第1部(7)
第1部 ―初めての出会いとその別れ―(7)
翌朝、テューサは荷をまとめて、一家を起こさないようにそうっと1階へ下りた。リビン
グに着くと、リュードとフィリアが立ってテューサを待っていた。
「・・・行くんだろ、次の街に」
リュードは片目を瞑ってウインクしながら言った。
「怪我をしないように、気をつけてね・・・」
フィリアは少し目に涙を浮かべていた。テューサは2人に頭を下げて礼を言った。
「短い間だったけど、有難うございました。」
「気をつけてな」
「・・・これ。今朝の朝ご飯と、この辺は夜寒いから、火熾し木が入っているわ」
フィリアはテューサに小さな包みを渡してくれた。テューサは目頭に熱いものが集まって
くるのを感じた。
「有難う、ございます」
ぽろっと水滴が頬を伝って零れ落ちた。フィリアも、流していた。
「行って、らっしゃい。全て、が、終わっ、たら顔を、み、見せて、ね?」
フィリアの発する言葉は、既に途切れ途切れで文を成していなかった。リュードはそんな
妻を見て、片手を妻の肩に乗せて落ち着かせるようにした。ひくっ、ひくっと、肩が震え
ている。
「じゃあ、な。気をつけて行って来い。近くに寄ったらいつでも来い。歓迎するぞ」
「有難う。有難う・・・」
テューサは頬に残る水も拭かぬまま、2回心を込めて礼を言い、戸を開けて外に出て行った。
街を出る前に、リュードの家・村長の家・カントの家の前で立ち止まり、深々と頭を下
げて回った。――そして、街を後にした。
ついに、第1部−初めての出会いとその別れ−が終わりました!
ただ今、第17部まで書き終わっておりまして、テューサの旅はまだまだ続く模様。これからも頑張って書いていきますので、応援よろしくお願いします。
そして、いつのまにか50hitを超えていました。嬉しいです・・・!これからも、読者が増えて下さるよう、面白いストーリーを書きたいです。