて貰える事になった。この条件なら誕生の月(年明け)の夜。豪華な晩御飯を揃える事が出来る。朝から夕方近くまでの仕事だがこの条件は破格だ。私たちはにべもなく奥方殿の提案に食い付いた。

 修道女(シスター)にバレないように二人一組で一時間置きの当番制(ローテーション)を組んでそれをちまちま繰り返す。修道女(シスター)は誕生の月の月始めは必ずと言って良いほど孤児院を大掃除する。それはもう鬼気迫る勢いで掃除する。カビついた四隅の汚れに向かって「フフフ、覚悟しなさい。あんたとは今日でお別れよ!うふふ」なんて言っていた。正直怖かったので見なかったことにした。

 その大掃除に駆り出されるのだ。私たちは皆で協力して居ない分の掃除(仕事)を頑張った。


 私とのペアになったのはこの孤児院の中ではマドンナ的な存在と言っては過言では無いミリアリアだ。彼女の淡い桃色の腰まで届く髪と穢れを知らない陶磁器のような真っ白な肌。黙っていれば間違いなくどっかの貴族の令嬢だろうなと私は思っているが、彼女にそんなことを言えば鉄拳制裁が飛び込んで来るので言わない。

 そんなミリアリアだがその日は様子がおかしかった。いつもにこにこ周りの空気を和らげてくれていた彼女だがどこかに怯えが見える。一体どうしたのだろうか?私はミリアリアに「何かあったのかミリアリア」と何度か訊いたのだがそのたびに「ヒッ、ユシウス」とか「一体何で私が乙女ゲームの中に――」何て言っていたのでまともな返答は期待できなかった。とりあえず放っておこう。

 そして最後の当番と品物を受け取り、帰路についたとき。それは起こった。


 暴れるミリアリア。それを押さえる複数の大人の男たち。私は地面に大の字で寝転がり倒れていた。頭が痛い。

 何が起こった。


 私は一体、


 ミリアリアは、


 ミリアリアの悲鳴が聴こえる、


「助けてユシウス」と聴こえる。


 私は立ち上がると側に転がっていた角材を手にして3人の男たちに殴りかかった。背後から1人、男は何が起こったのか分からないまま倒れた。ぎょっとしたままズボンを下ろした状態で固まる残りの男たち。私は砕けた角材を全力で、振り返った近くの男の喉に突き入れた。男は悶絶し赤い何かを撒き散らしながら仰向けに倒れ、痙攣している。私はそれを見送ると下半身丸出しでミリアリアに跨がっていた男を一目睨んだ。男は一瞬怯んだものの側に置いてあった服の間から短剣(ショートソード) を抜き放つと斬りかかってくる。私はそれを冷静に見つめ一歩、二歩と下がり、そこで大きく跳んで下がる。

 男はそれを有利と悟ったのか下卑た笑いを上げながらゆっくりと近付いてきた。私は()()()()()でジリジリと退り出来る限り怯えた表情を繕いながら声を張り上げた。「お前なんか怖く無いぞ!」と。男はがははと笑い足を止めた。「餓鬼が!意気がるなよ?」男はにやにやとしながら短剣(ショートソード)を握り直すと再び進み始め、私は隠し持っていた石を思いっきり投げた。男は「うおっ」と言って顔を庇ったけど私の投げた石は狙いを外れ、男の左手前の角材置きの下部に激突して虚しい音を立てただけだった。

 全力投球で投げた大暴投。「ビビらせんなよ」と呟いた男は数秒後に悲鳴を上げて角材の山に沈んだのだった。

 数年前からずっと置いてあった角材。その埃が舞い上がる中、私はミリアリアの元へと向かう。当然貰うものは貰った。「何とか助かったね」と二本の短剣(ショートソード)を腰に差し込み、裸同然に剥かれたミリアリアを助けて起こす。(さいわ)い彼女の尊厳は護れたみたいなので安心したが、ミリアリアは未だにガタガタと震え、ぎゅうぎゅうと痛いぐらい私を抱き締めた。私は落ち着かせようと彼女の頭を抱き締め、撫で、心臓の音をミリアリアに聴かせた。

 これは私が以前、修道女(シスター)と仲間たちを護るために()()()()人を殺めた時に修道女(シスター)にして貰った事だ。正当防衛とは言え、生温い感触と人と言う同族を殺した重圧に震えていた私を修道女(シスター)は何度も何度も繰り返し撫で付けてくれた。だからこれは私が知る唯一の落ち着け方なのだ。

 やがてミリアリアは落ち着いたのか身をよじって抜け出そうとしたので離してやる。ついでに自分の服を脱いで押し付ける。血が少し付いてるけど勘弁してほしい。ミリアリアは顔を真っ赤にして「何で!?」とか「あう……」とか呻いてたけど私が無言で押し付け続けると観念したのか顔を真っ赤にしたまま小さく「ありがとう」と呟いて私の服を着た。それがどこかおかしくてクスリと笑ってしまう。流石に上半身裸に近い格好(薄着)のままじゃ寒いので私は最初に殴り倒した男から防寒着を遠慮なく掻っ払うと素早く着込んだ。結構上物っぽいけど獣臭さとどこか据えた臭いがするのは残念だが仕方ない。

 ミリアリアはそこで気付いたのか辺りを見渡しながら「し、死んだの?」なんて顔を真っ青にして訊いてくる。「たぶん」と返せばびくりと震えて此方を見詰めてくる。なんだこの可愛い生き物。私はそんな感情をおくびにも出さず、ミリアリアの手を取って走り出した。「ふあっ!な、なに?」動揺するミリアリアを引っ張って林道を進む。さっきの男たちはこの辺境の地ソブガンデの村では見たことが無かった。つまり、外部の人間と言うことだ。私は嫌な予感を覚えつつ孤児院へと急いだ。

 もうすぐで日没なのに何故か前方が明るいのは気のせいだと思いたかった。

 しかし気のせいではなく絶望は訪れる。


 燃え上がる焔。12年の月日を共にした思い出の孤児院は轟々と飛沫を上げながらゆっくりと悲鳴を上げ、穏やかな思い出は形を変え始めていた。

 立ち止まる思考。後ろでミリアリアが小さく悲鳴を上げた気がする。前方で誰かの悲鳴が聴こえる。私は思考が停止したままミリアリアに茂みに潜んでおくよう言い含めて走り出した。


 さっき別れたばかりの物知りチャックが片腕を無くしたまま血塗れで事切れている。


 私はぎりりと歯を食い縛った。


 孤児院の角に差し掛かると今度は食いしん坊モンドが背中から胸へと突き抜けた空洞から(おびただ)しい血を流して倒れていた。


 チャックが前に言っていた[聖女の伊吹]と言う最上級の治癒系統のスキルでも無いと絶対にもう助からない。


「ユ、ユシウス」

「モンド、しっかりしろ」

「へへ、どじっちまった……修道女(先生)が皆を連れて、小屋に、逃げてる。早く……行ってくれ」

「だが――」

「ボクは……助からない。それより……ミリアリアは?」

「大丈夫だ。隠れてる」

「そっか、良かった……これでもう思い残すことは……無い……や……ユシウス……あとは……たのん……」


 私の前でモンドは動かぬ人形となった。私は怒りに染まる思考を振り切ると短剣(ショートソード)を抜き放って走り出し、見慣れた道を掻き分けながら悲鳴が聴こえる道を突き進む。あっちは小屋の方だ。中には農具が置いてあったはず、私は人の気配を感じて木陰に隠れると2人の男に担ぎ上げられ連れていかれる仲間たちを見つける。ぐったりとしたまま荷物のように運ばれる6歳から8歳の少女たち。私は逸る気持ちを押さえ付けてゆっくりと忍び足で後を追い、近付き様に暗闇から1人の男の心臓を一突き、くぐもった悲鳴を上げた男の声を聞き咎めた男が振り返るが、私は驚きに声を上げようとするもう1人の男の喉をもう一本の短剣(ショートソード)で貫くと、振り返って倒れた男の喉も突いた。


 今の戦闘で辺りに投げ出された少女たちを急いで茂みに隠す。

 1人だけ意識があったので彼女たちを頼むと言い聞かせて動かないようさらに言い聞かせる。ガタガタと震えているが時間がない。私は小屋に向かってゆっくりと歩き出した。ついでに男から短弓(ショートボウ)と矢筒、5本の矢を回収しておくのも忘れない。


 目の前から人の気配がする。


 私はまた道をそれ、隠れる。今度は1人。下卑た笑いを溢しながらによによとした気持ちの悪い男だ。先に行かせるわけにはいかない。あそこまで行かれると倒れた男たちが見つかり騒ぎが大きくなって隠した少女たちがまた捕まるかもしれない。私は弓を張ると力一杯引いて男の頭部に狙いを定め、放つ!使ったことの無い武器だったが、脳内に祝福の声(スキル獲得の音)が聴こえたので関係無かった。


 スキル[短弓術]を獲得しました。


 男はにやにやとしたまま倒れた。


 スキルの恩恵を授かったならもう私はこの短弓を使いこなせる。私の脳内に短弓の使い方がさっと流れる中、私は足音を出来る限り消して進む。

 もうすぐで小屋に辿り着く。けど私は嫌な予感がしてならなかった。胸に不安を抱えつつ進む先に答えはあった。数人の男たちが修道女(シスター)や私と同い年の少女や2つ3つ上の少女たちを陵辱していた。私は怒りに拳を握り締め、短弓を張る。男たちは4人……少女たちは修道女(シスター)を入れて7人。うち4人は黄ばんだ液体の中に沈んでいる。入り口に一番近い男の頭をぶち抜く。男たちは行為に夢中で気付かない。次に近い男の果てる挙動に合わせて頭をぶち抜く。流石にドスリと言う音と声が聴こえなくなった事に疑問を覚えたのか修道女(シスター)を犯していた男が振り返って私に気付き、怒声を上げた。だが遅い。私は既にお前たちを()()()範囲に飛び込んでいる。男の怒声に気づいたもう1人の男の首を二刀流ですれ違い様にぶった斬って怒声を張り上げる男の胸に飛び込む。男は動こうとしていたが修道女(シスター)が足を絡めて動けなくしたので事なきを得た。やがて男は事切れた。脳内に祝福の声が聴こえる。


 スキル[二刀流]を獲得しました。

 スキル[暗殺術]を獲得しました。


 私は倒れ伏す男たちを蹴り飛ばし脇に退けると、修道女(シスター)と少女たちの状態を確認した。黄ばんだ液体の中に沈む少女たちは3人が腫れ上がった顔で事切れている。残りの少女たちは尊厳は奪われ、顔が青アザだらけかもしれないが、息をしていた。

 修道女(シスター)は虫の息だ。私は泣きそうになった。


「ユシウス……」

「シスター……」

「この子たちのことをお願いね……」

「シスター……シスター……」


 解る。解ってしまう。彼女の命の火が消えていくのが解ってしまう。私は視界が歪む中、修道女(シスター)の声を聴き漏らすまいと耳を近付けた。


「あなたは優しい子……私の大切な子ども……先に居なくなる事を……許して」

「そんなことは良いんだよシスター!()は!()は!!」

「フフ、ありがとう……こんなことに……なっちゃったけど……ユシウス……誕生日……おめでと……」

「母さん!」


 修道女(母さん)は私に母と呼ばれ嬉しそうに微笑んだまま逝った。私は慟哭した。それが伝わったのか放心状態だった少女たちが目を覚まし、修道女(母さん)を見て共に涙を流した。

 そこから先は覚えていない。

 私はあれから連れ去れた少年少女たちを救いだし、焼け跡(ボロボロ)になった孤児院の前で陣取り、独りで近付く見知らぬ大人たちから仲間たちを護っていたらしい。


 それが見知らぬベッドの上で目を覚ました時、ミリアリアから聞いた話だった。


 そんな私は今、領主の私兵団団長の元で剣術を学んでいる。


 ミリアリアは領主の養女となり、穏やかな日々を過ごしている。

 他の仲間たちは領主に雇ってもらったり、子の居ない私兵団の男たちに貰われたりしていった。


 12歳の少年は、この世界の理不尽さを学んだのだった。



続きは順次仕上がり次第投稿予定。

まあよろしくたのんます。

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