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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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わたくし、負けませんわ!

 ルイスとマチルダの一件の後の、周囲にいた貴族の反応。それはわかりやすいもの。なぜならスコット筆頭補佐官の言葉は、実に明瞭だったからだ。


 ここでルイスやマチルダのように、わたくしに冷ややかな態度をとることは、得策ではないとすぐにみんな理解した。


 皆、スコット筆頭補佐官に挨拶をして、続けてわたくしにも同じようにしてくれるのだ。


 貴族というのは日和見主義。


 今の笑顔の挨拶が、明日の嘲笑に変わる可能性は否めない。でもわたくしは明日から、貴族相手に社交を行うわけではないのだ。あくまでコルネ伯爵の侍女として生きていくのだから、裏を読み、悲観的な気分になる必要はない。


(何よりもこの場の空気を変えてくれたスコット筆頭補佐官に、感謝しなければなりませんわ!)


 てっきり嫌々わたくしをエスコートしていると思っていた。でもさっきの言葉でそれは違うと判明している。本音と建前を使い分けたわけでもない。心からの言葉でルイスとマチルダに立ち向かってくれたと思うのだ。


「スコット筆頭補佐官、先ほどは本当にありがとうございました。わたくしの心が折れないで済んだのは、あなたのおかげですわ」

「! そ、そんな……じ、自分はエスコート役として、当然のことをしたまでです。それに自分の力というより、陛下の御威光を借りたに過ぎません。自分にはなんの力もなく……」

「そんなことはございません。社交術として最適でしたわ。相手は公爵家の嫡男。彼がぎゃふんと言うには、陛下の御威光をお借りするしかありませんもの」


 そこでファンファーレが聞こえる。


 国王陛下を始めとした王族たちの入場が開始した。


 ◇


「今年も大勢の輝かしい未来が待つ令嬢たちを招き、デビュタントを開催できること。心から嬉しく思う。今宵は心ゆくまで楽しまれるように」


 国王陛下の挨拶でデビュタントが始まった。


 通常の舞踏会なら、ここで最初のダンスとなる。だがデビュタントではここで大きなイベントがあった。それはデビュタントに招かれた令嬢一人一人が行う、国王陛下への挨拶だ。


「国王陛下へ挨拶されるデビュタントのご令嬢は、こちらで整列してください」


 令嬢たちは、国王陛下に挨拶するために、列を作ることになった。シャペロンやエスコートする令息は、列には並ばず待機となる。


(平民でこの場にいる令嬢は……わたくしだけね)


 最後尾になるとわかっていたので、列の後方に控えて待つ。


 多くの令嬢が「お先に」と会釈して列に並ぶ中、マチルダだけが「ふんっ」と鼻をならし、わたくしをひと睨みしてから列に並ぶ。


(冷静に考えると、とても子どもっぽいわ。これでは王太子の婚約者はもちろん、スコット補佐官の奥方も、彼女では無理ね)


 そんなふうに思っている間に、国王陛下に挨拶をする令嬢の列は整う。


 カーテシーの挨拶をするだけだが、百名近い令嬢がいるのだ。わたくしの順番が回ってくるまでには、二時間近くが経過することになる。


 そこからいよいよ最初のダンスだった。


 今回、デビュタントとなる公爵家の令嬢はいない。ゆえに侯爵家の令嬢とレグルス王太子殿下がダンスをすることになる。


 その最初のダンスが終わると、いよいよデビュタントとなる令嬢のデビューダンスだ!


 ということで、気が遠くなりそうな待ち時間が終わり、国王陛下への挨拶も無事に終了。そして──。


「で、では、テレンス嬢、よろしくお願いします」


 そう言ってスコット補佐官は手を差し出してくれるが……。


(震えています……?)


 手が微かに震えていたのだ。


(レグルス王太子殿下に従い、舞踏会には山ほど出席しているはずなのに。緊張されているの?)


 でも筆頭補佐官として殿下と共に参加するなら、自身はあまり踊らないのかもしれない。


「スコット筆頭補佐官」

「はっ、はいっ!」

「多分、わたくしのことなど誰も注目していないですから、そんなに緊張なさらなくて大丈夫ですわよ」


 そこでわたくしはスコット筆頭補佐官の手に、自分の手をのせながらささやく。


「このオペラグローブにラベンダーの香油をつけてあります。手の甲にキスをする動作の際に、吸い込んでみてください。気持ちが落ち着きますわよ」


 わたくしの言葉にスコット筆頭補佐官は「!」となり、静かに頷く。そしてわたくしの手を持ち上げて──。


「柔らかい香りですね」

「修道院で作るラベンダーの香油は、通常より薄いんです。でもそのおかげでつけ過ぎにはならず、使いやすいですわ」


 そんなことを話しながら、ダンススペースへ移動する。


「……修道院で冬の一番辛い時期を過ごされましたよね」

「ええ、そうですわね。大部屋に暖炉は一つですから、夜も寒さで目覚めることもありましたわ」

「……公爵令嬢の生活から、修道院での生活。お辛かったのでは?」


 スコット筆頭補佐官に尋ねられ、そこまで辛かったかしら?と振り返ることになる。


 寒さは確かに厳しく、常にお腹が空いている感じはしていた。でもオルリック嬢とはすぐに和解し、その後は彼女が父親に頼み、いろいろと手に入れた物をわたくしにもくださったから……。


(言われるほど辛くはなかったわ)


 そのことをスコット筆頭補佐官に伝えると、彼はしみじみとこんな言葉を口にする。


「たとえ犯罪に手を染めなくても、テレンス元公爵のような転落はあり得ることです。ですがテレンス嬢なら、そんな困難に再び遭遇しても、めげずに生きていけそうですね」

「わたくし、もう転落する予定はなくてよ」

「そ、そうですね! 失礼しました!」


 あわあわするスコット筆頭補佐官は、ルイスやマチルダを相手にした時とは別人のようだ。


「いえ。でもそうですね。人生何があるかわかりませんわ。ただ、心の持ちよう一つで、人は踏ん張れると身を持って学びました。ですから何があってもわたくし、負けませんわ」

お読みいただき、ありがとうございます!

テレンス嬢のように芯が強く前向きな女性は素敵ですね☆彡

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