第1部(5)
第1部 ―初めての出会いとその別れ―(5)
テューサは目を覚ました。テューサの顔を覗き込んでいる小さな少年がいる。テューサが目を覚ましたことを確認すると、少年はいきなり叫んだ。
「お母さーん! お姉ちゃん起きたよーっ」
少年は母に事を伝えた後、またテューサの元へ戻ってきてはしゃいだ。
「おはよう、お姉ちゃん! 早く早く! 村長さん家に行くんでしょ?」
「え、ええ・・・。モナク、かしら?」
テューサは昨晩、リュードから聞いた息子の名を少年に尋ねた。
「うん! 僕、モナクだよ。村長さんのお家に行くんでしょ? 僕が案内してあげるね!」
モナクは胸を叩いて自信たっぷりに言った。テューサは笑ってその笑顔に答えた。
「ありがとう。それじゃあ行こっか」
「お母さんがご飯作って待ってるよ。先に食べようよ」
テューサはモナクと一緒に階段を下りて行った。
「はい、これが世界の歴史書だよ。大切な物だからあげることは出来ないけど、この村
に滞在する間貸してあげるよ」
村長の家をモナクと一緒に訪れたテューサは、歴史書を村長から受け取った。モナクは、
テューサの手の中の本を覗き込む。
「むつかしぃ〜」
「ありがとうございます」
「リュードに今朝会ってね。話は聞いているよ。その本にも書かれているけど、あの大昔の、『平和』の石を持つ者なんだってね。昔のことに詳しい人がいるから、紹介してあげようか」
親切にも村長は、歴史に詳しいというその人の住所も教えてくれた。
テューサとモナクは村長に見送られて、家を後にした。
数分歩くと、その人の家が見えてきた。家の前まで着くと、家の戸をノックした。
「はーい」
中から声が聞こえた。女の人の声だった。そして、戸が開く。
「はい?」
「こんにちは。あの、村長さんからカントという、歴史に詳しい人がこちらに住んでいる
と聞いたのですが」
「あぁ。お父さんのことね。まだ若いのに歴史を勉強してるの? 偉いわねえ。ささ、中に入って。お父さんも喜ぶわ」
テューサとモナクは女に案内されて中に入った。