第11部(5)
第11部 ―幻の紅いライソカス国―(5)
シャネラはついに口を出した。大臣は首を横に振った。
「いえ・・・。・・・御三方、ライソカス国にまつわる、お伽話を聞いたことはありませぬか?」
テューサははっと思い出した。リュードの村で聞いた話。そして、それを口にする。
「・・・『城の農民姫』・・・!」
大臣は苦笑して話を続けた。
「その通り。それは現実にあった話でしてな・・・」
「まさか・・・。その、僕たちの仲間であるこの国の王女が、この城にはいないと・・・?」
ルビスは大臣に思わず聞いた。こくりと頷き、口を動かす。
「王女は御名をディルと申す。ディル・フィネット様。ディル様は普通の王女とは違い、全然大人しくしておられんのです。舞踊よりも習うは武闘。父君である王が止めても、一向に止めず。元気があってよろしいのだが・・・。
現在15歳でして、16になると王族式が行われます。今、後継ぎはディル様しかおらず、幼き頃から王に無理矢理付けられた許婚と未来を誓わねばならんのです。それが苦にお思いになられたのか、ちょうど、15のお誕生の日が巡ってきた日に、姿を消してしまわれたのです。荷物もありませんでした。
これを機に、国王様は病んでしまって、国民には内密にしてあるのです。あれから半年くらい経ちますが・・・。一向に捜索報告は掴めないのです。王女が行方不明となり、国王が病気だと知れれば、国が傾きかねない。国王様が今、お忙しいというのは嘘です。申し訳ない。
だから、あなた方にお願いしたいのです。ディル様を捜してはくれませぬか・・・」
唐突な大臣の頼みを、3人は飲み込めずにいた。沈黙が広がった。そして、ついにテューサが口を開く。
「・・・『城の農民姫』ということは・・・どこかで、密かに農業を営んでいるということですか・・・?」
大臣は俯いていたが、テューサの質問を聞いて、顔を上げた。
「そのことですが。街の者の噂によると、つい最近、今までよく働いてくれた少女がその働いていた農家を出て行ってしまったとか。更にその少女は身元が不明らしい」
「ディル・・・とお呼びしてよいでしょうか。その少女がディルだという可能性は十分高い訳ですね」
ルビスは一言謝ってから、自分の考えを述べた。大臣は頷く。
「どこに行ったのか分かんねえのか?」
テューサとルビスが敬語を使っているのに対し、シャネラは相手が大臣という身分が高い人なのに、普段使うような言葉で喋った。しかし、大臣は気にしない。テューサとルビスはほっとしていた。
「わかりません。下手にわしが聞くと、民も怪しがるでしょう。わしは深く聞いていないのです。城の侍女が、ちらりと聞いてきた話なのです」
「そうですか・・・」
ルビスはふぅと溜め息をついて、その場に立ち上がった。他3人はルビスを見上げる形になった。
「どうなされたのです?」
「窓の外をご覧下さい。もう夕刻です。この場を失礼し、宿へ行こうかなと。・・・あ、ディルはしっかりと僕らが見つけてきますよ。安心してください」
にっこりと微笑みながら言うルビスに対して、大臣は慌てた。立ち上がる。
「そんな。城で休んでください。部屋は余っております」
テューサとシャネラも立ち上がった。
「有難う御座います。でも、ご迷惑はお掛けできません。大丈夫です。明日から早速出発しようと思っているので」
「ディルが見つかったら、一度、お城に顔を出しますね」
「街の奴等に、俺たちのこと言っといてくれよ」
テューサたちは一言ずつ言い、頭を下げて順に扉から出て行った。大臣は何も言わず、ただ彼らの後ろ姿を眺めていた。そして、聞こえない程の声で呟いた。
「・・・頼みましたぞ・・・」
第11部終了です。
ディル姫を捜し出せるのでしょうか!!
まぁ、話の流れからして見つけるのですがね。
ストーリー展開をお楽しみに♪♪
目指せ、600HITです〜。
みなさん、いつも有難う〜〜★☆