第18部(2)
テューサがシャネラをかばって・・・!?
第18部 ―意外な合流―(2)
「きゃああぁっ!!」
ぼたぼたと、血が流れる。傷つけられることをよく知らないテューサは、気を失いそうになり、ふらりと体を傾かせる。
「テューサっ! テューサっ!!」
揺らいだ彼女の体を、シャネラが懸命に抱き、起こそうとしている。抱えられている彼女は涙し、うめいていた。ルビスも、そちらで起こっていることを見ていたが、目の前の盗賊が邪魔をして2人の元まで辿り着けない。ただでさえ、ルビスも怪我をしていて息を荒げている。
「女まで傷つけんなよな。どこかに売り飛ばせるかもしれないだろ」
「へへっ。すんません、首領。さぁて。女と宝石を俺らに渡せば、助けてやらないでもないぜぇ?」
テューサを切りつけた男が、笑いながら首領の説教に答える。そして、シャネラには無理な交渉をしてくる。とたん、鈍い音がしてその男はその場に倒れこんだ。倒れこんだ男の後ろには、ミクヤが太目の木の枝を持っている。背中合わせで、ディルが拳を作って構えている。拳には布のような物が巻かれていた。そういえば、周りに転がっている盗賊の数が、増えているような・・・。
「お前らがやったのか・・・?」
シャネラは、ミクヤたちを見上げ、質問する。にこっとディルは笑って、ルビスに加勢しに行った。
「大丈夫か」
シャネラの質問に答える気配のないミクヤは、膝をついて、シャネラが抱えている少女の体を、抱き起こした。
「う・・・っ。うぅえ・・・んっ。うぅー・・・」
痛そうに、顔を歪ませ泣いている。切られていない方の左手で、自分の顔を覆った。
「ミクヤ!! こっち先に手伝ってー!!」
ディルから大声の呼び出しを食らう。ふぅとミクヤは溜め息をついて、テューサをもう一度シャネラに預けた。優しく、動かす。
「これ。借りていいか」
疑問形だったのにも関わらず、許可をもらうまでもなく、ミクヤは言い残してシャネラの木刀を持っていってしまった。
ミクヤはディルとルビスの元へ辿り付くと、木刀を使って、相手をどんどんなぎ払っていく。ミクヤの剣術も、上手かった。
テューサは泣き続け、シャネラの胸に顔を埋めていた。ずっと城で過ごし、痛い思いなど、これっぽっちもなかっただろう。かなりショックだ。
「ぅうあ・・・。ふ・・・ぇー・・・」
「テューサ。おい。大丈夫か。テューサ」
声をかけることしか、シャネラには出来なかった。背中をさすってやる。それ以外に、何をしてやればいいのか、分からなかった。
しばらくすると、残りの盗賊を片付けたのか、3人がシャネラたちのところへ寄ってきた。
「痛たた・・・。大丈夫だった、シャネラ・・・?」
ルビスが、苦痛に顔を歪ませながらも必死に笑顔を作ろうとしていた。ディルは、拳に巻き付けていた布を取っている。ミクヤはルビスの鞄から包帯などの、手当て道具を出していた。
「俺よりも・・・テューサが・・・」
「テューサ。大丈夫?・・・って、大丈夫じゃないね・・・。ほら、泣かないで」
ルビスが、テューサの髪に手を伸ばし、撫でてやる。確かに、テューサの肩の傷から流れる血は、止まる気配はなかった。
「テューサ! そんなことで泣いちゃ駄目よー!」
ディルが喝を飛ばす。それを、溜め息をつきながら
「お前と一緒にするな。ほら、手伝え」
ミクヤが呟き、ルビスの傷を消毒してゆく。ディルも手伝いに、腰を下ろす。
「痛た・・・。やっぱり僕も何か武術を習おうかなぁ。それにしても、ディルは強かったねぇ」
「お褒めに頂き光栄ですわ」
にっこりと笑ってディルが言った。ミクヤは黙々と手当てをし続けている。
「っ・・・。まさか、ディルが体術を使うとは思わなかったよ」
「体術だけじゃないわー。剣術も使えるの。うふふっ」
「出来たぞ。ルビス、テューサを頼む。俺はあいつを・・・」
包帯を巻き、ミクヤが合図する。ルビスは「ありがとう」と言って、テューサの手当てを急いだ。ディルも、それについて行く。ミクヤも、テューサのところにシャネラがいるので、それに続いた。
「遅くなってごめんね。テューサ、手当てするから。少し、体を起こして。ディル、ちょっと支えててあげて」
ディルは、ルビスに指示された通りにした。それから袖を破り、傷が見えるようにした。傷はそれほど深くはなかったが、浅いともいえなかった。腕がぱっくりと割れていて、どくどくと、血が流れている。シャネラからテューサが離れて、ミクヤもシャネラの手当てに取り掛かった。
「テューサ、ごめんね。少し、染みるよ」
清潔なガーゼに消毒液を浸け、傷口をなぞってゆく。瞬間、テューサが体を震わせる。
「・・・っ! うー・・・。いっ・・・た・・・いよ・・・ぉ・・・」
健全な方の手で、ディルの服の袖を力強く引っ張る。正直、ルビスは手当てしにくかったが、一生懸命頑張った。ガーゼが、流れた血液を吸った分、どんどん赤く染まる。それで傷口の周りも拭いた。
「テューサ! 泣いちゃ駄目ー! あたしなんか、剣術の修行でいろいろな場所まわってるときに、相手の真剣が脇腹を切ったのよー。大丈夫よー! ちゃんと治るからー!」
必死に、ディルはテューサを慰めていた。いちいち、ミクヤがそれを聞いていて何か言う。
「お前と一緒にするなって・・・」
「何よー、ミクヤ。この痛み分かるのー?」
ミクヤは黙った。会話が続かなくて、ディルは頬を膨らました。そして、ミクヤはシャネラの手当てを終えた。
「すまねぇな。・・・テューサ。大丈夫か・・・?」
ミクヤに礼を言い、すぐにテューサの元へ駆け寄る。しかし、自分も怪我をしているので、動きは遅かった。顔を俯かせて、ディルの袖をぎゅっと掴んでいるテューサの服は、真っ赤に染まっていた。顔もまだ痛みに堪えていて、強張っていた。
「だい、じょうぶ・・・。シャネラも、だいじょう、ぶ・・・?」
精一杯テューサは笑顔を作った。しかし、シャネラにとってその笑顔は痛々しかった。ディルに凭れて体を預けているテューサの髪を、静かにシャネラは撫でた。
「俺は大丈夫だ。・・・ごめんな、痛かっただろ」
「・・・いたい、よ。でも、だいじょうぶ。だから、そんな顔、しないで。ね?」
確かに、シャネラは今、申し訳なさそうな表情をしていた。今のシャネラには、笑い方が分からずにいた。テューサが毒蛇に噛まれたときよりも酷く顔を歪ませていた。
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