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平凡な侍女の私、なぜか完璧王太子のとっておき!  作者: 一番星キラリ@受賞作発売中:商業ノベル&漫画化進行中
【おまけの物語】

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凛となさい

 後ろで一本に束ねられたのは、艶のあるオリーブブラウンの長髪。眼鏡の奥の瞳は落ち着きのある翡翠色。スラリとした長身なので、テールコートを着ても短足には見えない。


 実はテールコートはそのデザインから男性には着こなしが難しいところがある。


 裾が後ろに長いため、自然と目線が下半身に向かう。その上で、デザイン的に腰の位置が低く見えるのだ。そうなるとどうしても足へ注目が集まり、その短さが目に付いてしまうことも……多々ある。


 老獪な腹黒の重鎮達は、自身の権威付けのためにテールコートを嬉々として着ているけれど……。


(本当は裏目に出てしまっているのよね)


 それを思うと、わたくしのエスコート役を呑んでくれたスコット筆頭補佐官は、実にテールコート姿が様になっている。


「あ、あの……僕の顔に何かついていますか!?」


 そう尋ねるスコット筆頭補佐官からは、ガチガチに緊張している様子が伝わってくる。


「いえ。何も問題ございませんわよ」


 にこやかに答えるも、スコット筆頭補佐官からは「そ、そうですかっ!」と何だか不機嫌そうな返事が返ってくる。その様子を見て、わたくしは分かってしまう。


(……やはり罪人の娘をエスコートすれば、注目を集めることになる。スコット筆頭補佐官は、自身に変な噂が立たないか。心底心配しているのでしょうね。それに本当はわたくしをエスコートするなんて、嫌だったと思う。でも彼はレグルス王太子殿下だけではなく、コルネ嬢に対しても忠実。きっとコルネ嬢から遠回しで「よろしくお願いね」とでも声がけされたに違いないわ。本当は断りたかった。でもそうもできず、デビュタントの日を迎えてしまったに違いないですわ)


 そう気づいてしまうと、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。


(そもそもわたくし、罪人の娘なのに、しかも平民落ちしたのに。デビュタントに出席すること自体、間違いだったのでは!?)


 オペラグローブをつけた手を組み、ぎゅっと握りしめてしまう。


(そんなふうに思ってはダメですわ。コルネ嬢はせっかくこのドレスや宝飾品を用意してくださったのよ! これだけのドレス、いくらしたと思うの! 今のわたくしでは到底手に入るものではないのよ)


 そこで深呼吸する。


(凛となさい、ルイーザ・マリー・テレンス! 腐ってもあなたは元公爵令嬢なのよ。その名が地に堕ちたとしても、あなた自身は悪事に加担していない。堂々としないと「ほら、見たことか。あんなに縮こまって。やはり後ろめたいところがあるに違いない」と、足元をすくわれるわ。そうなったら……それこそスコット筆頭補佐官に恥をかかせてしまう。ここはちゃんと胸を張り、やましいことはないと示さないと!)


 胸を張り、背筋をのばし、顎は少しひく。目線は前に向け、決して俯かない。


「それでは開場です」


 侍従長の声で、デビュタントが行われるホールの扉が次々と開けられた。


 ◇


 スコット筆頭補佐官にエスコートされ、ホールの中へと入場。マルグリット夫人はわたくたちとは距離をとり、離れた場所でこちらの様子を見守ることになる。


 わたくしは豪華絢爛なホールの雰囲気に、思わず圧倒されてしまう。


 侍女として宮殿暮らしをスタートさせたが、舞踏会の会場に足を踏み入れるのは初めてのこと。美しい花や煌びやかなシャンデリア、大勢の着飾った令嬢と令息の姿には、息を呑むしかない。


 だがそこで、いきなり天敵とも言える相手を見つけてしまう。


 ルイス・シャーク・アヴェネス!


 アヴェネス公爵の嫡男で、わたくしより三歳年上。父親同士がライバル関係にあり、ルイスとわたくしも犬猿の仲だった。エスコートしているアヴェネス公爵家の遠縁の伯爵令嬢マチルダは、同年齢のわたくしのことを目の敵にしており、過去、いくつかのお茶会で顔を合わせた時は……。


「親の威を借る狐が紛れ込んでいるようで」


 なんてことを堂々と言う性悪令嬢だった。今日は、性格は悪いが、見た目はいいルイスにエスコートされ、もう鼻高々になっている。今どき、そんな笑い方をする令嬢なんていないのに、やたらと「おーほっほっ」なんて高笑いを連続でして、その声がホールの中で一際反響していた。


「スコット様、人が多いので、あちらへ行きませんか」

「あ、はい」


 わたくしを見たら、間違いなく絡んでくるだろうルイスとマチルダを避け、ホールの端へと移動しようとするが……。


「スコット筆頭補佐官! お会いできて光栄です! いつもレグルス王太子殿下の側にいらっしゃるので、なかなかご挨拶もできない。今日はお会い出来て嬉しいですよ。見てください、彼女。僕のはとこのマチルダ・エルザ・バルヴェルク伯爵令嬢です。ずっとスコット筆頭補佐官とダンスをしたいと言っていたのですよ。本日はぜひ、彼女の社交界デビューを祝い、一曲お相手ください」


 まさかのルイスがスコット筆頭補佐官に話し掛けたのだ!


「スコット筆頭補佐官、私はマチルダ・エルザ・バルヴェルクでございます! バルヴェルク伯爵令嬢の長女で、本日がデビュタントです。スコット筆頭補佐官とのダンスを夢見ていました。よろしくお願いします」


 マチルダも食い気味でスコット筆頭補佐官に挨拶をする。


 ルイスとマチルダがスコット筆頭補佐官に擦り寄るのには理由があった。


 まずアヴェネス公爵家は男系の家系で娘がとにかくいない。存命するアヴェネス公爵家の血筋の女性は、高齢だったり、生まれたばかりで、レグルス王太子殿下の婚約者候補に送り出せる令嬢がいなかった。だがマチルダはルイスのはとこにあたり、伯爵令嬢で、わたくしとも同年代。唯一婚約者候補として可能性があったのだけど……。


 マチルダは自身の侍女と恋愛関係にあると噂になり、バルヴェルク伯爵は子種伯爵といわれ、あちこちで私生児を作る始末。親子揃って醜聞がひどすぎると、殿下の婚約者候補には入れなかった。


 さらにバルヴェルク伯爵家は慣例で十五歳でデビュタント参加だが、侍女との恋愛沙汰のせいで、昨年のデビュタントをマチルダは見送っている。そしてデビュタントには十四歳~十六歳で参加するもの。いろいろな醜聞もわたくしの父親の事件で目立たなくなった。そこで今年のデビュタントに参加したわけだ。まさに丁度いいタイミングだったわけ。


 加えてレグルス王太子殿下の婚約者は無理だったが、殿下の側近が未婚である。しかも婚約者もいない。となれば権力の中枢で甘い蜜を吸いたいアヴェネス公爵家としては、未来の国王の側近を手中に収めたい。


 つまりスコット筆頭補佐官にルイスとマチルダが擦り寄るのは、政治的な理由があったのだ。

お読みいただき、ありがとうございます!

テレンス嬢、頑張って~!

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