第1部(2)
第1部 ―初めての出会いとその別れ―(2)
「お嬢ちゃん、名前はなんて言うんだい?」
男は横倒れの木々を跨ぎながらテューサに話し掛けてきた。
「テューサです。テューサ・レクナシア」
「テューサか・・・。俺はリュードだ。よろしくな」
「は、はい」
しばらく歩くと森から出て、村が見えてきた。リュードの後ろを付いてきて、迷ったりはしなかったが、もう辺りは真っ暗だった。
村の門をくぐると、夜のせいか、通りは静かで人の気配はなかった。
「俺の家はこっちだ」
リュードは親指を立てて方向を示しながら言った。
「あの・・・。こんな時間にお邪魔しちゃってよろしいんでしょうか?」
「大丈夫だ。・・・さ、着いたぞ。ただいまー!」
リュードはドアを開け、家の中の者に声を掛けた。少しして、奥からパタパタと音を立てて人がこっちへ向かってきた。
「あなた! 今までどうしてたの!? 村の人みんな心配してたのよ! ・・・あら、そちらのお嬢さんは?」
「森で倒れてたところを助けてくれたんだ。テューサってんだ。テューサ。こっちは俺の嫁、フィリアだ。あと息子が1人、モナクってのがいる」
フィリアは夫の言葉に驚いて悲鳴をあげた。
「まあ! 倒れてたの!? またどうして・・・。テューサ、ありがとう。あなたは大丈夫?」
フィリアはテューサを気遣い、まず2人を家の中へ入れた。
「ありがとうございます。私は、平気です」
「健康自慢のリュードとして知られるあなたがまた・・・どうしてかしらね。」
「とにかく、俺は体中泥だらけだ。風呂に入ってくる」
「命の恩人が先でしょう! さ、テューサ。体を洗ってきなさいな」
「あ、ありがとうございます・・・」
言われるまま、タオルを渡されて案内された風呂へ入ることにした。