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第17部

ルビスの、悲しい過去話・・・。

第17部  ―2人の、悲しいお話―


 ギルの街へ向かったテューサとシャネラ、ルビス。やはり、1日では着かなかった。一晩野宿して、翌日午後には街に入れた。

「ふぅーっ。やっと到着かよ・・・。疲れた・・・。このまま宿に行って寝ようぜ」

木刀を両手で持ち上げ、真上に背伸びをする。力を抜いて手を下ろし、溜め息混じりにシャネラが言った。

「駄目だよ。ディルたちが待ってるんだから。買い物が済んだら、すぐに出発するよ」

ルビスがはっきりとシャネラの意見を拒否した。それを聞いて、シャネラは舌打ちして口を尖らす。ふう、と苦く笑って、ルビスがテューサと目を合わせた。テューサも、くっくと小刻みに笑った。

「それじゃ、二手に分かれる?食料と、お水。服はいる?」

「俺はいらねえ」

「僕もいいや」

「じゃあ、私はお水を買ってくるわ」

「いや、僕が水を買って来るよ。重いからね。」

テューサとルビスは笑って、買い物の相談をした。「ありがとう」と礼を言って、計画は決まった。それを黙ってシャネラが見ていた。

「なあ。俺はどっちに行けばいいんだよ?俺だけ宿で寝てていいの?」

「そんなお金ない!!」

冗談とは聞こえないシャネラの言葉を、2人が声を揃えて反撃した。

「もう・・・! じゃあシャネラはルビスの方へ行って。水は重くなっちゃうからね。ルビス、シャネラをどんどん使っちゃっていいからね。シャネラ、ちゃんと働かないと駄目よ!!」

まるで、母親のように場を仕切る。

「じゃあ、1時間後に街の外で会おう」

「うん」

テューサたちは二手に分かれて買い物に走った。


テューサはまず、手頃な市場に入った。置いてある品は、木の実、果物、山菜など。今までライソカスで買った、小麦を練って焼いたパンを食べていたので、どうもぱっとしない感じがした。迷った挙句、木の実と山菜を少量ずつ買った。

「お魚が食べたいけど・・・。シャシル国じゃないし、ないわよね・・・」

本音をぽろりと口にした。市場の者は、テューサの言葉を聞いていたが、何も言わなかった。巾着のような袋に木の実を全て入れ、山菜は取っ手のない紙袋に入れてくれた。胸の前でそれを担ぐ。

 少し歩くと、キノコの市場があった。テューサはそこへ入り、品を見てみた。

「お、いらっしゃい!! 何がいいかね?」

店の者に聞かれると、テューサは少し迷ったあと、口を開いた。

「・・・一番安いのをください」

「一番安いのね・・・。これだな。これは健康にいいぞ! どのくらい欲しいんだ?」

これも少量だが、適当な数字を言って、山菜の入っている紙袋に入れてもらった。

「まいど!!」

店の者の声と共に、市場から出た。まだ軽い紙袋。これだけじゃあ、食べ盛りの5人にとっては1週間ももたないだろう。残っている金で、肉は買えないだろうか。テューサはお金を手の平に出した。・・・買えるかもしれない。テューサは、肉の市場へ走った。


 ルビスとシャネラは、ルビスの知り合いの水市場へ行っていた。

「ごめんください」

ルビスが、市場の者に声をかけると、その人は振り返った。

「おぉ、ルビス!!」

「久しぶりだね、カンル」

カンルと呼ばれた男は、にっこりと笑った。ルビスも笑顔だ。シャネラは後ろから2人のやり取りを見ていた。

「どうしたんだよ、急に」

「水を買いに来たのさ。今ちょっと旅をしてるんだよ」

「へぇ。いいぜ! 昔から世話になってるしな。まけてやるよ」

「ありがとう」

ルビスは素直に礼を言ったあと、水の量を注文した。ボトルのような水筒を5本買った。

「また、薬作ってくれよな」

「任せて。じゃ」

「おう。気をつけろよ」

カンルは手を振り、ルビスとシャネラを見送った。ルビスも、カンルに手を振り返す。

「アイツはなんなんだ?」

シャネラが、カンルが見えなくなった頃に聞いた。ルビスはシャネラを見て、笑いながら答えた。

「僕の、弟。もっとも、カンルはそのこと知らないけどね」

「よくわかんねえな」

自分から聞いたのに、シャネラは考える素振りも見せなかった。気にせずに、ルビスは続けた。

「小さい頃、両親が病気を患ってね。僕は5歳だった。カンルはまだ赤ん坊だった。両親が病気で倒れてから、収入がなくなる。僕は僅かなお金で両親の看病をして毎日を送っていた。カンルは・・・孤児院に預けたんだ」

ルビスが一息ついた。テューサとの落ち合い場所に着いたので、持っていた2本の水のボ

トルを地面に置いた。運び疲れた手をぶらぶらさせる。シャネラも、持っていた残り3本

をその場に置いた。

「結局、両親は病死。僕は、まず働いた。情報紙配達が最初だったかな。君らに出会うまで住んでいたあの家に住んでたんだ。少しずつ、お金が貯まってきて、カンルを引き取りに行こうと思ったら、もうカンルは別の人が引き取っていた。まぁ、カンルは本当のこと知らない方がいいのかなって思って、そのまま。友達としてやってきて、今に至るんだ」

哀しいような笑顔をシャネラに見せる。別に、シャネラは同情しない。ルビスもそれは分

かっていた。

「テューサには言ったが・・・。俺も、海で、幼馴染を亡くした」

「うん」

シャネラは、ルビスを見ずに、どこか遠くを見つめていた。ルビスは、その場に座り込ん

だ。膝を抱え込んで、シャネラと話す。

「・・・テューサも・・・小さい頃、親に捨てられたんだって」

「そうか・・・」

「ディルも、王宮を逃げて1人で生きてた。ミクヤも、話さないけどどこか、悲しい面を持っている感じがする。僕たち5人は・・・そういうところで選ばれたのかな。石たちに。悲しみを知っているからこそ、世界を救えるのかもしれないね・・・」

シャネラが、街の壁に凭れて腕を組む。軽く空を見上げた。

「これ以上、悲しみを増やしちゃ・・・」

「シャネラーっ! ルビスーっ!!」

遠くで2人の名を呼ぶ声が聞こえた。テューサだ。声がかぶり、シャネラは話すのを止め

た。ルビスが立ち上がる。

「助けてよぉー!」

テューサが両腕いっぱいに紙包みを持っている。よたよたと危なっかしげにこちらへ歩い

てきていた。前が見えているのだろうか。荷物が今にも落ちそうだ。シャネラがゆっくり

歩いて、テューサの方へ向かった。

「あっ、シャネラ! 持って。重いー!」

テューサのところまで行き着くと、シャネラは荷物を半分以上持たされた。何も言わずに、

溜め息がこぼれてくる。

「重かったー。鞄の中に入らないんだもの・・・。どうしようかと思っちゃった」

「お疲れさま。食材係が2人の方がよかったかな」

ルビスがテューサに向かっていつもの笑みを投げる。シャネラは黙ってそれを見ていた。


第17部は以上です。

私的には、第18部は結構お気に入りです★☆

あ、1200Hit有難うございます。

目指せ、1300Hit〜♪♪

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