第8部
番外編のようなものです。
第8部―番外編・・・各自の休憩時間―
テューサたち一行は、ルビスの小屋の近くの街から出た後、ある場所を目指していた。地図にも載っていない、人々にも知られない、世界と無縁の孤島、幻のライソカス国。3人は、国が存在すると信じて、毎日足を前へ突き出し歩いていた。
そして、行く手を阻む自然。異様に連なる山々や薄暗く続く森林。まるで、ライソカス国を自然が隠しているかのようだった。
テューサたちはそんな山々を越え、草木を分け入り、いつしかぼろぼろになってまでいた。ルビスは、怪我をすると、どんな些細な傷でもすぐに治療をした。
「化膿するといけないから。」
が、ルビスの口癖だった。心配性なのかもしれない、とテューサとシャネラは気づきかけていた。
街を出てから、数週間。時は容赦なく流れて、時間が惜しい3人にとっては、「時間が止まって欲しい」とさえ願うほどになっていた。それほど、ライソカス国への道は厳しい。もしくは、本当に存在しないのかもしれない。しかし、一行は願うことはあっても、諦めることはなかった。・・・自分たちが諦めたら、世界は破滅してしまうかもしれないのだから。
そんな緊張感を背負った彼らは、休憩する時間だけは、ということで好きなことをやることにした。
テューサは、普段歩くのに必死でゆっくりと見ていられない周りの景色を眺めたり、ルビスと喋ったりした。越えている最中の山の上から見る世界。麓で眺める世界。森の中でも、光として僅かに見える世界。故郷を出て、どれだけ異国の姿に感動をしただろうか。故郷の姿を目に焼き付けてきたテューサ。目蓋を閉じて、思い返す。王様やベッカおばさんは元気かな。チキとウナは喧嘩していないかな。考えることは心配事だらけ。一刻も早く仲間を全員集め、世界を危機から救わねばならない。でないと、自分の大好きな人々が消えてしまいかねないのだから・・・。
夜は、テュクと話す。テューサはテュクから面白い話を聞いていた。・・・シャネルが持つ石・シャーマが、ルビスの持つ石・ランクルに恋していること。テューサがテュクに「あなたは恋をしていないの?」と聞くと、『さあ・・・どうでしょうね・・・。』とあやふやにされてお終いにされた。テューサは短い時間を利用して、いろんな人とコミュニケーションをとった。そして、歩いた。
一方、シャネラは休憩中、いつも寝ていた。ネイス国にはそこらじゅうに木が生えて無造作に伸びているので、手当たり次第に凭れかかれる場所を探しては、そこに凭れて眠る。立っていようが、座っていようが、横になっていようが、凭れることが出来るだけで、シャネラは夢の中へと入っていくことが出来た。そして、シャーマとの時間を過ごす。シャーマとの会話は、対した情報を仕入れることもできなかったが、楽しむだけ楽しんだ。だが、仕入れた情報が1つだけあった。・・・シャーマは昔、ランクルに恋をしていたらしい。恋人同士だったとか。今はどうか知らないが、シャーマが好意を寄せていることは大体察しがついた。
シャネラの傷は大分治っていたので、「リベンジがしたい。」と、いつもシャーマに愚痴をこぼしていた。こんなことテューサの目の前でルビスにでも言ったら、怒鳴られてしまう。夢の中なら入ってこれない。ストレスというストレスは溜まっていなかったが、目を覚まし、現実に戻ってきたシャネラはいつでも清々しい気分だった。
最後にルビスは、休憩するとなると、シャネラと違ってどこでもいいから座り込み、読書を始めた。それも、分厚くて、書かれている文字はとても小さい。おまけに古字らしく、テューサが興味を抱き、読んでみようと思っても読めなかった。・・・愛読書らしい。持っていて重くないかとテューサは聞いたことがあった。しかし、答えは
「これには僕の知識が全部というほど詰まっているからね。重くても仕方ないよ。」
だった。読書をしているときでも、テューサが話し掛けてくるとそれに応じた。
そして、やはりルビスも夜は夢の中でランクルと会っていた。ランクルの姿はテュクやシャーマと同様、見えやしないが、話し方などから女だということがルビスにはわかっていた。シャネラとこの話はしないが、ランクルから、シャーマへの想いを夢の中でうんざりするほど聞かされていた。ただ、ルビスは笑って、目覚めを待っていた。
こんな生活を数週間送った。まだまだライソカス国は遠い。なぜなら、まだここはネイス国の領土だから。唯一地図に記されている、点々と続く微小な孤島にすら行き着いていないから。しかし、誰も弱音を吐かず、歩き続けた。口には出さないが、3人ともライソカス国という幻を現実にしようと、毎日足を地に踏みしめていた・・・。
いかがでしたでしょうか。
本音を言うと、少し続きの旅をどうやって書くか、
迷ってたからです。
たまには、こういうのもいいですね。
また書こうかな。