第9部(2)
死なないで!!テューサ!!
第9部―いざ、孤島へ・・・―(2)
この日の気温は低かったので、水温はもっと低く、水に体が触れた瞬間、テューサは身震いした。顎が震え、歯がかちかちと鳴り出す。止めようと思っても止められない。ルビスはテューサの左手をぎゅっと握っていてくれる。シャネラはもう、かなり遠くまで泳いでいってしまった。
だんだん海が深くなる。そしてついに、呼吸のため顔を水面から出す状態にすると、足が海底につかなくなってしまった。・・・ルビスはまだついているようだった。衣服が海水を含んで、重くなる。まるで、錘を着けたかのようだった。テューサは冷たい水を、重くなった右手でかき、前へ進もうとした。ルビスも同じことを左手でやっていた。少しずつ、少しずつ前に進む。目の前にある島へは、まだほど遠い。水を帯びた服は体に張り付いて鬱陶しくなる。
すると、島の陸地に人影が見えた。・・・シャネラだった。一足先に島へ到着し、服の水を絞っているところだった。そして、シャネラは次に皮袋から火熾し木を出して火を熾した。
テューサとルビスは時間を費やして、やっとあと少しで島につく、というところまで泳いできた。その時だ。テューサは足にちくっとした痛みを感じた。
「きゃっ!」
急にテューサが叫んだので、ルビスは驚いた。焚火で体を温めていたシャネラも驚いていた。途端、ルビスとテューサの繋いでいた手が離れてしまった。ごぼっ、と溺れかかるテューサ。
「テューサ!」
両手をばたつかせているテューサに、ルビスが手を差し伸べても、無意味であった。シャネラが見かねて、海へ跳び込んだ。ばしゃん、と音がするのと同時に、テューサは海水を飲んでしまった。シャネラはすぐに2人のところまで泳いできた。そして、テューサを抱えて島まで引き返していった。ルビスも一生懸命、今までよりも速いスピードで、後を追った。
「ごほごほっ!っは・・・。っげほっ!」
陸に上げられたテューサは一気に咳き込む。そして、寝転んだまま起きようとしなかった。シャネラはもう一度、Tシャツを脱ぎ、絞っていた。
「はあ・・・。・・・おい。大丈夫か?」
シャネラが苦しそうなテューサに声をかける。ルビスも島へ到着し、服を絞っていた。
「・・・ん。う・・・っ。」
水を飲んだせいで荒れた息も、もとに戻ってきたが、何かテューサは苦しそうだった。ルビスはそんなテューサを見て、ふと思い、服の水気を切る作業を止めて、別の行動に移した。
「テューサ、ちょっとごめんね。」
「・・・ん・・・っ。」
ルビスは一言謝り、テューサの足を診ていった。テューサの顔は、海で溺れただけなのに、青ざめている。
「おい、どうしたんだよ。」
何も分からないシャネラがルビスに聞いた。シャネラも、Tシャツを着ながらテューサの近くに寄る。
「・・・あった。これだ。」
ルビスは、テューサの右足首の箇所を指さした。そこには2ヵ所、針を刺したかのように見える、小さな穴があった。
「蛇だ。海蛇。まさかこんなところにいるなんて・・・。多分、毒がある。薬を・・・!急がなくちゃ。シャネラ、テューサの上半身を起こしてあげて。」
ルビスが真剣な顔つきになって、てきぱきと判断を下し、シャネラに指示する。ここはルビスに任せざるを得ない。自分には医療の知識など無いのだから。言われるがまま、ルビスの指示に従った。シャネラはその場に座り、テューサの体をそっと起こして、支えていた。