第9部(6)
第9部―いざ、孤島へ・・・―(6)
テューサが目覚めたころ、ルビスとシャネラは2つ目の島まで泳ぎきり、休憩をしてい
た。昼頃らしく、体を横にして寝かされているテューサの目には太陽の光が真上から差し込んで眩しかった。
最初はぼやけていた視界も、すぐに回復してその目で2人を捜した。テューサが目を覚
ましたことに気づいたルビスは、駆け寄って、笑った。
「大丈夫?自分が誰だか分かる?僕の名前は?」
ルビスはすっかりテューサの主治医になっていた。後遺症のことを心配し、いろんなこと
を聞いた。テューサは起き上がらずに、笑った。
「私はテューサ。あなたはルビス。」
笑ったのはいいが、テューサは足に違和感を感じていた。右の足首が、痺れている感じ。
ルビスにこのことを言うべきかどうか迷ったが、心配させたくないことから黙っておくこ
とにした。
テューサはもう一度辺りを見回した。シャネラがいないことに気づいた。
「・・・シャネラは?」
ルビスに聞いた。ルビスは笑って、
「昨日寝ていないからね。その辺の木陰で寝てるよ。」
と言った。「昨日寝ていない」をテューサは聞いてテュクから聞いたことを思い出した。
「あ・・・。私・・・。」
「昨日泳いでる最中に毒蛇に噛まれたんだよ。・・・覚えてる?」
テューサは首を横に振った。テュクにも言ったように、テューサは何も覚えてはいなかっ
た。
「・・・ありがとう。」
そして、薬を調合してくれたことに対し、礼を言った。
「どういたしまして。・・・どこか痛いところとか、ない?」
ルビスは優しい。気を配ってくれた。
「あ・・・えっと・・・。」
黙っておこうと思ったが、ルビスが優しく聞いてきてくれるので、痺れのことを相談して
みた。ルビスは少し悲しそうな笑顔を見せた。
「そっか。ごめんね、僕、ちゃんと治せなかった。」
「ううん。ありがとう、ルビス。あなたのおかげで死なずに済んだのだもの。・・・この痺れはいつ消えるかしら?」
テューサは笑って、ルビスを元気付けようとした。しかし、ルビスはいつものようには笑
わず、浮かない顔をしている。
「分からない・・・。多分、ただの後遺症だからすぐに治るよ。それまで、僕がおんぶしてあげる。」
「え・・・。大丈夫よ。歩けるわ。」
テューサはやっと起き上がり、立ってみた。そして、歩いてみた。突き刺さるような痺れ
が痛いのか、顔を歪めながら歩いていた。精一杯普通に歩いたつもりだったが、ルビスは
見逃さなかった。足を引きずっていることに。
ちょうどその時、シャネラが姿を現した。
「・・・テューサ・・・。大丈夫なのか?」
振り返るテューサの瞳には、間近に立ったシャネラが映し出された。いつの間にこんなに
も近くへ来ていたのだろう。
「えっと・・・。だ、大丈夫よ。ありがとう。」
咄嗟に嘘をついてしまった。テューサはシャネラの肩越しに見えるルビスに、目で
合図を送った。シャネラには黙ってて、と。ルビスはそれを認識したかのように、片目を
瞑ってウインクした。ただ顔は、仕方ないなあ、と言いたげだった。
「あっ、ねえ。聞いて。話があるの。」
テューサはそう言うと、シャネラから離れてその場に座り込んだ。シャネラも座り、ルビ
スは近寄った。
「テュクが言うには、この先にミヤウィザが居るんですって。」
・・・・・・・・・。
第9部終了です。
これからもよろしくお願いします。