勇者ログ
「遅い」
ログの剣は、ユストが抜いた剣によって見事に弾き飛ばされた。
剣は宙を舞い、地面へと突き刺さる。
「お見事」
メルが、手を叩く。
「き、貴様、魔術師では……」
ユストは眉を寄せると
「そんなこと、一言もいってねぇよ。勇者目指してたからな、剣には自信がある」
剣をログに突きつける。
「娘を連れて、行け」
「あ、ありがとうございます」
母親は、娘を連れて逃げ出す。
「勇者を目指す男が、魔術を使うなど邪道だろう」
「ログ様、勇者を目指しながら挫折、その隙を悪魔に付け入られ契約した人間は魔王と呼ばれます」
リモナが、冷静に解説。
「ふっ、つまり負け犬か」
「うっせぇ、お前こそ弱いくせに吠えるな」
ユストが、ログを睨みつける。
「いいのか? 俺にこんなことをして。竜が黙ってないぞ」
「今更、何言って」
突然の轟音ーー
「何か、こちらに近づいてますね」
空を見上げ、メルが言う。
黒い巨大な影が、村を覆った。
「ログよ、生贄はどうした。約束の時間はとっくに過ぎておる」
玲瓏とした声が響く。
「妾の気まぐれで、この村をクレーターにしてやろう」
緑色の巨大な竜。
「この者が、邪魔をしまして」
ログに顎を向けられ
「はぁ? 元々はお前が……」
「ほう、面白い」
シルシュは、真紅の瞳をユストに向けた。




