第9部(4)
テューサも、無事生還しそうです。
第9部―いざ、孤島へ・・・―(4)
辺りが、夜の真っ暗闇を朝焼けが包む頃、テューサの息はやっと落ち着いてきた。体も温かくなってきて、頬も赤らんできている。シャネラはやっと安心をした。テューサはシャネラの腕の中で眠っている。ルビスも手近な木の幹に凭れて眠っているようだった。
「テューサは?」
シャネラは、ルビスは眠っていると思っていた。現実に眠っていて、ふと、目を覚ましただけだ。そんなルビスがいきなり話し掛けてきた。目はこっちを見ている。しかし驚きもせず、ルビスと視線を交わさないまま、シャネラは言った。
「ああ。息も整っててきたし、温かい。もう、大丈夫だ。」
「よかったー。」
ルビスは笑った。顔を見ていなくても、声で分かった。
「・・・ありがとな。」
シャネラはルビスになんとか届くような小さな声で礼を言った。それを聞き取れたルビスは、またにっこりと笑って、目蓋を閉じ、眠っていった。
シャネラは眠ることが出来なかった。今晩だけは。横に寝かせても大丈夫だと思ったが、なぜか、テューサを腕の中に入れておきたかった。・・・何か起きるといけないから。
ぼーっと海を見つめていると、声が聞こえた。
「・・・ぅ・・・。」
シャネラはすぐに、自分の腕の中からだと悟った。何度も名を呼んでみる。
「テューサ?・・・テューサ?」
「ん・・・。シャネ、ラ・・・?」
「ああ。・・・ごめんな。大丈夫か?」
シャネラはテューサの顔を見ながら聞いた。テューサはしょぼしょぼする目で一生懸命微笑んだ。
「大丈夫・・・。」
「寝ろ。容態が悪化したら困る。」
自分のせいでテューサは苦しんでいるのに。なぜこんな不器用な言い方しか出来ないのだろうか。シャネラは今自分が発した言葉に後悔の念を抱いた。テューサは、別に気にも止めず、返事だけした。
「ん・・・。」
「おやすみ。」
テューサはシャネラの優しい「おやすみ。」の声を聞いて、すぐにまた目を瞑り、眠った。くーくーと、気持ちのよさそうな寝息が聞こえる。シャネラはテューサの頭を片手でぎゅっと抱きしめて、
「ごめんな・・・。」
と、もう一度呟いて謝った。
結局、シャネラは一晩中起きていた。そして、朝ご飯の干し魚を食べているところで、ルビスが目を覚ました。
「・・・おはよう。・・・テューサは?」
目を擦りながらルビスは尋ねた。テューサは未だシャネラの腕の中で眠っている。シャネラは魚を食いちぎって、口の中に放り込んでから喋った。
「多分・・・大丈夫。昨日、少しだけの間目を覚ました。」
「そう。・・・後遺症が残らなければいいんだけど。」
ルビスは鞄の中に入っている干し魚に手を伸ばしながらぽつりと呟いた。そして、魚を食べ始める。
「・・・え・・・。」
あまりよく聞き取れなかったシャネラは、聞き返そうかと思ったが、テューサが起きないことには、それについて口論しても仕方ない。諦めて、食事に没頭した。