2023年5月21日 千葉県木更津市民プラザ④
これは夢なんだと思った。
走馬灯のように人生がフラッシュバックしている。
ーーー『生意気だけど筋はいいな』
ーーー『面白い奴だな。俺がUFCでもPRIDEでも世界王者にしてやる』
17歳で上京してジム入門。人生の全て賭けて格闘技も向き合ってきた。
髪の毛が“まだ黒い”永瀬さんが僕の肩を軽く叩く。
ーーー『大内祐介!アマチュア修斗ウェルター級無傷の5連勝!』
ーーー『大内選手!プロ昇格おめでとうございます!』
19歳でプロ修斗昇格。
K-1やPRIDEの人気が全国的に広まったのがこの時期だ。
スポットライトを浴びながら、歓声を全身で受けて、日本人代表として世界の強者と戦う。
それが僕の目標になっていった。
ーーー『“激闘王”大内祐介、川尻達也らを照準に合わせた発言』
川尻達也、五味隆典、青木真也。
同世代のスター選手たちが活躍する中で、PRIDEの舞台に立つことを目標としていた。
テレビでその姿を見ながら、闘志を燃やしていた。
ーーー『PRIDE2007 ライト級GP内定おめでとうございます!』
人生最高の瞬間だった。
スポットライトを浴びながら、歓声を全身で受け止めて、世界の強豪と闘う。
まるで、自分という物語の主人公であるかのように。
それはあと少しだった。
ーーー『PRIDE、事実上の消滅へ』
ドンッ。
顎の下から突き上げる衝撃。
世界が一瞬、真っ白になった。
音が遠のく。
足元がふらつく。
何かが頭の中で弾けるような感覚。
アッパーカットがガードをすり抜ける。
意識が遠く感覚。
目の前の選手がガッツポーズを見せた。
ーーー『大内、若手選手に5連敗。DREAM、戦極への参戦は絶望的か』
ーーー『迷走する大内、2度の階級変更。バンタム級にて再起戦』
海外のバンタム級選手が大振りのフックを炸裂させる。
その一瞬の間に、僕の身体はもう反応できない。
顎から伝わった振動が、首を通って、頭の奥を揺らす。
脳の奥で、何かがゆっくりと遅れて動いた。
『大内祐介、The Ultimate Fighter 準優勝もUFCとは契約ならず帰国』
ーーー『JMMA影の実力者の大内、2017年開催のRIZINバンタム級トーナメントには呼ばれず。オファーなし』
電話は鳴らなかった。
あのRIZINバンタム級GPのリングで、堀口恭司が圧倒的な強さで勝ち進む姿を目の当たりにした。
僕はテレビの前で、ビール片手に観ていた。
あの夜、自分の名前がそのトーナメント表のどこにもないことを確認して、テレビを消した。
RIZINのリング。
PRIDEの幻。
UFCの夢。
全部を追いかけて、全部を失った。
『次のステップ、考えてみろ』
その言葉が頭から離れなかった。




