第19部(1)
始まりました、第19部!!
クライマックス間近!
最後までお付き合いお願いします。
第19部 ―砂漠の神殿―(1)
テューサたちはやっと、砂漠に足を踏み入れた。盗賊と闘ってから、2日過ぎていた。
そこは、ネイス国なのに木々はおろか、雑草すらもない場所だった。一面茶色。いや、黄色がかっている部分もあるが。こんな所で迷ったら、生きて街に戻れる確率は低いだろう。
ちょうど、夜になる頃合だった。太陽が、顔を隠そうとしている。砂漠はオレンジ色に見えた。
「夜だけどー・・・。ねぇ、もう休もうよー・・・」
珍しく、ディルが弱音を吐いた。ミクヤが彼女を見やる。それほど心配してなさそうだったが。
「どうした」
「疲れたのよー! 荷物重いんだものー。それに、砂漠歩いてると足がもつれるしー・・・」
金切り声をあげる。ミクヤが迷惑そうな顔をして、溜め息をひとつ。ルビスが笑って、2人を止めた。
「石から情報もらわなくちゃいけないし、今日はこのへんで休もうか」
ルビスが一足先に荷物を下ろす。負けずと、ディルも急いで下ろす。まるで、「あたしが一番に休むのよ!」とでも言うかのように。そして、自由になって腕を上に上げて伸びをする。
「ふうっ。・・・本当に何もないわねー・・・。つまんない」
「何があればつまるんだ」
「ミクヤのばかーっ」
ディルとミクヤが口喧嘩を始める。テューサは腰を下ろして2人を見ていた。くすくすと笑いたくなる衝動にかられる。ルビスが手を伸ばし、テューサに炒った木の実と炒めた山菜を渡した。「ありがとう」と言って口に運ぶ。
「あっ!!」
ルビスが叫んだ。全員の動きがぴたりと静止する。ディルとミクヤの、一方的な口喧嘩さえも。ルビスは、服のポケットに手を突っ込んで、ごそごそと何かを探している。
「<チャールク・ネス・アーソイリー>」
取り出した石を握って、囁くように詠った。うっとりと、テューサは目を細めてそれを眺めた。周りの自然だけでなく、自分も術に堕ちるような感覚があった。そのくらい、ルビスの呪文は心地良かったのだ。
うっとりとしてぼーっとしていると、シャネラが心配そうに声をかけてきた。
「・・・どうした? 大丈夫か?」
テューサは現実に戻された。はっとして、シャネラに笑顔を返す。
「大丈夫よ! ルビスの呪文が少し、心地良かっただけ・・・」
「そうか」
素直に、理由を話した。まだテューサの肩の傷を気にしているのか、シャネラに笑顔が戻っていなかった。それを見ていると、テューサよりも逆に痛々しい。シャネラも、充分それが分かっていた。しかし、素直に笑えなかった。
会話が途切れたまま、テューサはルビスからもらった夕食を口に入れた。シャネラも、テューサの正面に座って、食事にありついた。騒がしく聞こえる、ディルの声。一方的な口喧嘩を見ながら、食事を終えた。
「あれ、もう寝るの?」
横になりかけたテューサを見て、ルビスが声をかけた。シャネラはそちらを見ていたが、ディルとミクヤは未だ勝敗の結している喧嘩を行っている。
「うん。眠いし・・・。テュクから早くいろんなこと教えてもらいたいもの」
「そっか。おやすみ。よい夢を」
にっこりとルビスが微笑んだ。テューサも笑い返し、目を瞑るとすぐに夢の世界へおちていった。