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第16部(4)

さぁ、行きましょう。

目的の地へ−−!

第16部  ―ネイス国へ・・・―(4)


 翌朝――。まだ夜が明けたばかりで、辺りが薄闇の頃。ミクヤは目を覚ました。そして、籠の中から顔を上げて、空を見渡す。無意識に、手の中には自分の『平和』の石が入っていた。ぎゅっと握り、空を見つめながら小さく呟く。

「<ディーキー>・・・」

籠の底で握っている石から、紅い光が放たれる。この言葉と光で、自分の右肩に頭を乗せていた少女が目を覚ました。「うーん・・・」と言って、ごそごそと動き出し、ミクヤの肩に額を乗せる。目をゆっくりと開いて、自分が額を乗せている肩の主を見つめた。

「おはよー・・・」

まだ眠そうな、紅い瞳をしながら、ディルは呟いた。ミクヤは何も言わず、口元だけで静かに笑った。それが嬉しかったのか、ディルはにっこりと笑う。

「・・・行くー?」

小声で話し掛ける。まだ夜明け直後だとディルには分かっていた。だからこそ、普段の大きさの声を出して、シャネラを起こしたら、怒らせてしまいかねない。ミクヤはディルの問いかけに、こくりと頷いて静かに立ち上がった。ディルも真似て音を立てないように静かに立つ。籠から出たミクヤは、ディルの手を取り、籠から出るのを手伝った。籠から出て、森の方へ歩き出す。足元に、無造作に生える雑草を踏むことで、音が少々出てしまうが、こればかりは仕方なかった。最小限に音をおさえて森の中へ入っていった。

 森へ入ったはいいが、やはり、ディルはアムタワ国へは行けなかった。森の奥深くまで来たところで、ミクヤの指示があり、ぽつんと取り残されてしまった。手近な木の幹に凭れかかって、彼の帰還を待った。

 しばらくして、ミクヤはディルのいる場所に帰ってきた。ディルに手伝ってくれと言ったのに、ミクヤの持っている物は長い紐と食料が入った鞄だけだった。

 ディルが、戻ってきたミクヤに駆け寄った。彼女はミクヤから鞄を受け取り、テューサたちのいる場所まで運ぼうとしたが、ミクヤが断り、長い紐だけを持つことになった。

 2人で並んで歩いた。会話は何もない。だがディルにとって、隣にミクヤがいてくれることが、とても嬉しかった。沈黙のまま、しばらく歩く。そして、結局何も言葉を交わさないまま、まだ夢の中のテューサたちがいる場所まで戻ってきてしまった。ディルが少し、会話がなかったことに気を落としていると、ミクヤはそれに気づき、彼女の頭にぽんと手を乗せ、紅い髪を撫でた。・・・ミクヤに出来る、精一杯の愛情表現だ。ディルはミクヤに向かってとびきりの笑顔を返した。

 それからまたしばらく経った。3人の中で一番に目覚めたのはルビスだった。籠の外で食事をしていたディルとミクヤに声をかける。

「おはよう。・・・ミクヤ、気球に必要なもの、持って来てくれた?」

ごくりと食べている物を飲み込んでから、ミクヤは短く返事をした。

「それで・・・。何で僕の力が必要なの?」

「・・・・・・」

ミクヤは答えなかった。ディルが慌てて、彼の代わりにルビスに答えた。

「えっとねー。多分ミクヤが考えているのは・・・。ルビスの自然を癒す力を借りて、風を利用し、気球を飛ばそうとしているのよ」

「・・・えーっと・・・。・・・僕、自然は癒せるけど、風をそこから利用するなんてしたことないよ?それに、僕の力だけで5人が乗った気球なんて、飛ばせないと思うけど・・・」

1つの疑問を解決すると、また別の疑問が浮かんでくる。ディルは、喋らないミクヤに代

わって、ルビスと話した。

「大丈夫! 多分出来るよっ! それに、ミクヤが飛ばすととき手伝ってくれるから!」

ディルが笑って、ルビスを安心させようとした。これ以上聞いてもらちがあかないと考えたのか、ルビスもそれ以上聞かなかった。自分もその場に座って、朝の食事を始めた。陽はもう水平線から全部顔を出している。

 3人の食事が終わった。

「それでミクヤ。今日は何をしたらいい?」

ルビスが、食事の残りを鞄にしまいながらミクヤに尋ねた。

「・・・布を籠に取り付ける」

ミクヤは口を開いた。ルビスには、珍しく思えて、思わず笑みがこぼれた。

「分かった。昨日つけてた針金を、籠にも通せば良いんだね」

言葉に、こくりと頷く。ルビスはそれを確認して、作業を始めようと布がある方へ振り返った。・・・まだテューサとシャネラが寝ている・・・。ルビスは軽い溜め息をついた。そのまま2人に歩み寄り、体を揺らして起こしてみた。

「テューサ、起きて。朝だよ。ほら、シャネラも起きて」

優しい口調で寝ている2人に声をかける。うーんと唸るテューサとは真逆で、シャネラはうんともすんとも言わなかった。

「昨日の作業、そんなに疲れたかなぁ?」

後ろを振り返り、座って事の成り行きを見ているディルとミクヤに、苦笑いしながら尋ねてみた。

「あははー。あたしはそんなに疲れてないよー。シャネラはいつも通りだと思うけど、テューサは昨日洞窟でびくびくしっぱなしだったから、安心してぐっすり眠っちゃってるのかなぁ?」

笑いながら、ディルが返してくれた。ミクヤも顔を綻ばせながらこっちを見ている。そう

こうする間に、テューサが目を覚まして起き上がった。

「おはよう・・・。あ、私ったら寝坊しちゃった!?」

視線を感じ、辺りを見回しながら慌てふためいた。しかし、テューサは自分の隣を見て、

少し落ち着いた。

「あ・・・まだシャネラが寝てるのね・・・」

「さ、テューサ。ご飯食べなよ。僕は先に気球を造ってるから」

ルビスは笑って優しく言ってくれた。せっかくの言葉に甘え、布の上からどいて湖の近く

で朝食を摂ることにした。ルビスは次に、シャネラを起こす。

「もう。シャネラ! 起きなよ。君がそこにいると、作業に取り掛かれないじゃないか」

ゆさゆさと体を強く揺すってみた。・・・起きる気配なし。ルビスは諦めて、シャネラの体を

ごろごろと転がし、朝食を食べているテューサの所にまで連れてきた。ルビスはここでも

う一度溜め息をついたあと、作業をするため布がある方へ戻っていった。

「・・・シャネラ。起きなさいよ・・・」

テューサがパンを一口かじりながら横で眠っているシャネラに声をかけてみた。返事はな

い。・・・呆れて、このまま放っとくことにした。




1100Hit有難うございます!!

こうやってHit数を祝うのも、11回目・・・ですかね。

増えていくたび、感謝の気持ちが募ります。

これからもよろしく!



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