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第14部(4)

ちょっと甘々?★☆

第14部 ―暗闇の冒険―(4)


 現実。夢から一番に覚めたのはルビス。目を擦りながら、昨晩焚火で燃やしきった牧の燃えくずを横に寄せ、牧を新しく持ってきて真ん中に焚火を作った。まだ夜が明けて間もないのか、4人のいる洞窟は、周りが見える程度にほんのり明るくなっていたが、冷え込んでいた。

 焚火を作っていると、テューサが目を覚ました。

「・・・うー・・・ん。あ、おはよう、ルビス。まだ、寒いわね・・・」

火が少しずつ大きくなってきた炎は、牧をどんどん飲み込んでいく。テューサは両手を上に挙げ、大きな伸びをした。テューサを包む周りの空気が冷たいことに気づき、ぶるっと身震いした。

「おはよう、テューサ。まだ夜が明けたばかりなのかもね。ほら、近くに寄って。少しだけど、温かいよ」

ルビスの言葉に甘え、テューサは一歩前へ前進した。小さな焚火が、周りの空気を温める。テューサは、正面に座る少年ににこっと笑いかけた。笑顔が少年から戻ってくる。

「二人は起きないのかしら?」

両手を焚火にかざして温めながら、テューサは両隣の少年少女を見た。ルビスも2人を見つめた。

「うん・・・。この中じゃ時間が分からないから、起こすにも起こせないよね・・・。家から時計を持ってくるべきだったなぁ」

ぽりぽりと頭を掻きながら、ルビスはふうと溜め息をついた。

「もうちょっとしてから起こそうか・・・」

「そうね・・・。シャネラはいつもお寝坊さんだけど、ディルはどうなのかしら・・・そうそうルビス、聞いた!? ディザードを仲間にしたら、ネイス国へ向かえだって!」

夢の中で、テュクに聞いたことを、ルビスに話した。テューサが夢で取ったリアクションと同じものを、ルビスも取った。

「ええ!? またネイス国へ行くの!? 大変だなあ・・・。」

パチパチと音を立て、だんだん大きくなっていった焚火の炎は、ルビスの顔が見えなくなるくらいまで成長した。驚いた表情は十分見えたが。


 夢での話を二人で確認しあっていると、ディルが目を覚ました。ディルは寝ぼけたような顔はせず、すぐに笑顔になって二人に朝の挨拶をした。テューサとルビスもそれを返した。

シャネラがなかなか起きないので、三人で朝食を摂ることにした。

「・・・そっかぁ。ラーミアはそんなこと一言も言っていなかったなー・・・。むー・・・。まぁ、とにかく今日ディザードを仲間にしてッ、それから渡り方を考えましょ!」

テューサたちから、夢での話を聞き、状況を知ったディル。冷静に判断を下した。さすが、王家の者だけある。

「御馳走様でした」

一足速く食事の終わったテューサは、残りの食料を鞄へ詰めた。まだ木の実を頬張っているディルは、一つテューサに頼みごとをした。

「あ、テューサ。・・・もう食事も終わるし、出発するから、シャネラ起こしてくれなーい?」

何とも簡単な頼み。テューサはすぐに承諾してシャネラを起こしにかかった。ルビスも、二人のやり取りを見ながら、食事を終わらせようとしていた。

「シャネラ。シャネラ、起きて」

横になった体をゆさゆさと揺すり、声をかけてみた。この期に及んで、まだ心地良さそうに眠るシャネラ。テューサはもっと大きくシャネラの体を揺すった。

「シャネラ! 起きて! 出発するわよ! 置いてっちゃうわよ!!」

いっそう声を張り上げて起こしてみた。・・・まだ眠る少年。今度は頬を軽く叩いてみた。

「シャネラったら!」

パンパンという音が、洞窟中に響き渡る。ルビスとディルはもう支度を終え、焚火を消して灯し木を掲げていた。

「もう・・・起きてって・・・何度言わせるのよ・・・! シャネラ!!」

耳元で叫んでみた。びくっと一瞬体を震わせ、シャネラは目をうっすらと開けた。

「・・・うっせえな・・・」

「ほら、立って! 出発よ!」

シャネラの両手をぐいと引っ張り、無理矢理立たせた。ルビスとディルは一緒に溜め息をつき、灯し木を持っているディルを先頭に、昨日来た道の逆側の狭い道へ入っていった。テューサもシャネラを引っ張りながら後を追う。

「おい・・・。俺、飯まだなんだけど・・・」

「食べながら歩けばいいでしょ。寝坊したのに、贅沢なこと言わないの」

「分かったよ。・・・逃げねえから、手、離せ」

シャネラに言われて、ぱっと手を離した。先を歩くルビスの後ろを、テューサが歩いた。昨日と同様の順番になったようだった。シャネラは、離してもらった手で鞄からパンを出し、口に放り込んだ。


どのくらい歩いただろうか。真っ直ぐ直進したり、ぐねぐねと曲がりくねったり・・・。あるとき、テューサが悲鳴を上げた。

「きゃっ!!」

壁を伝うために触れていた右手を、慌てて自分の方へ引いた。悲鳴に驚き、ディルとルビスが後ろを振り返った。

「テューサ・・・。そんな驚くな・・・。俺の手だよ」

シャネラが苦笑しながら、右手をふらふらと振った。

「手・・・?」

テューサ・ルビス・ディルが、声を揃えた。シャネラは苦笑いしながらテューサの頭をぽんぽん、とあやすように叩いた。

「壁に手をつきながら歩いてたんだよ。俺一番後ろだし、暗くてテューサもよく見えねえんだ。だから、手が重なっちまったんだよ」

「本当・・・?」

テューサがびくびくしながらシャネラを見つめた。ふっと口を緩めて、シャネラは「ああ」と頷いた。

「もう・・・驚かさないでよ・・・」

ディルの口から呆れた、という溜め息がこぼれた。ルビスは何も言わず、微笑んでいる。

「びっくりしたぁ・・・」

「ったく。こんなことで悲鳴上げるなよ・・・」

「だって・・・」

「ほら、行くわよー! テューサもそんなに怖がらないのっ。ここは何にもコワーイものなんかいないんだからー!」

ディルに叱られ、テューサはしゅんとなった。仕切られ、列がまた前へ歩き始める。シャネラが、叱られて落ち込んでいるテューサに、もう一度あやすように頭を叩いた。


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