第19部(6)
5人が生まれる前の今までの話が語られます。
ついに・・・明らかに!!
第19部 ―砂漠の神殿―(6)
しばらくすると光は止んだ。目をゆっくり開けてみると、そこにはまた、ゆらゆらとうごめく人の姿が5つあった。人といっても、半透明で足はあるけれど宙に浮いていた。霊のようで、そうでないもの。
「な、なに・・・?」
ディルは一番に声をあげた。その5つの人影に向かって。一人は老婆。一人は若い女性。一人は幼き女の子。もう一人も幼き男の子。最後の一人は若い男性。そして、一番に男の子が口を開いた。
『うわぁ。5人が顔を合わせるのなんて、何年ぶりだろうねー』
とても嬉しそうにしている。にこにこと、顔を微笑ませながら。
『久方ぶりですねぇ。年寄りには数えれんわ』
老婆も、嬉しそうに微笑んでいる。急に、男の子に女の子が抱きついた。
『会いたかった! 本当に会いたかったわ!』
『僕もだよ!』
『おぅおぅ・・・。若い者は元気でいいこと・・・』
『・・・』
若い男性は口を噤んだままだった。
『おおっと・・・。ほれ、やめなさい。子どもたちが待っておる』
老婆は、テューサたちに今更ながらも気づいて、声をかける。それまでもずっと、ディルを始め、4人は成り行きを見つめていた。ふいに、テューサが声を出す。
「・・・お母さん?」
言葉に驚き、シャネラたちがテューサを振り返る。テューサはとても不安そうな顔をしていて、今にも泣き出しそうだった。お母さん、と問いかけられた若い女性は、ふ、と口元を緩ませた。
『ばれてしまったわね。・・・大きくなったわね、テューサ』
抱きつきたい衝動に2人はかられるが、生身の人間と、霊体のような状態の2人は無理なことを理解していた。代わりに、瞳を潤ませている。
『おやおや。あれだけ秘密にしておきたいと言っておったのに』
『傷つけたくなかったのです』
苦笑いをしながら、テューサの母は答えた。
『さて、もうお分かりになられたかしらね。私が、ラーミア。こちらからテュク、ランクル、シャーマ、そして、ディムァ』
自分で名乗った老婆・ラーミアがひとり一人、名を紹介していってやる。
「あなたたちが・・・!」
ルビスが感嘆の声をあげた。
『さて。昔話を聞かせましょうかね。長くなるが、うたた寝するんじゃないよ』
ラーミアは優しく笑うと、話し始めた。
『真実の歴史はライソカスで聞いていることでしょう。その辺は飛ばそうかね。まず、あなたら が共通して持つ、この石。まとめて<ミール・ストーン>っていうんですよ。覚えといてね。 <平和の石>って意味さ。
ミール・ストーンを使った、この平和への計画は、あなたらが生まれると同時に発動しまし た。だから、一番年上の・・・シャネラとミクヤかしらね。誕生日が早いのはどちらか知らな いがね。最後のディルが生まれると、私ら5人はそれぞれお告げを聞いたのです。『ミール・ ストーンに宿り、平和を謳え』とね』
『ミール・ストーンっていう名は、世間には知れ渡ってないから、僕最初何のことかわかんなか ったよー』
シャーマは困った顔つきで言った。それに対して、ランクルがうんうんと頷く。ディムァは無口で、一言も喋らなかった。テュクは、未だに娘と見つめ合っている。
「宿るって・・・?」
ルビスは問いを口にした。その問いは、他の4人も気になっていたことだった。
『魂となって、ミール・ストーンと一体化し、君らを護るってことだ』
ディムァが初めて声を出した。その声は、やはり成人男性らしく、低めの声であった。
「じゃあ・・・お母さんたちは、し、死んじゃったの・・・?」