魔王城の幽霊
「うわぁ、広い厨房ですね」
魔王城の厨房前に、メリアは目を丸くする。
「そりゃもう、魔王城ですからね」
ユストの肩に止まるレーヴァテインが、得意気に言う。
「ユストさんて魔王なんですか? やっぱり、最近の勇者の現状を嘆いてあえて違う道を進むという思いきった展開を!?」
メリアに詰め寄られ
「い、いや、オレは魔王じゃ……」
ユストは頬を掻いた。
「あ、ひょっとして日雇いっていう残念な立場ですか!?」
でも現状を積み重ねることで、立派な魔王になれるかもしれませんよ、とメリアは続ける。
「魔王が正社員って、どんだけブラックなんだよ……」
ユストは溜息をつくと
「レーヴァテイン、この城って長いこと使われてなかったんだよな?」
「ええ、まあ……ユスト殿たちが来る前までは無人でしたね」
「それにしては、綺麗に掃除されてるよな」
だが、掃除をしている人物など誰もいない。
「彼が、一部の機能を回復して……いや、この城の城門には蔦が残って」
やはり完全には戻ってない、とか何とか意味不明なことを言う。
「何か隠してるな……あれか? この城には幽霊でも居るのか?」
ユストの言葉を聞いて
「ゆ、幽霊!?」
メリアが声を裏返す。
「ひょっとして、怖い?」
「そ、そんなわけないじゃないですか……幽霊なんて、あれ、そうプラズマ。プラズマで説明つくんですからね!!」
かなり動揺している。
「メリアちゃん、部屋一人で大丈夫かな」
「シルシュ殿が戻って来たら、今日は一緒に寝てもらってはどうです?」
レーヴァテインの提案に
「そうだな……つーか、あいつ遅いな」
長話でもしてるのか、とユストは呟いた。
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「すまん、長話をしすぎた」
竜の姿から、人間の姿をとったシルシュが魔王城の屋上に着地。
「知り合いか?」
ユストが聞くと
「まあ、そんなところだ」
どことなく歯切れの悪いシルシュ。
(何かあったのか?)
「シルシュ殿、実はご相談が」
レーヴァテインが、魔王城の幽霊について事情を話す。
「うむ、そう言うことなら今日はピンク娘の側にいよう」
しかし、と続けシルシュは肩を竦めると
「妙な魔力の流れがあると思ったが、姿の見せない何かが居たのだな」
「お前、気づいてたのか?」
「ユストの左目にも干渉しないようだし、悪意がある存在とは思えないが」
シルシュの言葉にユストは頷く。
「はっきり言って、ありがたいよな。城の管理してくれるなんて。何か知ってるっぽいレーヴァテインは、何も教えてくれないし」
ユストが皮肉を言うと
「ううっ、分かりましたよ……では、ヒントだけ」
今夜の深夜、お一人で城内を探検してください、とレーヴァテインは言った。




