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第10部(1)

ルビス優し〜い♪♪

第10部  ―最後の微小孤島―(1)


 ミヤウィザが自分たちの向かっている先に居ると聞いたシャネラとルビスは、いっそうやる気を増し、さっさと荷造りをして、目の前に(はばか)る孤島へ泳ぐ準備をした。

 テューサはそんな2人を見ていた。自分の足は、痺れていて動かすのは辛い。でも、泳がなくてはミヤウィザに逢えない。心の中で葛藤が揺れて、今何をするべきか考えられなかった。

 ルビスは、そんなテューサが目に止まり、優しく言った。

「・・・大丈夫だよ。さっきも言ったでしょ。僕がおんぶしてあの島まで連れて行ってあげる。」

テューサは心配を掛けたくなかった。「ううん。自分で泳いで行くわ。」と言いたくて首を

横に振ったが、ルビスはもう、地べたに座っているテューサの腕を取り上げて、自分の肩

に掛けていた。ひょいっとテューサを背負う。

「ルビス・・・っ。私、泳げるから・・・っ。」

テューサは降ろしてもらおうと、ルビスの背中の上でじたばたする。しかし、ルビスはテ

ューサを1人で泳がせる気はさらさら無かった。自分の背中でもがくテューサを無視し、

彼女の足をぎゅっと持って海へ向かっていった。

 テューサの慌てる声と、いつにもなくルビスが人の言葉を聞かずにいることが、シャネ

ラは気になった。そして、2人に歩み寄る。

「・・・おい。・・・テューサ泳げねえのか・・・?」

ぴたっとテューサはもがくのを止め、ルビスは普通にシャネラの方を向いた。テューサは

焦った。シャネラは自分の足のことを知らない。知ったら、シャネラは自分をもっと責め

るだろう。それが分かっていたからだ。

「え・・・あ、えと、泳げるのだけれど・・・。」

焦り過ぎて、テューサの声は上擦(うわず)った。

「この前言ったでしょ。傷がまだ完全に治っていないから、危険な目には遭わせたくないんだ。」

ルビスは笑ってシャネラに言う。先程の、テューサとの目で交わした約束を守ってくれる

ようだった。だが、シャネラは笑ったルビスに、少し考えてから口を開いた。

「・・・何か・・・隠してないか・・・?」

シャネラはルビスに言っていたが、目はしっかりとテューサの瞳を見ていた。テューサは

それに気づき、たじろいでしまう。

「何も隠してなんかいないよ。さあ、呪文唱えてよ。泳げないじゃないか。」

ルビスは笑みを絶えずに、さらりと話題を変えた。自然すぎた。でも、シャネラには違和

感―わだかまりが残る。

「・・・お前は、テューサを担いで泳げるのか?」

シャネラは性に合わず、ゆっくりとした口調で喋る。表情は暗くて、笑ってはいなかった。

「大丈夫。昨日、君がおぶってってくれたからね。次は僕の当番だよ。」

「そんなの、関係ねえよ。・・・<オールズ・シャナー>・・・。」

手を突っ込んでいたシャネラのポケットから青い光が零れる。それは、今唱えたシャネラ

のぼそっと言った呪文のように、小さく、憐れだった。

 ルビスは、小声だったシャネラの呪文をしかと聞いて、また海へと歩き出した。もう、

テューサは暴れなかった。何も言わなかった。ただルビスの背中で、後ろで寂しげな顔を

して(たたず)むシャネラを見ていた。・・・自分が、この空気を作った原因なんだと。ルビ

スにも、シャネラにも、ごめんと謝りたかった。



祝☆400HIT!

有難うございます。

更新遅れていますが、頑張ります。

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