第12部(2)
ハンナの宿の部屋で−−。
第12部 ―時を癒すミヤウィザ―(2)
「ここよ。自由に使ってね」
女に案内された一室は、簡素なものだった。ベッドが4つ。それだけ。それだけしかない
部屋に案内された。
「ごめんなさいね。さっきも言った通り、この国は旅人がいないのさ。だから宿なんていらないんだよ」
苦笑いしながら女は言った。
「じゃあ、どうして・・・?」
「たまぁに、夫婦喧嘩して家を逃げ出してきたダンナとかが泊まるからあるんだ」
今度は苦笑いなどではなく、普通に笑って、テューサの質問にあっさりと答えた。
「食堂は1階だから。また準備が出来たら呼ぶよ。ゆっくりしてて。・・・あ、それと、私のことはハンナって呼んで」
部屋から出ながら、自分の名を告げた。そして、扉が閉まる。トン、トン・・・と階段を下りる音がする・・・。ハンナが去った。
と同時に、シャネラは1つのベッドにうつ伏せに倒れこんだ。ばふっ、と音を立てる。テューサとルビスは少し驚き、顔を見合わせた。
「ど・・・どうしたの?大丈夫?」
テューサとルビスが声を合わせてシャネラに声をかけた。ごろん、とシャネラは寝返りを打って仰向けになり、顔をこちらに向けた。
「ははっ。2人で同じこと言うなよ。・・・大丈夫だ。泳ぎっぱなしで、疲れてる上に、大臣のあんなに長い話を聞かされたんじゃな。身がもたねえよ」
シャネラは笑った。シャネラ自身も、久しぶりに大きな声で笑った気がしたし、テューサ
とルビスも仲間の思いっきりの笑顔が久々に見れた気がした。
ルビスが残っている3つのベッドのうちの1つに腰掛けた。テューサも余りのベッドに
腰掛ける。
「・・・さて、これからどうしようか」
ルビスは少し真剣な目つきでシャネラとテューサを順に見た。シャネラは寝っ転がったま
ま、天井を見上げて言った。
「どうしようもねえだろ。情報がなくちゃあ」
「食事の時に、ハンナさんに聞いてみようよ。今は、休憩しよう?」
テューサがにっこり笑って決断を下した。
「・・・そうだね。疲れてるし・・・」
「ほら、ルビス。久しぶりの布団だよ。それに、毛布。気持ちいいよ」
ころん、とベッドに横になりながら、テューサはルビスにベッドに横になることを勧める。
ルビスも、それに対して横になり、笑った。
「本当だ。気持ちいいね。地面は固いし、冷たいもんね」
「・・・静かにしろよ。こっちは眠いんだよ」
シャネラはぼそっと言った。テューサはくすっと笑って
「食事まで、皆で一眠りしましょうか」
と誘った。この言葉を引き金として、すぐさま3人は眠りの中へと落ちていった。