第4部
第4部 ―シャネラの過去―
テューサとシャネラは商店街を歩いていた。
「・・・ったく。母さん、飯くらい持たせてくれたっていいのに・・・。」
シャネラはぶつぶつ文句を言っていた。シャネラの住む街を出るとき、テューサが問題に気づいた。
「食料がない!!」
ふいに叫んだテューサの声が、シャネラの耳をきーんとさせる。
「はあ?」
シャネラは両手で自分の耳を塞ぎながら聞き返した。
「だから、食料がないのよ!あ、水もない!」
「早く言えよ!!」
こうして、一旦街を出た2人は、街へ戻って買い物を始めた。
歩きながら、テューサが疑問に思ったことを尋ねた。
「・・・シャネラの石は何て名前?」
頭の後ろで腕組みしながら面倒くさそうにしているシャネラ。
「名前・・・?」
「聞いてないの?私の石はね、テュクっていうの。」
「それよりも、買い物は終わったのか?・・・行きたい所があるんだけど。」
「別にいいけど・・・。」
名前を聞けなかったことに対し、テューサは少し膨れた。
買い物が終わり、街を出て外れにある灯台へ来た。そこから綺麗な海が見渡せる。
「うわあ。綺麗ー!」
テューサは海に向かって感想を叫んだ。
「海に向かって叫んだって、木霊は帰ってこねえよ。」
シャネラは皮肉った。いつもと何か様子がおかしいことに、テューサは気づいた。
「・・・どうしたの?」
「・・・俺、以前この海で友人を亡くしたんだ。」
シャネラはディープブルーの海を見つめながら語り始めた。
「15歳くらいの頃、剣術が強い奴と戦いたくて、ネイス国へ旅に出たんだ。ちょうどその頃、海が波立って荒れていた。でも、その波と一緒に魚もたくさん集まってきた。だからどこの家も大漁だって言って年頃の男を漁へ出したんだ。」
悲しそうにシャネラは続ける。
「今思うけど、あの時海が荒れていたのは俺のせいなんだろうな。ネイス国の手前の砂漠で何か胸騒ぎがして、街に飛んで帰ってきたのさ。でも、もう遅かった。俺が戻った頃には海は静けさを取り戻していたけど、あいつは・・・。」
シャネラは一息いれた。ズボンのポケットから石を取り出し、握り締める。
「だから、これから他国へ行く俺は、その前にやるべきことがある。俺がここから離れても、誰一人海で悲しい思いをしないように。・・・<オールズ・シャナー>・・・!」
かっ!とシャネラが唱えた瞬間辺りが光った。そしてその光は、だんだん青に染まってい
き、海の方へと向かって伸びた。一定時間輝いた後、石は光を出さなくなった。
「・・・よし、行くか。」
シャネラの海を見ていた琥珀の瞳が、テューサの方を見て笑った。
「ええ。」
テューサは笑顔を返し、相槌を打った。(私も、サリナ国に呪文をかけてこれば良かったか
なあ?)
そして、2人はネイス国へ旅立った。
第4部は1話だけです。
次話からは第5部に入ります。
まだまだ頑張りますよ〜?