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第2部(5)

第2部  ―遭遇―(5)


少しずつ、テューサは歩き出した。止まっている場合じゃない。ウィーシャを、彼を捜

さなきゃ。

 少年の手がかりを探ろうと、通行人に尋ねてみた。

「すいません。この辺を、木刀を持った私くらいの年の男性を見ませんでしたか?」

「知るかよ。」

「さあね。」

「五月蝿いわね。早くどこか行ってちょうだい!商売の邪魔になるだろ!!」

数人に聞いてみたが、皆、呆気ない、冷たい返事を返すばかりだった。

状況に困り果てたテューサは、無意識のうちにテュクを両手で包んでいた。そして、目を瞑った。心を落ち着かせ、未だ続いている寒気をなんとかして振り切ろうとした。

『・・・<プネマ・テルヌーラ>・・・』

テュクの声が聞こえる・・・。テューサはテュクの唱えた呪文を復唱した。

「<プネマ・テルヌーラ>!」

テューサが両手で包んでいた石と共に、辺り一面がぱっと輝いた。その瞬間、寒気がなく

なり、温かいものがテューサを包んだ。

『話し掛けてごらん・・・。』

テュクの微かな声が聞こえた気がした。こくりとテューサはテュクに頷いた。

「あのー・・・。すいません、ちょっとお聞きしたいのですが。」

恐る恐る、ちょうど通り掛かった男に聞いた。

「なんだい?」

「この辺で、木刀を持った男性を見ませんでした?」

「知らないな。この街は広いけど、住人は皆顔見知りだよ。他の街の住人なんじゃない?」

男は優しく丁寧に答えてくれた。

「有難うございました。」

テューサは頭を下げ、道を歩き出した。今の男の言葉からは冷たさは感じなかった。それ

どころか、さっきまで商店街で大声で乱暴に魚を売っていた人々も、言葉に丁寧さを生み

出していた。

「これが、私の呪文の能力なのかしら。」

ぼそっと呟いた。

  もう日が暮れる直前だったが、一刻も早く彼を見つけなければならない。そう思ったテューサは、迷いもせず、街から出た。目指すは、城もある、海に一番近い街。テューサはまだ目眩のする頭を抱えて、一歩一歩前へ踏み出した。





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