汽車の旅
「汽車に乗るのも、久しぶりだな」
切符を購入するため、ユストは売り場へ向かう。
すると、何やら頭の上に柔らかいモノが乗せられた。
「いらっしゃいませ、二枚ですね」
「え、一枚……」
女性店員は、ユストの上の方に目を向け
「そちらは、お連れの方では?」
「お、お前……」
大胆にユストの頭の上に豊満な胸を載せている女性ーーというより、竜。
「何で、シルシュが居るんだ」
ユストが顔を顰める。
シルシュの服装は、露出の少ない旅装束。
見た目だけなら美女の分類なので、周りの男の視線を釘付けにしている。
「なんで、あんな子供と……」
「う、うらやましい」
そんな男たちを無視して
「あれほど大胆に告白されては……妾も応えねばなるまい」
「重いから、そろそろ退いてくれ」
「のせてやってるのだ。すまんが、新居まで二枚もらおうか」
シルシュがドヤ顔で言うと
「はい、港町マイムまで二枚ですね」
女性店員が頷く。
「オレの金を、勝手に使うな!!」
汽車に揺られて数分ーー
「ところで、ユストよ。魔王ごっこは、もうやらないのか?」
「ごっこって……」
オレは命を契約で縛られたんだが、とユストは言う。
「あの様な紙きれ一枚のものは、妾から見れば遊びにすぎない。本格的に魔王になりたいのであれば、やはり純魔族との直接契約が必要だろう」
「いや、オレは別に魔王になりたい訳じゃ……」
シルシュは肩を竦めると
「エンリルの目があるのに勿体無い」
ユストは眼帯抑えると
「これは、竜神様に交換してもらったんだ。オレ、母さんと同じ病気で死にかけたんだ」
その病を癒すため、左目を交換した。
「エンリルは、純魔族の王だ。妾も何度か会ったことがある……確かに、同じ気配を感じる」
(やばい女に手を出したと聞いて以来、奴は姿を消したようだが)
「竜神様の名前は聞いたことねぇけど、純魔族ってのはナイ。オレの実家、教会だし」




