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日雇い魔王の災難  作者: 西谷東
一章
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オフィル村の異変

「手品って言ってもな……」


ユストは頬を掻くと


「こうか?」


両手を合わせ、小さな炎の鳥を空へ飛ばす。


「すごい、すごい!」


「そうか」


ユストが照れていると


「……ミンチ」


ボソリ、とメルが呟く。



「こんな暇ないんだった……おい、ガキ共。パパやママはどうした?」


ユストに聞かれ


「パパとママは、いつも忙しいの」


「領主様に、お金を収めないといけないから」


子供たちは、口々に喋る。


「領主ってのは、強欲だな」


どうりで、この村の雰囲気は暗い。


「でも、領主様は村を守ってくれてるんだよ」


「そうそう、大きな竜から」


「勇者だから、強いんだ」


「勇者……」


勇者は功績を上げれば、それなりの地位を手に入れることが出来る。

例えば、魔物に襲われている国を救えば……その国のお姫様との結婚だって夢じゃない。


(まあ、オレには夢物語だけど)


「今月の税を払えないだと?」


苛立たしげな男の声。


「お、お許しください。今月はどうしても……」


女性の悲痛な声を聞いて


「ママ!」


女の子が駆け寄る。


「では、仕方がない。リモナ、ガキを捕まえろ」


オールバックの赤毛の男の支持に


「はい、ログ様」


魔術師の青い髪の女が従う。


「い、いや、離して」


「お、お願いします。返してください」


「ええい、黙れ。このガキは、ドラゴンの生贄に……おや、何やら焦げ臭い」


「ログ様、頭が燃えています」


淡々と告げるリモナに


「は、早く魔術で消化しろ!!」


「了解です」


水の魔術を使い、ログの頭の火を消す。


「貴様か……」


「これが、勇者のやることかよ」


怒りを含んだ視線で、ユストは睨みつける。


「よそ者の分際で生意気な、躾が必要だな」


ログが腰の剣に手を掛けると


「この少年、魔術を使うようです」


リモナが助言。


「悪魔と人間の混ざり者か。勇者には、決して勝てないことを思い知らせてやる」

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