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思い出が目を覚ます

眠気の覚めない頭で、キッチンに立ってみる。

散歩がてらにいくつかのスーパーや八百屋を回って、より安い野菜を沢山買い込んだので、何かを作るには、気力さえあれば十分な備蓄量である。


ほうれん草が10円安いとか、白菜が同じ値段でより大きなものを買えたとか、いわゆる節約と銘打たれる行為を自己陶酔しながら寒い街を歩いた結果、普段の買い物よりも喉が乾いてしまいコンビニでペットボトルのお茶を買った。

しかもこれだけ歩いたのだから、と脂肪燃焼効果が見込まれるらしいものを買ったので、節約した分の金額はこのお茶に姿を変えた。

節約したからこのお茶が買えたのか、節約していなかったらこのお茶を買わずにもっと安く済んでいたのか、私は考えるのをやめた。


効率的に生活をこなしていくことはこの世にあふれる小さな芽を摘むことと同義な気がして、私はあまり好きになれない。

もちろん仕事や他人の関係する行動においては、なるべく無駄のない動きを心がけるが、オフィスを出てしまえばそこは何もかもが人間にとって無駄だとされていたはずの美しいがらくたに飾られている。


世間はクリスマスに向けておなじみの音楽が流れ、赤や緑を押し出したデザインの商品やイルミネーションが街をジャックし始めている。

自然と目線を落として歩いてしまうこの季節、私は無駄に太く巻いたマフラーに顔の半分以上を埋めるのが好きだ。たくさんの幸福が行き交う中で、一人、誰にも見つからないようにそれを観察している気持ちになれるから。


誰もが、誰かのために何を買おうかなんて考えている、その空間領域が11月までの何倍にも膨らむこの時期は、他人の感情の動きに流されやすい私にとっては多幸感のある素晴らしい季節で、それとともにそれを恨む誰かにも共感できるがために身が引き裂かれるような季節だ。


子どもたちはサンタクロースに何をお願いするか必死に考えているだろうか。


私が子供の頃は小さなクリスマスツリーを子供部屋に飾り付け、可愛らしい靴下につたない手書きの文字で書いた手紙を無理やりねじこんで、眠る前にケーキと温かい紅茶をツリーの下に置いて眠るのが恒例だった。

普段眠る時に嗅ぐことのない茶葉の香りで私は何度起きていようとしてもぐっすり眠ってしまい、朝にはツリーのそばに、お返事の手紙と希望通りのプレゼントが置いてあった。

幼稚園時代には、年内最後の通園のときにサンタクロースからの手紙をわざわざ持っていって自慢したことがある。


なんてことを重たいまぶた越しに紅茶を淹れていて思い出した。

面倒な大人になったもので甘いものは食べない暮らしをしているが、今日は小さなケーキくらい食べてみようかと思った。


糖分を取ったらこの目もきっと覚めるだろうから。


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