第5部(5)
第5部―ネイス国を目指して―(5)
「とにかく、少し移動しましょ。ここは危ないわ。」
シャネラが歩くのを助けながら、少し歩き、倒れこんだ盗賊が見えなくなるくらいまで来た。そして、血塗れのシャネラを座らせた。
「・・・っ。」
一瞬、シャネラの顔が歪む。それを見たテューサは、自分の着ているカーディガンの袖を裂き、1枚の長い布きれにした。
「おいっ。服・・・。」
「いいの。ほら、腕貸して。止血しなきゃ。」
シャネラの傷口に、布を巻いた。すぐに布も赤く染まる。
シャネラは両腕、右膝、左頬、背中を怪我していたので、テューサのカーディガンだけでは全部手当てしきれなかった。
「いいよ。これだけで。」
「でも・・・痛いでしょ?」
ふうと溜め息をつく。
「当たり前。ほら、行くぞ。あいつらが追ってこないうちにな。」
「そんな体で動けるわけない!」
「動けるよ。それにさっさと仲間を見つけなきゃなんねーだろ!」
「そうだけど・・・。シャネラの体が心配なの!」
「すぐにぶっ倒れる奴に心配されたかねえよ!」
2人は喧嘩を始めた。一帯の自然がざわめく。
「だから動けるって言ってるだろ!ほら、立てよ!行くぞ・・・っ。」
その場に立ったシャネラだが、傷口が開いたのか、苦しそうな顔をした。しかし、すぐになんともない顔をして、テューサに手を伸ばした。
「ほら。」
差し伸べられた手に頼らず、テューサは立ちあがった。そして、自分の皮袋とシャネラの鞄、木刀を持った。
「返せよ。」
テューサはふいっと顔を背けた。そして、シャネラより先に歩き出す。シャネラも後から付いてきたが、テューサはその1歩前を歩いた。
しばらくの間、2人の間には沈黙が流れ、その沈黙を破ろうとする者はいなかった。
第5部もいよいよ終わってしまいました。 テューサとシャネラはどうなってしまうのでしょうか!! 第6部も楽しみにしていて下さいね。 頑張ります!