表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

1.出勤

さすがにしわくちゃのまま制服を放置するのは憚れる。俺は帰宅してすぐに制服に洗濯をし、アイロンをかけた。仮にも借り物なのだからな。大切に使わないと。




俺は大学生2年生になってまでアルバイトというものを経験したことが無かった。小遣いや大学の学費、大学に通う定期代、食費、諸経費は全て共働きである両親に出してもらっていた。

ところがあくる日、両親の務める会社の上層部による不正が発覚、株価は暴落。借金まみれで倒産寸前の会社は社員の一部を支部のある東南アジアに派遣。俺の両親もその一部に含まれていた。

せめて大学には通わせたい両親の意思故に日本に残された俺は一人暮らしの状態だ。

両親が「生活費にはこれを使え」と残した貯金はあるが、このままではダメだと、一念発起して立ち上がったのがアルバイトを始めようとしたきっかけである。


「パラサイトシングルにはなりたくねぇからな……」


パラサイトシングル。結婚もせず働きもせず、ただ両親のすねをかじり続ける独り者。

大学の友人の兄がそれである。逆に友人はアルバイトをしたことで出会いが生じ、現在2年目だという。


『出会いはアクション起こして求めないと恋人をゲッチュできないんだぜ!』


……彼女いない歴イコール年齢の俺はその話に刺激されたのも一つの理由である。

こらそこ、不埒な理由と言うな。



――――――――――――――――――――――――――


そんなこんなで次の日。

俺は大学を終えて自転車をこいでいた。家に帰り、クローゼットを開けるとちょうどいい具合にノリが効いており、パリッとした仕上がりとなった制服が待ち構えるかのようにハンガーにぶら下がっていた。


「よしっ」


制服に身を通す。いつも着ている洋服とは少し違和感がある布地を撫でる。クローゼットの鏡に自分の体を映してみる。いつもの俺と全然違う。あのコンビニの店員だ。……そりゃあそうか。その制服なんだから。


「じゃあ、行きますか」


俺は満を持して、徒歩5分のバイト先へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ