新たな始まり
「聞かれましたか、オフィル村の話」
「いいや、あそこは改名してゲネサレト村になったとか」
「魔王が現れたと言うのは本当でしょうか?」
神官たちが口々に言う。
「信者の間でも、同様が広がっています」
「やはり、預言者様がいらっしゃらないのは……」
「静まれ。魔王など、前時代の遺物にすぎん」
鋭い声が、教会内に響く。
白い法衣を纏った厳格な男を前に
「ルクセス様、申し訳ありません」
「失礼します」
神官たちは逃げるように散っていく。
「フン……」
ルクセスは鼻をならすと
「エアは、おらんのか!!」
「そんな大声で呼ばなくても、聞こえています……ふわぁ」
ダルそうに、金髪の青年が欠伸をする。
「あのガキを連れ戻せ。預言者の居ない教会など、信者に示しがつかん」
エアは頭をかきながら
「面倒臭いなぁ……勇者になりたいって、出て行ったんだから放っておきましょうよ」
「黙って、従え。友人の言葉なら、アレも耳を貸すだろう」
「はぁ……」
ルクセスの背中を見送りながら「面倒臭いな」と、エアは小声で呟いた。
「エアちゃん、貧乏くじ引いたわネ」
窓際に腰を下ろして、様子を見ていた妖精の少女。
「ハンナか……」
エアが右手を伸ばすと、ハンナは軽やかに着地。
「神官長、機嫌悪いヨネ」
「そりゃ、先代が倒れてようやく教会の実権握れると思ったら頼みの甥っ子は「オレ、勇者になるから。後は好きにしたら」って出て行ったもんな」
あれは傑作だった、とエアは腹を抱えて笑う。
しかし、ティアマト神の声を聞ける預言者不在のためーー少なからず、信者から不満の声が上がっている。
「面倒臭いが、神官の仕事にも飽きてきたからな」
エアは肩を竦め
「依頼内容は人探し……久々に、勇者やってみるか」




