序章(4)
序章 −故国出発−(4)
「はぁ。なるほどねぇ」
成り行きをベッカに話しながら小さな皮袋に荷物を入れた。タオル、ナイフ、ありったけの食料とお金。水筒には水をいっぱい詰め込んだ。どれだけこれから汚れるか分からないので、一番清潔なワンピースを着た。上から毛糸で編んだカーディガンを羽織り、皮袋を背負う。靴も、しっかりとした丈夫な靴を履く。
「じゃあ、ベッカおばさん。行ってきます」
ベッカの方を向いてテューサが挨拶をした。ベッカはにやりと口を歪ませ言った。
「こらこら。これからの行き先は分かっているのかい? ほら」
ベッカは筒状に丸められた紙を投げてよこした。テューサは紐を解いて紙を広げた。・・・世界地図だ。
「ありがとう」
「せいぜい迷子にならないように、ね」
「えぇ。頑張るわ」
歩いて、テューサはドアノブに手を掛け、言った。
「・・・ベッカおばさん。ウナに、編物教えてあげられなくってごめんって伝えて。チキには、ウナと仲良くねって」
「ああ。・・・ちゃんと伝えとくよ。心配しないで行っておいで」
「行ってきます!」
勢いよくドアを開け、振り返らずに言って外へ飛び出した。家のドアが閉まる。
街から外に出る門を通り抜け、街と城よりかなり来たところで、テューサは立ち止まった。くるりと振り返り、3秒間、小さくなった故国の姿を頭の中に焼き付け、また前へと歩みだした。目から、微かな涙を流して。
やっと序章が終わりました。
そしてこれからが本番です。
長い長い旅が始まります。
温かい目で見守ってください。