第12部(7)
ついに・・・!!
第12部 ―時を癒すミヤウィザ―(7)
列の最後尾を歩いていたテューサがその広い場所まで出ると、暗闇でも分かるほどシャネラはあちこち歩き回った。
「シャ、シャネラ・・・。暗いんだから、危ないわよ・・・?」
そんなシャネラに声をかけるテューサ。ルビスはテューサの隣に立っているようだ。言った矢先に、シャネラは転んだ。
「・・・ってぇ・・・」
起き上がりながら苦痛な声を漏らした。
「だ、大丈夫!?」
「せっかくテューサが忠告してくれたのに、聞かないからだよ」
ルビスが暗闇に紛れて見えないシャネラにくすくすと微笑んだ。シャネラも、声の聞こえる方を睨みつけた。
「ここに何かあったんだよ。それに蹴躓いたんだ」
この言葉を聞き、テューサは今まで使わなかった火熾し木を使って、火を灯した。こうなったら、徹底的に調べなければならない。
立ち上がったシャネラはテューサから灯し木を受け取り、自分が転んだ場所を照らしてみた。
「・・・何もないじゃないか」
ルビスが照らされた部分を見た。
「本当だわ」
「・・・」
黙り込んでしまったシャネラは、しばらく立ち尽くした後、ふいに灯し木を上に上げて辺り全体を照らし出した。
「誰だ!?」
一人の人影が洞窟の壁に映し出され、思わずシャネラは叫んだ。この声で、テューサとルビスはばっと影ではなく人物そのものに目をやった。
「・・・あ、あなたたちこそ、誰よっ? ここから出て行って!」
灯りに映し出された人物は、テューサと同じくらいの少女だった。テューサは声を掛けた。
「え、えと・・・。私たち、ある人を捜してるのですけど・・・」
「で、出て行ってーっ!」
テューサの言葉を聞かず、喚いている少女。テューサがおろおろと困っていると、見かねたようにシャネラが灯し木をルビスに渡して、少女へ歩み寄った。
「こ、来ないで! 出て行ってって言ってるでしょっ?」
「うるせぇな」
ぐい、と少女の左手を取り、体を自分の方へ寄せる。そして、前かがみに引き付けられた少女の体を回し、右手を取る。すると、少女の両手は少女の背中でシャネラに掴まれ、自由を奪われていた。
「シャ、シャネラ・・・」
瞬く間にそれをやってのけ、それを目を見開いて見ていたテューサとルビスは、言葉も出なかった。
「・・・生け捕り成功」
「ちょっとー! 放してーっ! いやーっ」
シャネラに両腕を掴まれ、自由を奪われた少女は、体を前へ倒したり、シャネラの足を踏んだりと抵抗していたが、シャネラは「痛え」と言うだけで、腕を放しはしなかった。
「生け捕りって・・・。放してあげなよ、シャネラ」
ルビスが少女を見ながら言う。
「もともと殺すつもりはねえし。ってか、こいつなんじゃねえの、『農民姫』」
「放してってばぁ! 喧嘩なら買うんだからっ」
「へえ。俺と喧嘩しようってか。無理だよ。俺強いし。その前に、あんた放したら逃げるだろ?」
妙な会話が成り立っている2人の間に、ルビスが割って入った。
「落ち着いて。僕らは君を捕まえに来たんじゃないんだ」
「一緒じゃねえか」
「もんどーむよー! あんたたちなんか、ぼっこぼこにしてやるんだからー!」
未だシャネラに自由を奪われているのにも関わらず、勇んだ口調で言葉を発する少女。テ
ューサは名を確かめた。
「あなた・・・ディル?」
名を呼ばれ、一瞬ぎくっと体を硬直させた少女。抵抗するのを止め、シャネラは少女をそ
の場に座らせ、自分も座り込んだ。
「・・・そ、そうよ・・・。あたし、ディル・・・」
呆気なく、少女は自白し名を名乗った。テューサは嬉しくなって、少女に抱きついた。
「ディル! ・・・ディル!」
「・・・テューサ・・・。すぐに抱きつくその性格、何とかならねえのか?」
シャネラはディルの腕を放しながら、抱きついて涙を流すテューサに言った。ルビスは笑った。
「いいじゃない。4人目が見つかったんだから。嬉しいんだよ」
「ちょ、ちょっと・・・?」
慌てふためくディル。そんな少女に、ルビスが説明した。
「僕はルビス・カーソン。ルビスでいいよ。さっき君を捕まえたのはシャネラ。今君に抱きついているのがテューサだよ。よろしくね」
「・・・ここから出ないか? 暗くて、話がしにくい」
ルビスから灯し木をもらい、一足先にもと来た狭い一本道へ引き返すシャネラ。
「テューサ、聞こえた? ほら、立って。いったん外に出よう。ディル、来てくれるね?」
ディルはふいと顔を背け、躊躇ったが、すぐにルビスの方を向いて頷いた。テューサはディルの首から離れ、ディルの手首を持って歩き始めた。
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