第3部(1)
いつの間にか第2部が終わりました。
第3部は少し長いです。
頑張って更新しますので、感想などください。
これからもよろしくお願いします。
第3部 ―海を癒すウィーシャ―(1)
頬にふわふわと当たる潮風が心地よかった。今がこんなに暑い日でなかったら、この風は不快に感じるだろう。
テューサはシャシル国に着いて、初めて立ち寄った街を出た後、まず、海を目指した。海に直面すれば、あとは海岸づたいに西へ歩くだけだ。これで迷うこともない。
海岸を歩いていたテューサは、ふと、海を見てみた。
「綺麗・・・。」
思わず呟いた言葉。この国にはウィーシャがいるから、それだけで海は魔力の影響を受けているのかな。一人で確信のない答えに答えるテューサ。海はディープブルーに染まり、他色に淀む箇所は一つもない。果てしない水平線の先は、空のスカイブルーと混ざっている。
海に沿って歩くこと、2日。いっこうに城下町は見えてこない。テューサは疲れきっていた。心は逸るばかりで、体は素直に音を上げている。仕方なく、その場に座り込んだ。皮袋から水を取り出し、コップに1杯飲み干す。水も食料も、雀の涙ほどしかない。早く街に着かなければ。・・・なんか以前にもこんなことがあったような。
テューサは座った状態で後ろにごろんと寝転んだ。うとうとと、睡魔がテューサを襲う。睡魔と悪戦苦闘しながらも、疲労の溜まった体では睡魔に及ばず、くーくーと寝息をたてて眠ってしまった。
ざっざっざ・・・。何か音がする。しかし、テューサは疲れきっていて起き上がれなかったし、目も開けられなかった。開けようとも思わなかった。眠りに就いたと思った矢先に、聞こえた音。半分意識のない中、テューサは必死に考えを巡らせた。(何・・・?足音・・・?誰・・・?お、起きなきゃ・・・。)自分の体に命令しても、起き上がることが出来ない。脳は生きているのに、体は死んでしまったようにぴくりとも動かない。横たわった自分の体は、体の周りにある、ざらざらとした海岸の砂しか感じることが出来なかった。
ざっざっざっざ・・・。音がどんどん大きくなる。確実にこちらへ向かって来ている。(人だ・・・。自然じゃない・・・。)足音がテューサの近くへ来て止まった。
「あれ?」
声が聞こえた。男・・・の声。男はテューサの横に跪く。そして、テューサを抱え起こした。
「こいつは・・・。」
テューサは力を振り絞って睡魔を退散させ、目をゆっくりと開けた。男は、目を開けたテューサを見て笑った。