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第11部(3)

大臣の長い、長〜いお話・・・。

第11部  ―幻の紅いライソカス国―(3)


 大臣が案内してくれた部屋は、謁見の間ではなく、小さな一室だった。シーツと毛布が綺麗整えられたベッドが1つ、タンスが1つ、本がぎっしり並べられた本棚が1つ、ソファー2つにテーブルが1つあった。これらを見てみると、どうやら、大臣が使っている、城の数々の部屋の中から抜擢された部屋なのだろう。

 大臣は、3人を部屋へ入れるとドアを静かに閉めた。

「ここへお座り下さい。お疲れでしょう。お茶を用意しますので、しばらくお待ちください」

テューサたちは1つのソファーに3人で座った。ソファーには空間が余るほど余裕があり、かなり大きな物だった。大臣は彼女らが座るのを確かめてから、赤髪・赤目の侍女を呼び、飲み物の用意をさせた。

「・・・謁見の間ではないようですが」

ルビスはもう片方のソファーに座りかけている大臣に問いをぶつけた。テューサも真剣に大臣の方を見ていたが、シャネラは街の人々の行動にまだ怒りが収まらないのか、膝を組み、その上で頬づえをついて仏頂面だった。

「すみませんな。ここはわしの部屋でして。国王様は今・・・お忙しくてな。・・・話を聞いてはくれませぬか」

軽い溜め息をついた後、今いる部屋の正体を明かしてから本題に入ろうとしていた。シャネラはそんな大臣の言葉を聞いて、舌打ちをした。

「・・・街の奴らは俺等の話を聞こうともしなかったのに、俺等にはそっちの話を聞けと?」

テューサは言葉に怒りを込めているシャネラを、「シャネラ」と名を呼んでいさめようとした。大臣はお構いなしにそれを苦笑で交わした。

「申し訳ない。多分、あなた方は真実の歴史をご存知ないのでしょうな。長くなりますが、そこからお話しましょう。しばらくの間、耳を傾けてい てくだされ」

大臣は、語り始めた。


 「大昔、自然と人々が荒れるという、危機がこの世界を覆った。海は淀み、森林は枯れ、異常な気候が続いた。更に人々の間では紛争が絶えず、 互いが互いを憎しみ合っていた。・・・これが多分、あなた方の故郷にある歴史書が語っている事柄でしょう。・・・しかし、現実には違ったのです。

 現実に起こったこと・・・それは、単なる人々の口喧嘩から起こった戦災だったのです。わしも、その時はまだ生まれておりませんので、真実を 語っているライソカス国の歴史書を読んで学んだのですがね。

 その大昔、まだ世界には島が1つしか存在しなかった頃です。島には4つの国が栄えておりました。現在も存在する、サリナ・シャシル・ネイス。そして、ライソカスでした。

 4つの国のうち、何故かライソカス国の民だけ、髪と瞳の色が深紅でした。老いていく者も、新しく生命を宿す子も。このことから、わしらはク ラーヌ族と呼ばれるようになったのです。クラーヌ・・・『紅い』という意味ですね。サリナ国やシャシル国・ネイス国の民と同じリィル族なのに。別々に差別されてしまったのです。

 そして、色々な貿易都市では喧騒が頻繁に起こるようになりました。このときはどの国も船を所持していたそうです。多分戦争の後、悲劇を見た くないことを理由に、シャシル国しか持たなくなったのでしょうな。

 サリナ国などの他3国の民はクラーヌ族を見つける度、『不吉だ』『血の色だ』などとライソカス国民を(ののしり)りました。そして、腹を立てたライソカス国民はついに、世界を敵にまわして、世界全土に及ぶ、範囲の大きな、大戦争が起こってしまったのです。

 今までの話から分かるように、状勢は1対3でライソカス国は圧倒的に不利でした。あっという間に勝敗は決していたのです。

 この戦争で、海が人々の流す血で汚れ、火災で森林は朽ち、空には暗雲が広がるばかり。そして、たくさんの人々が命を落としました。戦争は、 勝敗を結しても、ライソカス国が滅するまで3ヶ国は止めようとはしませんでした。それもそのはず。自分たちは有利なのですから。

 これを止めたのが、5つの魔石です。そう、あなたたちの持っている、魔石です。あなたたちは『平和』の石を持つ者でしょう?」



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