第16部(3)
ネイス国へ戻るためのお仕事・・・
第16部 ―ネイス国へ・・・―(3)
5人がそれぞれ作業に取り組んでいた。ディルとミクヤは籠の修復。テューサ・シャネラ・ルビスは、ミクヤがアムタワ国から持ってきた何本もの短い針金を、ぐねぐね曲げて布に刺し、取り付けていた。
作業に一心不乱に打ち込み、時間を忘れて辺りが暗くなるまで続けた。
「すっかり時間を忘れていたわねー。どう、そっちは?」
ディルが手の甲で額の汗を拭いながら、布の作業を行っている3人に状況を尋ねた。3人も手を休ませた。
「もうちょっとかかるかしら。明日の午前中のうちに出来ると思うわ」
テューサは笑いながら言った。シャネラは広げた布の上に寝転んでいる。
「ねえ、ミクヤ。僕、前に本で読んだことあるんだけど・・・。気球って、まだ何か足りない気がするんだけど・・・」
「明日の朝持ってくるつもりだ。ディル、手伝ってくれ」
「はーい」
ルビスが少し心配そうな顔をして聞いたので、何か危ないことだと周りは思ったが、思い過ごしだった。作業で疲れてはいるものの、陽気な声でディルは返事をした。
「じゃあ、今日はここで寝ようか。布が吹き飛ばされないように、僕はこの上で寝るつもりだけど・・・。皆はどうする?」
ぽんぽん、と自分が座っている下の大きな布を叩きながら、ルビスは言った。ディルは周りを見渡す。
「あたしは・・・この籠の中で寝ようかなー・・・」
「じゃあミクヤも籠の中で寝ろよ」
シャネラは籠を指差しながら、ミクヤを見てすかさず言った。ミクヤはふうと息をついただけだった。テューサはそれを見て、慌てた様子を示す。
「テューサはこっちだ。文句言うなよ」
シャネラがそれに気づき、テューサの肩を掴んでルビスの方に寄せた。
「あの2人は、朝早くに部品を取りに行くんだろ。寝てんの邪魔されるの嫌だしな」
シャネラはにっと笑う。テューサは「分かった・・・」とだけ言って、皮袋を自分の方へ持ってきた。
何も会話がないまま、食事が始まり、終わる。静かな夜だった。皆が眠る前に「おやすみ」と言葉を交わすだけ。
テューサたち、布の上で寝る3人は、自分らが寝転んでも十分布が余ったので、布に包まって眠ることにした。そのため、3人は並んで寝た。ルビスがテューサとシャネラの真ん中に入る。喧嘩にならないようにと、2人からの希望だった。
ディルとミクヤは、肩を寄り添って籠の中で座ったまま眠りについた。これで、この日の晩は、焚火をつけなくても温かくして眠ることが出来た。焚火などつけたら、風で布に引火してしまい、危険である。こうして眠れたことは好都合だった。