第12部(3)
第12部 ―時を癒すミヤウィザ―(3)
私は、宿で眠ったあと、テュクに会っていた。
『よかったですね・・・。傷が治って・・・』
「うん! ルビスには感謝しなくちゃね。・・・それよりも・・・ミヤウィザはどこにいるか、テュク知らない?」
私は、傷が治ったことを体全部で表現し、その後、別の話を切り出した。テュクは悲しげ
な声で返事した。
『分かりません・・・。この大陸にいることは確かですよ・・・』
「本当!?」
『ランクルに会いたいよぅ・・・』
シャーマが俺に哀願をしてきた。でも、俺にどうしろと言うのだろう。・・・シャーマは石な
のに。
「・・・その、ランクルって奴の、どこが好きなんだよ」
俺は一応、シャーマの話にのってやった。まあ、少し興味があることも確かなんだけどな。すると、シャーマは上機嫌になって、ぺらぺらと喋り始たんだ。
『えーとね・・・。とにかく、可愛いんだ・・・。優しいし・・・』
この後、シャーマの、ランクルに対する想いが長々と語られた。俺は、半分聞いてなかった。・・・もう、長話は勘弁してほしい。
「ランクル、ミヤウィザはどこにいるの?」
『わからないわ・・・。・・・この大陸にはいそうだけど・・・』
ランクルは、僕の質問に対して、困り果てているような、か細い声を出した。僕は、ちょこっと良心が痛む。
「そ、そんなに気を落とさないで・・・。大丈夫、ちゃんと見つけるから」
心配させないように、僕はランクルに言う。どうやらランクルは泣き虫で心配性らしい。僕の直感だけど。これ以上、今回夢の中でランクルに不快な思いをさせないように、別の話を持ちかけて話を弾ませた。
現実――。一番最初に戻ってきたのはテューサだった。
「ふわぁ。シャネラたちはまだ夢の中みたいね・・・」
大きな欠伸を1つして、テューサはベッドから出て、眠っているシャネラとルビスの体の上に毛布を掛けなおしていった。シャネラは寝相が悪いのか、毛布はベッドから落ちてしまっていた。
「・・・風邪ひいちゃうじゃない・・・。・・・あら?」
テューサがシャネラに毛布を掛けると、戸をノックする音が聞こえた。テューサが「はい」と声を掛けると戸が開いて、ハンナが姿を現した。
「食事よー・・・って。寝てるの?」
「疲れてるんですよ」
テューサは笑って理由を述べた。ドアに凭れかかって、くすりとハンナは笑ってテューサに問い掛けた。
「さて、食事の準備は整ってるんだけど・・・。起こすのは可哀想かしら。寝かせておいてあげる?」
「そうですね・・・。自然に目が覚めるまで待ってましょうか」
「あんたはどうする?ご飯先に食べるかい?」
眠っている少年たちに向けていた紅い瞳を、テューサに向けた。
「どうしましょう・・・」
「また後で温め直してあげるからさ。あんたは先に食べなよ。ところで、名前はなんて言うんだい?」
迷っているテューサを強引に食事に誘った。テューサの腹も、鳴った。
「テュ、テューサです・・・。あっちがシャネラで・・・そっちはルビス・・・」
指さしながら、テューサは3人分の名を名乗った。ハンナはにっこりと笑って
「そうかい。さあ、テューサ。せっかくのご飯が冷めちゃうよ。行こうか」
テューサの腕を引っ張りながら、1階の食堂まで下りていった。
さて、どんな話が聞けるのでしょうか。
次話をお楽しみに。