第14部(5)
第14部 ―暗闇の冒険―(5)
その後も歩き続けると、正面に光が見えてきた。・・・出口。やった、と思った瞬間、四人
は宙に浮いた。
植物の蔓だった。体中蔓に巻き取られて、身動きできなかった。
「何だ・・・? これ・・・?」
「何で蔓が動くの?」
「ディルの嘘つき! 恐いものは出ないって言ったじゃない!」
シャネラとルビスは蔓に疑問を感じていたが、落ち着いてはいた。テューサは喚いている。
「うるさいわねー。全っ然恐くないじゃん。あたしここを通るときいつもこいつら退治出来てたよ?」
ディルも落ち着いた口調で話す。言い終わるが速いか、ディルは腰に備えておいた短剣を
抜き、蔓を切った。すとん、と地面に降り立つ。
「おい、それ俺にも貸せ。木刀じゃ切れねえ。こっちの手に持たせてくれ」
シャネラは、ディルに短剣を貸してもらうと、体に巻きついていたというのに、綺麗に蔓
を切り刻んだ。軽々と地面に下りる。
「シャネラ。僕の蔓、切ってくれないかな。僕、そういうのあまり使ったことないんだよね」
「仕方ねぇな」
ぶつくさ言いながらも、速い剣の振りで、ルビスに巻きついた蔓も、綺麗に切り落として
しまった。落ちるときに、上手く受身の取れなかったルビスはしりもちをついた。
「いたた・・・。まあ助けてもらったんだし、文句は言えないけどね・・・」
ふっとルビスを笑いながら、シャネラはまだ宙に浮いているテューサを見た。
「おい。お前、ナイフ持ってなかったっけ?」
「持ってるけど・・・。手が動かせないんだもん・・・。シャネラ、早く切ってよ・・・」
両手が自分の胸の前で拘束され、腰に装備しているナイフには届かなかった。テューサは、
シャネラに哀願した。シャネラは面白がってなかなかテューサを助けようとしない。ディ
ルは、しりもちをついたルビスが立つのを手伝っていた。
「どうしよっかな〜。おもしれえし、このままでもいいんじゃね?」
「面白くなんかないわよ! 早く、切って・・・」
泣きそうな声になっていく。ルビスを立たせたディルは「付き合ってらんない」とでも言うかのように、さっさと出口へ向かって行ってしまった。
「あたし、先に外出てるねー」
「じゃあ僕も」
ルビスは、ディルを一人にしてはいけないと思ったのか、ディルの後をついて行ってしま
った。テューサは焦った。
「え・・・。ちょっと待ってよぉ・・・」
姿が見えなくなっていく二人を、テューサが呼び止めようとしたが、無意味であった。ふ
う、と軽く溜め息をつき、シャネラは短剣を振った。テューサを縛る蔓が、切られて地面
に落ちる。次にテューサの体も、地面に急降下した。
「よいしょっと」
体に衝撃があまりなかったことに疑問を感じて、瞑っていた目を恐々開くと、地面にぶつ
かるはずのテューサの体は、シャネラの左腕に倒れこんでいた。にんまり笑ってシャネラ
が言う。
「俺に一つ借りが出来たな」
ばたばたとシャネラから離れた。俯き加減に、テューサは礼を言った。
「あ、有難う・・・」
「ほら、行くぞ」
シャネラに背中を押されて、洞窟を出た。