第1部(3)
第1部―初めての出会いとその別れ―(3)
「はぁ・・・気持ちいいー」
お湯を体にかけると、泥と一緒に疲れも流れていくような感じだ。服を脱いでも、ペンダントは外さなかった。
「ありがとうございました」
風呂から出て、泥のついたテューサの服を、フィリアが洗ってくれているのか、用意してくれた衣服を纏い、テューサはリビングへ向かった。キッチンでフィリアを見つけた。
「あら。お風呂はどうだった? 服はぴったりね。私のお古なんだけど。テューサの服は明日には乾くから、待っててね。さ、そこに座って。お腹減ってるでしょう。ちょっとお待ちなさい」
ジュージューとガスコンロの上で山菜が炎に包まれている。いい匂いだった。そんな匂いを嗅いだテューサのお腹はぐうっと鳴った。仕方なく、テューサは
「ありがとうございます。・・・何かお手伝いしましょうか」
と素直に言った。
「大丈夫よ。ああ、今日はもう遅いし、泊まっていきなさいね。部屋はあるから。それに、何か訳有りなんでしょ?」
フィリアは炒めた料理を皿に盛りながらにやりと笑った。ちょうどその時、風呂上りのリュードが、熱って湯気を出した体を、2人の前に見せた。
「お、面白そうな話をしてるな。俺も混ぜろ」
「あなた。モナクはもう寝てるのだからもう少し声のトーンを落としてくださいな」
テューサは2人に見透かされたような感じがして、今までのことを話すことにした。
フィリアの手料理は美味しかった。テューサは今までのことを話し終えると同時に、ご飯も食べ終えた。リュードはそれ以上に速く食べ終えていた。
「へぇ・・・。お嬢ちゃんが『平和』の石を持つ者、ねぇ」
「学生時代、そのことを授業で習ったことがあるわ」
「ああ。だがほんの少ししか教えてもらわなかったな」
リュードとフィリアが学生時代の話をし始めた。
「そうだわ、村長がこの世界の歴史書を持っているから、朝起きたら訪ねてみたらどうかしら」
フィリアは提案した。
「そうですね・・・。そうします」
「よし、モナクを案内人につけてやろう。あいつ、喜ぶぞー」
「そうと決まったらもう寝なさい。今日は疲れているはずなんだから」
確かに、テューサの体は限界が来ていた。お腹いっぱいご飯を食べ、疲れも溜まっている。眠気が急に襲ってきた。
「はい。じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみなさい。部屋は階段を上って突き当たりよ。好きなだけ眠るといいわ」
「じゃな、おやすみ」
「ありがとう。おやすみなさい」
テューサは礼を言って皮袋を持ち、階段を上った。部屋に着き、皮袋からナイフを取り出して枕元に置いた。そして、自分の体も布団の中へともぐりこませた。数分もしないうちに、テューサは眠りに落ちた。