第5部(3)
第5部―ネイス国を目指して―(3)
翌朝、シャネラが朝ご飯を食べているときにテューサは起きた。
「・・・あれ?」
目を擦りながらテューサがむくっと上半身を起こす。
「おう。飯食うか?」
干し魚を差し出しながらシャネラはもう片方の手で自分の口の中に魚を放り込んだ。テューサは魚を受け取り、じいっと見つめた。
「・・・私、寝ちゃった?」
「ああ。」
「・・・ごめんなさい。」
「何が。」
「シャネラも疲れているのに・・・。」
テューサが悲しそうな顔をしているのに気づき、シャネラは話題を変えた。
「・・・それより。聞いたか?石から。」
「砂漠?」
俯いていた顔を上げ、テューサはシャネラの顔を見た。
「ああ。聞いたなら話は早い。・・・街へ行くぞ。」
「もとから寄り道する気はなかったわ。」
「あっそう。」
シャネラは水を1杯飲み、鞄に物を詰め込んで立った。
「よし。行く・・・。」
シャネラは言葉が終わる前に、自分の口を閉じて鞄を地面に下ろした。テューサはシャネラがどうしたのかと疑問に思っていた。
「テューサ。逃げろ。」
「え?」
がしっと後ろからテューサは捕えられた。
「きゃっ!」
「ちっ。」
どうして今まで足音・気配に気づかなかったのだろう。シャネラは悔いた。そして、木刀を手に取った。
「・・・放せよ。」
勇んだ言葉を放つシャネラ。それをにまにましながら見る男たち。
テューサは自由な範囲で顔を上げ、自分を捕まえている人間を確認した。・・・この前の、自分を襲った盗賊たちだった。しかも、以前より人数が多い。4・5人どころではなく、倍はいた。
シャネラは舌を鳴らし、木刀を構えた。
「おおっと。下手な真似すると、女が痛い目見るぜ?」
首領と呼ばれている男が笑いながら言った。先日シャネラにぼこぼこにされ、顔や腕には包帯がしてあった。他3・4人もそうだった。
「シャネラ、逃げ・・・んっ!」
テューサはシャネラに言葉を発した途端、自分を捕まえている男が腕に力を入れたので、首を軽く絞められた。男は腕の力を元に戻すと、テューサは咳き込んだ。
「けほっ。はっ。は・・・けほんっ!!」
残念ながら、寝る前にナイフは取りやすい場所に置いておいたが、今、男に捕まっているので取れるはずもない。
「テューサ!」