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第7部(2)

シャネラとシャーマの会話です。

第7部―自然を癒すラルウィ―(2)


 俺は夢の中で笑っていた。

「ああ、なんとか喧嘩は丸く収まったぜ。」

『シャネラ・・・ごめん、て言ってない・・・。』

「悪かったって謝ったよ!それより約束!」

俺は1人大声を出していた。シャーマの優しい落ち着いた声がそれを包む。

『それより・・・君が寝ちゃってる間にあの子は捜しに行っちゃったよ・・・。』

「何ぃ!?」

『だから・・・君が今ここにいる間にも・・・彼女はラルウィを捜しに出掛けているよ・・・。』

俺は何も言えなかった。テューサが俺を待たずに行ったのも、俺が怪我で休みたいと思う本心を見抜いたから。待っててくれなかったのも、世界が危機に(さら)されようと迫っているから。これでは、テューサに謝ることも、礼を言うことも出来ない。

 俺が今思っていたことを見抜いたのか、シャーマは優しく囁いた。

『・・・君の今やるべきことは、一刻でも早く怪我を治すことだよ・・・。』

「ああ・・・。」

俺はシャーマに相づちを打ったが、気は急いていた。

『ここで僕と話しているよりも・・・もっと深い眠りについて傷を癒しなよ・・・。起こしてあげるから・・・。』

「ああ・・・。」

シャーマの言葉と共に姿を現した夢の中での眠気に、俺は身を委ねることにした。


 一方、街を出たテューサは林の中で迷子になっていた。目印がなく、何度も同じところを歩いている気がした。脹脛(ふくらはぎ)が痛くなってくる。

「ここどこだろ・・・。小屋なんてないじゃない・・・!」

ぶつくさ文句を言いながら、いつかの森に入ったときと同様、生い茂る植物に四苦八苦していた。

「ここ、誰も植物の手入れをしないのかしら・・・。夜までに街に帰れるといいんだけど・・・。」

 しばらくの間、一生懸命になって歩いていると、家の屋根らしきものが見えた。

 テューサは思いっきりその方向目指して走った。草が足に絡みつこうが、虫に噛まれようが、お構いなしに走った。そして、広い場所に出た。

 家・・・小屋があった。テューサははっはっと肩で息をしていたが、深呼吸をして息を整えた。整ったところで、小屋のドアを2回ノックした。

 応答がない。もう一度ノックした。

 やはり返事はない。テューサは思い切って、ノックしたドアを開けてみた。・・・鍵はしていなかった。というよりも、無かった。

「あのー・・・。すみませーん・・・。」

勝手に人の家?のドアを開けてしまったことに、ようやく罪悪感を感じてきたテューサは、小さな声、しかしはっきりと言った。小屋の中からの返事は無い。ついに、テューサは小屋の中へ入ることを決心した。

 ぎし・・・ぎし・・・。軋む床を恐る恐る踏みしめながら、一歩一歩奥へ歩んでいった。1階には誰もいない。1つしかない部屋に、1つの机と椅子があるだけ。そして、その机の上には本の山が積まれていた。

 テューサは誰もいないことを確認すると、奥にある梯子(はしご)から2階へ上った。

 2階は1つしかない窓から、微量の日光が射すだけで暗い場所だった。しかし、見える。壁一面にずらりと設置された本棚。まるで図書館のようだった。

「すごい・・・!本ばっかり。頭よさそう・・・。」

本棚に入っている書物から、住んでいる人物像が描けてしまう。書物の題をひとつひとつ見て回った。歴史書、医学、哲学、そして物語・・・。あらゆる種類の本があった。

 本を見ていたテューサの耳に、1階からの物音が飛び込んできた。ぎくっと体を硬直させる。(どうしよう。怒られちゃうよね・・・。)そんなことを思いながらも、先程上ってきた梯子を使って1階へ下りた。



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