正義とは
「よかろう、エンリルの左目ごと妾のコレクションにしてやろう」
腰に手を当て、シルシュは偉そうに言う。
「ノーカウント、ノーカウントだ」
ユストが騒いでいると
「ほう、オスでありながらメスの快楽を味わいたいと?」
また、竜語で地雷を踏んでしまったようだ。
「妾の力で、魔改造してやろう。素質はある、眼帯が玉に瑕だがな」
ユストは首を横に振りながら
「オ、オレは性別を変える趣味はない……」
「ユスト様、契約書の事をお忘れなく」
メルの言葉に
「ミンチの呪いがあったか」
ユストは頭を抱える。
「人間と純悪魔という珍妙なコンビだと思っていたが、契約していたのか」
肩を竦めたシルシュの言葉に
「え、メルさんて、純悪魔?」
メルはキョトンとした表情で
「あれ、言ってませんでしたっけ」
そうなると、必然的にメルの父親も純悪魔。
金に釣られて、よく分からない契約をしたのが運の尽き。
「ユスト様は、我が父と日雇い魔王契約をしておりまして、この村を滅ぼさないとミンチになってしまうのです。その場合、シルシュ様との結婚は……」
シルシュは頷くと
「では、妾の力で」
「待て、待て、それ以前に婚約したつもりはない」
ユストは、シルシュを止めた。
「この村を滅ぼす権利は、誰にもないだろ」
気を失い、リモナに介抱されているログに視線を向ける。
「魔王にも、そして勇者にも」
「ユスト様、どうするつもりですか?」
メルに問われ
「力で滅ぼせって、限定はないだろ」




