第1部(1)
第1部 ―初めての出会いとその別れ―(1)
テューサは森で彷徨っていた。故郷を出てからまだ1日しか経っていない。いきなり直面した森に入ってしまい、1日中テューサは植物と悪戦苦闘していた。
「もう! 何よ、ここ・・・。せっかくの服が泥だらけになっちゃうじゃない・・・」
そこらじゅうに生えている中の、1本の木の幹にしがみつき、雨が降ったあとのような、ぬかるんだ地面からなんとか逃げ出そうとしていた。
そんな四苦八苦していた途端、テューサは何か柔かい物を踏んだ気がした。気になって足元に目をやった。男が1人、倒れていた。テューサが踏んだのは男の太い腕だった。驚いてぱっと足を腕の上から退けた。
「あのー・・・。大丈夫ですか?」
テューサはおそるおそる聞いてみた。・・・返事がない。死人かしら・・・?
「・・・あのー・・・」
「・・・ず・・・」
微かに声が聞こえた。テューサはしゃがみこみ、もう一度尋ねた。
「どうしました?」
「み、水を・・・くれ・・・」
男はテューサに水を要求した。テューサは背負っていた皮袋を下ろし、水筒を取り出してコップに水を注いだ。
「どうぞ。お水です」
テューサはコップを男に差し出すと、急に男は起き上がり、コップをむしり取ってがぶがぶと飲み干した。
「・・・ぷはーっ。生き返った。ありがとうよ、お嬢ちゃん」
「どういたしまして。体の方は大丈夫ですか?」
返してもらったコップと一緒に水筒を皮袋へしまいながら言った。
「ああ。山菜を探しに来てたんだが、いきなり何かに襲われてよぉ。なんか森が暴れてるような感じがしたんだ。それで・・・2日かな。倒れてたんだ」
「そうだったんですか・・・」
「よし! お嬢ちゃん! 俺の村へ来い! 助けてくれた礼をしないとな。なに、すぐ近くだ。妻も子供も喜んでくれるさ」
急な招待にテューサは戸惑ってしまった。
「えっ・・・そんな・・・で、でも・・・」
「いいって、いいって! さあ、行くぞ!」
強引な誘いに断ることも出来ず、男に着いていった。
(森から抜けれるならいっか・・・)
第1部が始まりました。
先は長いです。かなり続きます。
楽しく書かせて頂くので、楽しく読んで頂けると嬉しいです。