第3部(5)
第3部 ―海を癒すウィーシャ―(5)
ゆらゆらと、自分の体が揺れていることに気づいたテューサは、目を覚ました。ばっ、と起き上がる。
「おう。起きたか。昼はとっくに過ぎてるぞ。」
テューサはシャネラの背中に乗っていた。・・・おんぶされてる。
「寝坊すんなよなー・・・。石を見たいっていう張本人が。」
「・・・重くない?」
顔を赤らめて恥ずかしそうに聞いた。
「は?別に。いつも練習ではもっと重いの担いでるし。」
「練習?」
「これ。」
腰から木刀を抜き、テューサに見せた。
「ああ。そういえば、剣術上手いんだっけ?」
「まあな。」
「ねえ、どのくらい歩いたの?」
「かなり。もうすぐ街に着く。」
「・・・降ろしても、いいよ?」
振り返らずにシャネラは言った。
「いいよ。疲れてるんだろ。街に着いても、今日の練習は終わってるだろうから、体慣らしとしてはちょうどいい。」
「そ、そう・・・。」
テューサは頭をシャネラの肩に凭れかかせた。
「お、見えてきたぞ。・・・おい?」
シャネラの背中から寝息が聞こえる。一瞬シャネラは、自分でも分かるような困った顔をした。
「げ。また寝たのかよ。・・・そんなに疲れてたのか?」
シャネラは独り言を言いながら、街へ入っていった。
シャネラは家に着くと、まず、テューサを自分の部屋のベッドに寝かせた。心配した母親は、慌てふためいていた。
「シャネラ!今までどこに行っていたの?あなたその子に何をしたの?また木刀で切りかかったんじゃないでしょうね?」
ふぅと溜め息をつく。
「違うよ。いくら俺でも女の子にそんなことはしないさ。それよりも・・・母さん、『平和』の石って知ってる?」
「え?そりゃあ知ってるわよ。学生時代に習ったもの。」
きょとんとして母親は答えを出す。
「俺、それの使い手らしいんだ。」
「何ですって?」
「俺、ウィーシャ?とかいうのなんだとさ。」
「海を癒す者・・・。じゃあその子も?」
母親の様子がおかしくなってきたことに気づきながらも、シャネラは続けた。
「ああ。孤独を癒すらしい。サリナ国を出てきて、疲れてるらしいんだ。」
「ウィテュード・・・。」
母親は呆然として、息子と、少女を交互に見た。こんな子供たちに世界の運命がかかって
いるなんて。