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オモイノ・シリーズ

オモイノタネ 4

作者: 風紙文

あってほしくない、けどあり得てしまう出来事。

今回はそんなお話

太陽の隠れて曇った日は、俺が一番元気な日だ。

街灯がついてなくて、真っ暗な時間は、俺が一番動く時間だ。

人気が少ない路地は、俺が一番好きな場所だ。

さよならは、俺が一番口にする言葉だ。


鬼ごっこって知ってるか? 俺の人生はまさにそれだ。

俺はいわゆる、いじめられっこだった。とは言っても、最初からではない。

きっかけはまさに、鬼ごっこだったのだ。

ある学年の時、数人のいじめっこが一人のいじめられっこをいじめていた。

そこに俺は、いじめられっこの方に加勢して助けた。

その甲斐もあり、そいつはいじめられなくなった。

…それから暫くして、いじめっこ達の次の目標が決まったようだ。

それは俺だった。

そいつらのいじめは、前に比べて何故か意地悪の要領が良くなったような気がした。

その理由は、直ぐに分かった。

俺はある時に見つけたんだ。

そのいじめっこ組の中に、あの時のいじめられっこを。

…まさに鬼ごっこだ。

鬼に近づいたら、タッチされて、俺が鬼になったのだ。

ただ鬼以外が逃げるのではなく、襲ってくるというだけが大きな違いだった。

正直、それを見つけた時は心が折れた気がする。

せっかく助けた奴に裏切られたのだ。心が折れずにはいられない…。

…復讐せずには、いられない。


そんな俺は、手に入れた。

復讐の道具を、コレを使って、俺は奴らに復讐するんだ。

これは鬼ごっこだ。

今は俺が鬼だから、他の奴らを捕まえるのさ。


まず始めにリーダー格を。

次に目のついた奴を、順番に曇りの日を待ちわびて。

暗く、人気のない路地に進ませ、捕まえた。

一人、また一人と、復讐は成功する。

その度に俺の中には…。

達成感と、体のダルさと


…罪悪感が、貯まっていった。


「…さよなら」


フッ


今もまた一人捕まえ…いや、消した。


さよなランプ


それがこの、復讐の道具の名前だ。

消したい相手を照らして明かりを吹き消すと消えてしまう

まさにぴったりじゃないか。復讐を誓う、捕まえる側の鬼には。

…しかし、一つ疑問がある。

消えた奴らは、何処に行ったのだろうか? 

一人を消して学校に行く度、一人、また一人と生徒が消えている。

先生も理由が分からないからか、皆には何も告げず、ただの休み扱いだ。


…何処へ消えたか、何処へ消してしまったか、それを考えるのは…。


もう辞めた。

正直分からないし、一々それを考えてるようじゃ鬼は勤まらねぇ。

そう、俺は鬼だ。

捕まえる立場は、捕まえた奴のその後など知らなくてもいいのさ。

…こんな考え方、人しては、最悪だな…。

だがいいさ、俺は鬼だからな…。

…なに、後…一人さ…。


幾日ぶりかの曇り空。

俺は最後の一人を呼び出した。

「よぅ…久しぶりだな」

「な…何の用だい?」

「…分かってんだろ」

「ひぃ!」

腰を抜かして倒れやがった。

全く…俺は何でこんな奴を助けちまったんだろうな。

あれがなければ、俺は普通に暮らし、コイツはいじめられ続けた筈だったのにな。

「お前のせいで俺は…やりたくもない事をさせられたのさ」

「あ…あ…」

「あん時俺が助けなけりゃ、お前は今もあのままだったかもしれねぇよな?」

「あ…あの時は別に助けてくれなんて言ってなかったじゃないか!?」

…は?


ダン!!


「ひぃ!」

近くにあった電柱を蹴った。

「ふざけんじゃねぇぞ! テメェは助けてもらっておいて、そんなやり方しか出来ねのかよ!」

「き…君が他の皆をどうにかしたのは知ってるぞ! は、早く皆を解放しろ!」

「うるせぇ!」

ダン!!

「ひぃ!」

「テメェはやっぱりバカ野郎だ。やっぱあん時に、助けなけりゃ良かったんだ。そうすりゃ俺はこんな事にならなかった…」

俺はランプを取り出した。

「な…なんだいそれは?」

多分だが…コイツも先に消した奴らと同じ所に行くんだろうな。そうしたら、またコイツはいじめられるのかもしれないな。

…ざまぁ見やがれ。

「もうテメェと話す事なんてねぇ…消えな」

ランプに火が灯り、アイツを照らした。

「な…なにをする…」

「…さよなら」


フッ


「な…」

アイツは消えてしまった。

息を吹き掛けて消えた。ランプの火のように。

「…う」

…なんだ? クラッとした。

まるで貧血みたいだ。

「…その通りだから」

「誰だ?」

声のした後ろを振り向くと、眩しい光があった。

「くっ…」

手を前に出して光を遮りながら、声の主を見た。

見た目同い年ぐらいの女だ。手には光源である懐中電灯を持って、この暗かった路地を照らしている。

「貴方のそれ…発明だよね」

「発明?」

確かにこのランプは「発明の種」とかいう物から出来上がった物だが…。

「…何で知ってやがる」

「私が発明を回収して回っているから」

正直答えになってねぇが…回収だと?

「回収してどうすんだ?」

「…分解する」

「分解だと?」

「発明は危険な物が多すぎる。だからこうして、回収している」

「……」

回収、か…。

「…いいぜ、持ってきな」

俺はランプを投げ渡した。

「…良いの?」

「あぁ…やるべき事はやり終えたしな。もう持ってても役に立たねぇ」

「そう…」

「それに、なんかそれを使う度に、妙に体がダルくなるんだ」

「…それは、ランプのデメリットだと思う」

「デメリット?」

「このランプの火をつけるのに使うのは…貴方の血」

「!!」

俺の血液…?

「じゃあ何か? 俺がそれを使い続けたら、いつか死ぬかもしれないって事か?」

「多分」

…恐ろしい発明じゃねぇか

「…手放して良かったって事か?」

「かもしれないし…違うかもしれない、それを決めるのは、これからの貴方の行動次第」

懐中電灯の光が消えた。

「…でも、一つだけ言えるのは」

 暗さの戻った闇の中に、そいつは去って行った。

 こんな言葉を残して、

「…終わらないものは、この世には存在しない」



その翌日…。

俺が消した奴らが帰ってきた。

何処へ行ったか聞いても、誰に何をされたか聞いても、答えれる奴はいなかった。

その後の奴らは、いじめを辞めた。

俺も狙われる事なく、その後の学校生活を楽しむ事が出来た。

…やはりこれは、鬼ごっこだったんだ。

いくら鬼になったとしても、鬼ごっこは遊びだ。

所詮は遊び、いずれ終わるって事だ。


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