第7部(5)
シャネラとルビスのご対面…!
第7部―自然を癒すラルウィ―(5)
『起きて・・・。シャネラ・・・起きて・・・。』
シャーマが俺を呼んでいる。
『起きてよ・・・。強い石の魔力を感じる・・・。あの子たちが帰ってきたよ・・・。』
俺は寝ぼけていたが、シャーマの今の一言で完全に目が覚めた。
「・・・あの子『たち』!?」
俺は『たち』を強調して聞いた。
『うん・・・。多分、仲間だよ・・・。ラルウィだ・・・。ランクルがいる・・・。久しぶりだなあ・・・。』
「よくわからねえが・・・。とにかく起きればいいんだな!?」
『うん・・・。ランクルによろしく・・・。』
「知るかーー!!」
俺は叫びながら現実の世界へ戻っていった。
ちょうどその時、テューサがルビスを連れて部屋に入ってきたところだった。
「知るかーー!!」
部屋に木霊するシャネラの声。テューサはびっくりして目を見開いていた。
「・・・ど・・・どうしたの!?傷が痛むの?」
慌ててシャネラのもとに駆け寄ったテューサは、かなりの心配をして容態を聞いた。
「い、いや・・・。大丈夫。シャーマがちょっと・・・。」
シャネラは急いで誤解を解いた。最後の言葉に対し、テューサは頭の上にクエスチョンマークをつけているように、首を傾げた。
シャネラはテューサの後ろに突っ立っている少年に気づいた。テューサはその少年を紹介した。
「あ、シャネラ。彼はルビス。ラルウィよ。・・・ルビス、こっちはウィーシャのシャネラ。」
「よ、よろしく・・・。シャネラ・ルーキース、だ・・・。」
ぎこちなく挨拶をするシャネラ。ルビスは笑ってシャネラの隣に座り、怪我を診た。
「ルビス・カーソンだ。・・・シャネラ、どこでこんなに怪我をしたの?」
包帯の巻かれた腕を手にとって見ながらシャネラに尋ねる。その答えはテューサが返した。
「えっと・・・。盗賊に襲われちゃって・・・。」
「成程ねえ。彼ら最近、不穏な動きが絶えないよねえ。」
ルビスは笑って、包帯を解き、自分の鞄から透明な液体の入った瓶を取り出した。
「・・・それ何?」
シャネラはごくっと唾を飲んだ。瓶の蓋を開け、次に鞄から取り出した綿に少し浸ける。
「大丈夫。ただの消毒液だから。化膿したら困るしね。僕、医学の本も読んでるからそれなりの知識はあるし、心配しないで。」
けたけたと笑いながらそれで傷口を拭いていく。傷にしみるのか、顔を歪ませていた。そしてルビスは再度包帯を巻いていく。手馴れているようで、すぐに全ヶ所終わった。
「・・・ありがとう。すまないな。」
照れくさそうにしながらシャネラは礼を言った。
「どういたしまして。」
ルビスは変わらない笑顔で言った。
「そういえばシャーマが、『ランクルによろしく』だってさ。」
いつの間にか、辺りは暗くなり、宿の厨房からは香ばしい、いい匂いが漂っていた―。
宿の1階・・・食堂で、テューサたちが食事をしていると、宿の女将が食後のデザートを運んできた。一人一人の前に置きながら言う。
「あら、歴史博士サマも一緒なの?お代金払いました?」
意地悪っぽくウインクしながら女将はにやっと笑った。ルビスも笑顔を返す。
「払ったよ。そうそう、この人たちと旅に出ることになったんでね。しばらくの間、本は買いに来ないよ。」
「そうなのかい?せっかくの祭なのに、見ていかないのかい?」
ルビスはその言葉に、考え込んだ。
「うー・・・ん。どうしようかな。一刻を争うんだよね。テューサ、シャネラ、見たい?」
デザートの果物のシロップがけを食べながら、テューサはシャネラを見た。シャネラは片
肘を机の上について、はあ、と溜め息をつく。
「どっちでもいいよ。お前等の判断に任せる。」
「見たいけど・・・。今は、仲間を捜すことが先決だと思う。全部終わったら・・・皆で見ようよ。」
テューサは笑った。ルビスもにっこりと微笑んで、
「じゃあ、今年の祭は僕欠席するよ。町長さんによろしく言っといて。」
「はいはい。気をつけて下さいね。最近、他国で木々が人を襲うとか、訳の分からない噂が広がっているからね。」
女将はそこまで言って、厨房に引き返していった。シャネラは、自分のデザートをテュー
サに寄越していた。テューサはシャネラに笑って「ありがとう。」と無邪気に言っている。ルビスには、いつもの笑顔が影もなく消え去り、表情が険しくなっていた。女将の後姿
が見えなくなると、ルビスは呟いた。
「一刻も早く・・・。」