錬金術師
「オレは、ユスト。こっちはシルシュ」
マナの依頼で、アルベルトを探しに来たと青年に伝えると
「さっさと、連れて行くのだよ。一週間も居られ、迷惑だ」
青年は、腕を組みながら返した。
「そのわりには、懐かれてるな」
シルシュの言うとおり、アルベルトは青年の方を見て尻尾を振っている。
「う、うるさいのだよ」
可愛がっていたのは図星らしく、青年は目を泳がせた。
「つーか、一人でここに住んで平気なのか?」
ムギュ、とシルシュは後ろからユストに抱きつくと
「こいつは、純悪魔だぞ」
頭の悪い低級魔物でさえ手を出さない、とシルシュは言う。
「フワフワの猫っ毛だ」
頬をすり寄せてシルシュは堪能している。
「や、やめろって」
「そちらは、人間と竜か。俺はフィル、錬金術師なのだよ」
「確か、錬金術師とは魔術道具を専門に作る純悪魔のことだな」
シルシュの説明を聞き
「じゃあ、メルさんの店にあった商品作ってる人と同じ職業ってことか」
ユストが言うと
「なんだメルの知り合いか。あいつの店の商品を作って居るのは俺だ、妹に配達してもらっているのだよ」
フィルが答える。
「ま、まさか、その妹ってアリスさん!?」
ユストは姿勢を正すと
「そして貴方は、アリスさんのお兄さんでございますね」
「急に丁寧になると、気持ちわるいのだよ……」
アリスという名の女性に熱をあげているユストを見て
「妾という嫁が居ながら、他の女と浮気を……ここは、早めに去勢を」
シルシュが言う。
「さらっと、怖いことを言うな」
(しかし、あの腹黒がこんなガキにメルと呼ばせているとは)
確か、十五年前に
「父上から、人間の弟が生まれたと報告がありまして」
「お前の親父は、相変わらずなのだよ」
フィルは思い出す。
(……分かってしまったのだよ)
「ユスト、お前は「へぇ、ここが魔術道具の工房か」
第三者の介入。
「ガルルルル」
警戒したアルベルトが、唸る。
「俺って、小動物に人気なさすぎ」
「エアちゃん、勝手に触っちゃダメヨ」
たしなめる妖精の少女。
「あー、悪い」
そう言って、エアは小屋の前に置かれた棚の上に商品を戻す。
(この男いつから……)
(気配に気づかなかったのだよ)
シルシュとフィルは、動揺する。
「エア、どうしてここに?」
呆然としているユストを見て
「久しぶりだな、親友。少し、話そうぜ」
エアは不敵な笑みを浮かべた。




